現在、国内外で「抹茶」が空前の大ブームになっていることをご存知だろうか。

このブームの背景には健康志向やSNS映え、コーヒー代替需要などがあり、2024年の日本茶輸出額は過去最高を記録。検索量も、2023年以降右肩上がりで増加している。

それに付随する形で煎茶も注目を集め、まさに日本の文化とも言える「お茶」が世界中で注目されているのだ。

今回は、そんなお茶を扱う企業の中でもリーディングカンパニーとしてさまざまなブランドを展開している伊藤園のマーケティング施策に迫る。

伊藤園のマーケティング施策について、マーケティング本部 マーケティングリサーチ部 部長の藤村雅人氏、同本部 緑茶ブランドグループ 倉橋悠太氏、国際事業推進部 抹茶営業推進課 矢野弘子氏に話を聞いた。

  • 左から伊藤園 藤村氏、矢野氏、倉橋氏

    左から伊藤園 藤村氏、矢野氏、倉橋氏

「ベストくん」と伴走するマーケティング施策

伊藤園では、これまで展開しているブランドごとにさまざまなマーケティング施策を実施してきたという。

特にデジタルマーケティングの文脈では、SNSで「お~いお茶」のX(旧Twitter)アカウントの運用を中心にマーケティングを展開。そうした中、動画配信なども自社制作で機動的に進めてきたものの、満足のいく効果は得られなかったという。

「伊藤園はマーケティング活動として、テレビ、Web、SNSなど、さまざまなチャネルを通じて、ブランド認知度と企業価値の向上に取り組んでいます。しかし現場では、施策の迅速な企画・実行やプロモーション効果の予測精度に課題を抱えていました」(藤村氏)

  • 伊藤園のマーケティングの課題について語る藤村氏

    伊藤園のマーケティングの課題について語る藤村氏

そこで導入されたのが「BestMove」だ。BestMoveは、NECが提供する、企業のマーケティング活動においてマーケターに最善の一手を提案し、確信を持った意思決定を支援するクラウドサービスだ。

同サービスは、生成AIをはじめとするNECの独自AI技術と、クレジットカードやID-POSなどの購買傾向分析データを組み合わせることで、従来は困難だった、特定の商品やサービスに興味を示す顧客のみを高度に抽出し、それらに対して高い反応率を示すことが推定された施策を瞬時に立案してくれる。

  • BestMoveのイメージ

    BestMoveのイメージ

藤村氏はBestMoveに最も魅力を感じた点として「マーケティング施策の数値化の困難さ」を挙げた。

「従来は『これをやったらどうなる』という効果を言葉では表現できても数値化できないモヤモヤがありました。ですが、BestMoveを活用することで、さまざまな推計を用いて施策効果を数値で示せるようになることが導入の決め手となりました」(藤村氏)

このような背景の下で導入されたBestMoveについて、矢野氏は「壁打ちやアイデア出しに加え、最近では画像生成機能も活用している」と説明した。同氏は、企画の初期段階でBestMoveと一緒にアイデアを考えた後、企画が固まった段階で再度インプットして動画制作のアイデアを得ているのだという。

  • BestMoveの活用方法について語る矢野氏

    BestMoveの活用方法について語る矢野氏

使用範囲は当初、緑茶ブランドグループのみだったが、現在は全ブランドに展開中だ。

担当者間の会話では、同サービスのことを「ベストくん」というあだ名で呼ばれるほど身近な存在になっており、頼もしい同僚として活躍しているという。

1本5000円のお茶を売るマーケティング施策

伊藤園のマーケティング活動のさまざまな場面で活用されているBestMoveだが、その中でも特徴的な成功事例として、「瓶 お~いお茶 山の音」という5000円の高級茶商品のプロモーションが紹介された。

  • 1本5000円の高級茶「YMA NO NE」(右)

    1本5000円の高級茶「YMA NO NE」(右)

倉橋氏は、同商品が通販限定から一般販売にも販路を拡大した際、「大谷翔平選手との契約発表時に、瓶の「お~いお茶」を贈答したことで話題となり販売は好調だったものの、同じプロモーションを再度実施しても継続的な成果を得るのは難しかった」という経験を語った。

  • 「瓶 お~いお茶 山の音」のプロモーションについて語る倉橋氏

    「瓶 お~いお茶 山の音」のプロモーションについて語る倉橋氏

その事態を解決するために導入されたのがBestMoveだ。BestMoveとのアイデア出しの結果、商品のこだわりをエピソード形式で解説する記事風広告で商品価値を伝える手法を採用した。

この施策を実施した結果、数日で商品が完売したという。購入層は40代・50代以上が多く、広告の内容を見て商品のこだわりに共感した購買層が、プレゼント用途で購入することが多かったそうだ。

インバウンドに対応した動画制作

もう一つの事例として、体験型抹茶飲料「matcha LOVE 抹茶」(パウダーイン)シリーズの事例が紹介された。

同商品は、ペットボトルのキャップ部分に封入した抹茶を開封時に中へ落として水と混ぜることで、いつでもどこでも手軽に作りたての抹茶を楽しめるユニークな商品で、海外インフルエンサーが紹介したことで、海外での人気に火が付いたという。

  • 体験型抹茶飲料「matcha LOVE 抹茶」

    体験型抹茶飲料「matcha LOVE 抹茶」

そこからインバウンド向けに商品の展開を決めたものの、自社制作の動画では思うような成果がなかなか得られなかった。そこで、「前回と同じ撮影場所・出演者を起用しながら、費用を抑えつつ表現の幅や改善の余地が見込める新動画を制作すること」を条件にBestMoveの活用を進めたという。

BestMoveを活用した動画制作では、多言語化の提案(英語、中国語、韓国語、タイ語、日本語の5カ国語)や、インバウンドでバズる三種の神器(抹茶、着物、桜)の活用、舞妓さんがシェイクする体験型コンテンツなどのアイデアが提案された。

さらにBestMoveの分析により、同商品を好む顧客層の特徴や潜在ニーズなどのインサイトを抽出し、伊藤園が実現したいことや施策の方向性をインプットしたところ、「お点前、シャカシャカでございます」といった人間では思いつきにくいキャッチコピーが提案されたという。

  • BestMoveを利用していないプロモーション動画(左)と利用して制作した動画(右)の一場面

    BestMoveを利用していないプロモーション動画(左)と利用して制作した動画(右)の一場面

これらをもとに制作した動画をSNS上で公開したところ、24時間で閲覧数が前回比125%増となる3.1万回に達し、商品の販売拡大にも貢献する結果となった。

BestMoveで「未来予想図の答え合わせを」

最後に藤村氏は、今後の展望として、「BestMoveで未来予想図の答え合わせがしたい」と語った。

「リサーチ部門の観点で、消費トレンドや物価上昇時の行動変化の分析などにBestMoveを活用していきたいと思っています。そして、その分析がどのくらい正しかったのかについて答え合わせができたらいいな、と思っています」(藤村氏)

また、直近で国際事業推進部に異動になったという矢野氏は「国際事業推進部の抹茶担当として、世界に向けたプロモーション展開にBestMoveを活用していきたい」と、新しい部署でもBestMoveを活用していくことを表明した。

なお、伊藤園とNECは、BestMoveの導入をきっかけに、両社のブランド価値を向上し合う共創パートナーとして、サービスの改善や拡販活動などに取り組み、連携を強化していく構えだという。