周波数8GHzで電力変換効率74.3%をGaNパワーアンプで達成
富士通は3月5日、通信用パワーアンプ(PA)として6Gの候補周波数帯であるFR3(Frequency Range 3)の一部である周波数8GHzにおいて、電力変換効率74.3%をGaNパワーアンプで達成したと発表した。
従来、通信基地局やレーダーなどでパワーアンプとして用いられてきたGaN HEMTは、電流を制御するためのゲート電極に、金属と半導体を直接接触させるショットキー接合を用いた電極が用いられてきた。しかし、この構造は高い電圧や大きな電流による大電力動作時に漏れ電流が発生し、これに起因した出力や効率の低下が課題となっていたという。
今回の研究開発では、漏れ電流を抑制することを目的にゲート金属とGaN半導体の間に窒化シリコンアルミニウム(SiAlN)からなる絶縁膜を挿入した金属-絶縁体-半導体(MIS)型構造を開発。SiAlNの成膜にはGaN半導体と同じ有機金属化学気相成長法(MOCVD)を用いることが可能であるため、半導体の結晶成長直後にSiAlNを形成することで、絶縁膜そのものだけでなく絶縁膜/半導体界面の高品質化も可能としたとする。
また、SiAlNとSiNの2種類の異なる膜の積層によりゲートフィールドプレートと呼ばれる張り出し構造を形成することで高電圧動作時の電界集中の抑制にも成功したという。
これらの技術を組み合わせた結果、FR3およびX帯である周波数8GHzにおいて電力付加効率(PAE)74.3%かつ9.8 W/mmの出力密度の同時達成を確認したとする。
同社によれば、同PAEの値はは2026年3月4日時点で5W/mm以上の出力を有するX帯パワーアンプとしては世界トップクラスの値になるという。
また、同デバイスを4Gや5Gで用いられる周波数に近い3 GHzで評価したところ、80.6%のPAEおよび10.5W/mmの出力密度を得たとのことで、幅広い周波数に適用可能であることも確認済みだとのことで、今後、実用化を目指して実装技術の開発と信頼性評価を進めていくとするほか、ミリ波やサブテラヘルツ波などの高周波デバイスにも適用することで、幅広い周波数範囲でワイヤレス機器の省電力化を図っていきたいとしている。
なお、同成果の詳細は、応用物理に関する先進的な成果を掲載する学術論文誌「Applied Physics Express」に3月4日付で掲載されたという。



