Windows Server 2016は2027年1月12日にサポート終了(EOS)を迎える。企業では移行計画の検討が進められているが、クラウド移行やハイブリッド環境の運用など、ITインフラの構成はますます複雑になっている。

日本マイクロソフトは3月3日にイベント「Azure Arc SUMMIT」を開催し、Windows Server 2016の移行に向けた考え方や、Azure Arcを活用した管理手法について説明した。

  • Windows Server 2016のサポート終了を背景に開催された「Azure Arc SUMMIT」

    Windows Server 2016のサポート終了を背景に開催されたイベント「Azure Arc SUMMIT」

ハイブリッド環境を統合管理する「Azure Arc」」

企業のIT環境はクラウドへの移行が進んでいる一方で、既存システムの構成や業務要件、セキュリティ要件などの理由から、システムをクラウドに移すことが難しいケースも多い。

その結果、オンプレミス環境を維持しながらクラウドを併用するケースが増えており、クラウドとオンプレミスが併存する「ハイブリッド環境」が一般的になっている。一方で、複数の環境を個別に管理する必要があることから、ITインフラの運用はより複雑化している。

日本マイクロソフト 執行役員 常務 コーポレートソリューション事業本部長の小林 治郎氏は、こうしたハイブリッド環境に関する海外の調査データを紹介した。Flexera社のレポートによると、企業の86%がマルチクラウド環境を採用しており、そのうち約70%がオンプレミスとクラウドを組み合わせたハイブリッド環境だという。

小林氏は「こうした傾向は日本だけのものではなく、世界的にもハイブリッドが主流になっている」と説明した。

  • Azure Arc SUMMITに登壇した、日本マイクロソフト 小林氏

    Azure Arc SUMMITに登壇した、日本マイクロソフト 小林氏

Azure Arcでオンプレとクラウドを統合管理

ハイブリッド環境の運用管理の課題を解決するソリューションとして、マイクロソフトが提案するのが統合管理サービス「Azure Arc」だ。Azure Arcは、物理サーバや仮想基盤などのオンプレミス環境や、AWSなどの他社クラウドを含むITリソースをAzureの管理基盤に接続し、サーバの状態監視やポリシー管理、パッチ適用、ログ収集といった運用管理を統合して管理できる仕組みを持つ。

これにより、複数環境にまたがるITインフラの運用をシンプルにするとともに、ポリシー適用やパッチ適用を統合することでセキュリティ対策の強化にも貢献するという。

  • Azure Arcの管理画面から、オンプレ・クラウドを問わずと統合管理が可能

    Azure Arcの管理画面から、オンプレ・クラウドを問わずと統合管理が可能

Azure Arcの3つのメリット

日本マイクロソフト 業務執行役員 パートナー事業本部 パートナー技術統括本部長の内藤 稔氏は、Azure Arcの価値を3つ挙げた。

1つ目はクラウドからオンプレミス環境を含めて統合管理できる点、2つ目はオンプレミスのライセンスをクラウドと同様の従量課金モデルで利用できる点、3つ目はAIなどクラウドのソリューションをオンプレミス環境にも展開できる点だという。

  • Azure Arcの価値について説明する、日本マイクロソフト 内藤氏

    Azure Arcの価値について説明する、日本マイクロソフト 内藤氏

GUI中心の管理で運用を簡素化

また内藤氏は、Azureの特長としてGUIの操作性の高さにも触れ、「Microsoftは長年WindowsでGUIを開発してきた会社であり、その知見がAzureの管理ツールにも生かされている」と説明した。

さらに、Azure Arcによって複数環境の管理を統合することで、運用負荷の低減にもつながるとした。第三者機関による調査では、運用効率の向上やセキュリティ強化などの効果が確認されており、ROIは約6カ月で回収可能とする試算も紹介された。

indows Server 2016のEOSにどう対応するか

今回のイベントでは、Windows Server 2016のサポート終了も重要なテーマとして取り上げられた。Windows Server 2016は2027年1月にサポート終了を迎える予定であり、多くの企業が移行計画を進めている。

OSのアップグレードはもちろん必須だが、既存システムとの関係やセキュリティ対策、運用体制などを踏まえ、ITインフラ全体を見直す契機にもなり得る。

マイクロソフトでは、このタイミングをインフラ刷新の機会と捉え、クラウド活用を含めたIT基盤の見直しを提案している。クラウド基盤を活用することで、AIサービスの利用や運用の自動化など、新しい技術を取り入れることも可能になる。

Windows Server 2025ではAzure Arc接続が標準化

また、移行先となる最新のWindows Server 2025ではAzure Arcとの接続が標準化されている。Windows Serverユーザーがから最も多く挙がる「パッチ適用をもっと簡単に」という要望に対しては、サーバをAzure Arcに接続することで、オンプレミス環境であってもAzure Update Managerを利用した更新管理が可能になる。

再起動不要の「ホットパッチ」に対応

更新管理では、パッチ適用の構造を見直した「ホットパッチ」に対応し、月次の更新プログラムはサーバ再起動を伴わず、従来に比べて短時間で適用できる(3カ月に1度のベースライン更新では再起動が必要)。

こうした仕組みにより、パッチ適用に伴う運用負荷の低減や、サービス停止時間の削減にもつながるとしている。

WSUSは非推奨へ、Azure Update Managerを推奨

長年Windowsの更新プログラム管理を担ってきたWSUS(Windows Server Update Services)は今後、推奨しない方針が示されており、Azure Update Managerの活用が選択肢として提示された。

  • Windows Server2025はAzure Arc接続が標準化

    Windows Server2025はAzure Arc接続が標準化

日本企業のハイブリッド運用の現状

イベントの最後には「日本におけるハイブリッド運用の現在地」をテーマにパネルディスカッションが行われた。マイクロソフトの進行の下、ソフトクリエイト、大塚商会、デル・テクノロジーズの担当者が登壇し、ハイブリッド環境の運用やクラウド移行の現状について議論が交わされた。

  • パネルディスカッションの様子

    パネルディスカッションの様子

イベント参加者へのリアルタイムアンケートも行われ、さまざまなAzure Arcについての質問を実施。「Azure Arcで有用と感じたのは?」という質問に対しては、「セキュリティ」「ハイブリッドクラウド管理」「AVD」など幅広い回答が集まり、用途の広さへの関心がうかがえる結果となった。

また「Azure Arcを一言で表すと?」という質問においては、「統合管理」「一元管理」といった回答から、「オンプレの進化」「夢と希望」「なんでも屋」などユニークな回答も寄せられ、参加者が多様な視点でAzure Arcを捉えていることがわかった。

今回のイベントを通して、ハイブリッド環境をどう効率化し、AIなど新しい機能も取り入れながら、より良いIT環境を実現していくかという方向性が、各社の取り組みから示された。