三菱電機は3月5日、同社が開発を担当し、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の「小型実証衛星4号機(RAISE-4)」に搭載され、2025年12月14日に打ち上げられた民生GPU実証機「GEMINI(cots GPU based Edge-computing for MIssion systems utilizing model based systems engiNeerIng、以下GEMINI)」の軌道上での運用において、初期機能の確認を完了したと発表した。
実証の概要
近年、地球観測衛星による観測データは、搭載されたセンサーの高分解能化や感度の向上、コンステレーション(多くの人工衛星で編隊を形成し、協調した動作をさせるシステム)化などで、データの取得量が増加傾向にありるという。
これに伴い、衛星から地上局へのデータの伝送時間や、地上局における増大した観測データの処理時間が増加し、特に災害時などの迅速な意思決定が必要な場面において、データの取得から利用開始までにかかる時間の短縮が求められている。
このような背景のもと、衛星自身でデータを処理して地上へ伝送する「オンボード処理」が、地上局への伝送時間を短縮し地上局でのデータ処理を不要とする技術として注目されている。
一方、高度なオンボード処理には衛星に高性能な処理装置が必要だが、宇宙空間では放射線、ロケット打ち上げ時の振動、極端な低温・高温などの過酷な環境条件で機器が故障するリスクが高く、GPUをはじめとした民生品の処理装置を使用するうえでの課題となっている。
GEMINIの概要と確認した初期機能
GEMINIは、民生品のGPUを用いて軌道上で観測データのオンボード処理を実証する機器。従来の同社製の衛星に使用されるプロセッサ比較して、約1000倍の演算速度を持つ高性能・低消費電力の民生品のGPUを使用し、宇宙環境への耐性を強化したシステムとして構築・開発した。
GEMINIの内蔵モジュールには、メモリや電源部品などの周辺部品が複雑・高度に組み合わされており、性能と衛星への搭載性を確保したまま宇宙環境に耐性のある部品への置き換えることが困難となっている。
そのため、同社が宇宙開発で培った知見を活用し、宇宙環境に適した筐体設計を採用することで、モジュールの部品を変更せずに過酷な宇宙環境への耐性を強化し、軌道上における民生品GPUの利用を実現したとのこと。
今回の初期機能確認では、GEMINIの所定のオンボード処理がすべて正常に動作したことを確認。また、オンボード処理により軌道上でSAR(Synthetic Aperture Radar)衛星の画像再生(衛星が観測したRAWデータを利用可能な画像データに処理)や、光学画像から地表面の変化や物体の自動検出を行う機能の実証に成功した。
今後1年間の定常運用において、GEMINIで取得されたデータをもとに、放射線などの宇宙環境が民生品GPUのハードウェア、ソフトウェアに与える影響を評価し、動作実績を積み上げる。
また、動作実績をもとにエラーの検知方法や回復策を検証し、宇宙環境で発生する民生品GPUの処理動作エラーに関するデータを蓄積することで、宇宙環境における民生品の利用時にエラーを予測し、ある程度のエラーを許容してリカバリー可能な新しいシステムの開発に活用。
これらの取り組みにより、民生品の活用による衛星の高機能化・高性能化を図ることで、各衛星・宇宙機プログラムへの採用を提案していく考えだ。

