XNOVA、京都大学(京大)、テラバースの3者は2月24日、仏教経典を学習した生成AIを搭載する仏教対話ヒューマノイドロボット「ブッダロイド」を開発したと共同で発表した。
同成果は、XNOVA、京大 人と社会の未来研究院の熊谷誠慈教授、同・亀山隆彦准教授、テラバースの野崎政春シニアリサーチフェロー、同・生田目敬大シニアリサーチフェローら共同研究チームによるもの。詳細は、2月5日開催の国際シンポジウム「University of Zurich - Kyoto University Symposium 2026」にて口頭発表された。
“身体性”を有する宗教AIヒューマノイドが完成
近年におけるヒューマノイドロボットの発展は目覚ましく、中国や米国を中心に、運動能力や身体性を活かした社会実装が加速している。こうした動向の中、研究チームはこれまで仏教対話AI「ブッダボット」や仏教AR「テラ・プラットフォーム」などを展開してきたが、さらなる課題として“身体性”の獲得が強く求められていたとする。そこで今回、対面での触れあいを実現すべく、ヒューマノイドロボットの開発に着手したという。
キリスト教や仏教においてはすでにロボットが存在し、その一部は対話機能を備えている。しかし二足歩行が可能で、ヒトに近い全身動作を実現し、なおかつ身体的接触を伴う対面環境で、自然な口頭対話を行う宗教AIヒューマノイドロボットの実装例は、現時点ではこれまで確認されていなかったとする。
そこで今回の研究では、中国・Unitree Robotics製ヒューマノイドロボット「Unitree G1」に、仏教対話AIの最新版「ブッダボットプラス」を搭載し、仏教AIヒューマノイドロボット「ブッダロイド」を開発。身体性を獲得したことで、対話AIやARなどでは難しかった対面環境での身体的インタラクションが可能となった。
仏教システム実装はテラバースが中心となり、ChatGPTの最新版が応用された。仏教経典の文言を回答のベースとしつつ、OpenAIの大規模言語データベースに基づいて、解釈や追加説明を生成し提供するという構造が採用されている。仏教経典のテキストデータは、チャットボットの出力に適した形に作成されており、京大の熊谷教授らとテラバースで共同開発された。なお、ブッダロイドの音声については青年男性を標準とするものの、性別や年代の変更も可能とのことである。
ブッダロイドの身体性は、XNOVAの技術により実現されたとのこと。同社のロボティクスチームは、宗教空間での対話に適した身体動作が設計された。具体的には、「宗教空間に適した、ゆるやかで荘厳な速度での歩行動作」、「相手に対して敬意を表す礼拝動作」、「仏や菩薩、高僧などへの信仰や敬意を表す仏教における代表的な所作である合掌動作」が実装済みだ。
さらに、「ブッダボットプラス」との連携により、音声認識による問いかけの受け付けから、AIによる応答生成、音声合成による発話、そして身体動作までを一体的に制御することで、言葉と身体動作が調和した対話体験を実現したという。
単なる動作の再現にとどまらず、適切な速度やタイミング(間)で、どの姿勢を取るかが宗教儀礼の質と大きく関わることから、そうした点も配慮されているとする。身体を伴うことで、宗教儀礼における対話の質そのものが変化するとしている。
これらに加え、熊谷教授らは、仏教AIに身体性を付加することに伴う倫理的・法的・社会的課題(ELSI)についても、利点とリスクの両面から議論を進めているとした。
「ブッダロイド」は、宗教界におけるAIヒューマノイドロボット活用の可能性について、学術的・社会的議論を喚起すると共に、産業などの分野への応用も期待されるという。具体的には、学術的価値・可能性としては、AIロボット開発の宗教分野への展開が挙げられる。伝統的な宗教儀礼・宗教活動の現代的価値の再考も可能になるとする。
また産業的価値・可能性に関しては、今後、産業界へのヒューマノイドロボットの実装が進んでいくことが予想されるが、経営理念や経済理論など宗教以外のデータを学習した「思想AI」を搭載した、「思想AIヒューマノイドロボット」を誕生させることで、経営アドバイスや経済分析などのコンサルティングを行えるヒューマノイドロボットと職場で協働することも期待されるとのこと。さらに、従業員のカウンセリングやメンタルケア、HR分野へのヒューマノイドロボット参入も期待されるとした。
そして宗教的価値・可能性については、生身の人間のみが行ってきた宗教儀礼やティーチングなどの宗教活動の一部については、ヒューマノイドロボットが代行できる可能性があるという。生身の人間の僧侶には直接話しにくい相談を行うことも可能であり、宗教行事の一部代行など、宗教界の人手不足をロボットに代行させることも可能となるとしている。
生成AIには、情報の典拠が不明であることや、個人情報の流出、著作権の侵害など、情報の信頼性に関わる課題が山積している。また、近年は生成AIとの会話にのめり込む依存症や、その心理的影響などについての危険性も指摘されるようになってきた。ブッダボットプラスは、原典を学習しており、情報ソースの透明性向上が図られているという。
加えて、ロボットが宗教行為を補助・代替することによって生じうる価値変容や喪失要素についての検討も行っていく必要がある上、ロボットとの物理的接触に際し、安全性の問題についても検討が必要とするとした。こうした倫理的・法的・社会的課題を踏まえた上で、研究チームは今後、さらに人類史を代表する哲人や聖者たちの対話AIを順次開発し、デジタル空間上に豊かな伝統知を再現していく予定としている。



