半導体レジスト材料大手である東洋合成が、新規事業として“ナノインプリント”関連材料の開発を推進する。微細パターンが必要な半導体向けではなく、光導波路形成用の新たな樹脂を開発しており、高成長が期待できる「AR(拡張現実)グラス」市場を狙う。すでに樹脂開発からワーキングスタンプ(複製した型)作成までのエコシステムを構築し、試作を行っている。

  • 独自材料をつかって試作した「ワーキングスタンプ」。「新機能性材料展2026」(会期:1月28~30日)で筆者撮影

    独自材料をつかって試作した「ワーキングスタンプ」。「新機能性材料展2026」(会期:1月28~30日)で筆者撮影

東洋合成はナノインプリントリソグラフィ(NIL:Nanoimprint Lithography)の研究開発に20年ほど取り組んできたが、今回は光学用NIL向け樹脂を開発し、都内で開催された展示会「新機能性材料展2026」(会期:1月28~30日)に参考出展した。

新たな光学用NIL向けワーキングスタンプ

NILでは、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの基材上に光導波路を形成することから、耐熱性や耐光性、密着性が求められる。用途にあわせて、合成石英やシリコン、ニッケルなどにパターンを形成したマスターモールドが要になるが、高価なため大量にはつかえない。

そこでマスターモールドの複製を安価な樹脂で作成し、これをワーキングスタンプとして量産につかう。ワーキングスタンプは使い捨てになるが、材料と製造装置のすりあわせが特性を左右する。

  • NILのイメージ。樹脂をモールドと基板で挟み込み、ナノメートルオーダーのパターンを転写する微細加工技術だ 出所:東洋化学ニュースリリースPDF

    NILのイメージ。樹脂をモールドと基板で挟み込み、ナノメートルオーダーのパターンを転写する微細加工技術だ 出所:東洋化学ニュースリリースPDF

ARグラス向けに形成するパターンは、45~60度の角度をつけた溝が多いのが特徴で、アスペクト比は1:1、高さは300nm(ナノメートル)、ピッチ400nmあたりが多いという。

ワーキングスタンプの製造工程としては、まず同社が開発したワーキングスタンプ作成向けアルカリ系樹脂を基材に塗布し、マスターモールドを密着させた後にUV光を照射して樹脂を硬化させる。ここでUV硬化に高圧水銀ランプをつかうのも特徴といえる。

次にマスターモールドを引き上げ、離型すればワーキングスタンプができあがる。同社はマスターモールドの損傷を抑えるために、ワーキングスタンプをマスターモールドのようにつかって複製を繰り返す手法も提案している。

  • 新機能性材料展2026に参考出展のワーキングスタンプ用樹脂を使った、ワーキングスタンプの作製工程(上)と製品作製工程(下) 出所:東洋化学ニュースリリースPDF

    新機能性材料展2026に参考出展のワーキングスタンプ用樹脂を使った、ワーキングスタンプの作製工程(上)と製品作製工程(下) 出所:東洋化学ニュースリリースPDF

AR向け光導波路の連続成型へ国際協業

一方で環境安全性に配慮し、炭素とフッ素からなるPFASを使わない材料開発も進めている(PFAS:有機フッ素化合物、ペルフルオロアルキル化合物及びポリフルオロアルキル化合物のこと)。

繰り返し転写時の寸法変化率は3%以内と、フッ素含有品と遜色ない。ただ現状では、フッ素系では100回の転写でも精度を維持しているのに対して、フッ素フリーの場合はその半分程度に留まる。また、離型性にも課題が残るという。

東洋合成は、光学用NILの市場拡大を見越して、国際的なバリューチェーンを構築している。同社は樹脂の提供が主体だが、基板への塗布や熱処理、ナノインプリント装置や評価用装置などは、米国や中国の企業が分担。国際協業でAR向け光導波路の連続成型をめざす。