高級魚のノドグロ(アカムツ)の完全養殖に成功したと、近畿大学が5日に発表した。近畿大による完全養殖は、2002年のクロマグロなどに続いて30魚種目となる。「天然物と同じような脂の乗りとうまみがある」といい、月内に「近大ノドグロ」として近畿大学関連のレストランで提供していく予定という。

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    完全養殖によるノドグロの稚魚(ふ化後106日、近畿大学提供)

  • 水槽内を泳ぐ完全養殖によるノドグロの稚魚(近畿大学提供)

ノドグロは日本海沿岸で水揚げされることが多い白身魚で、脂が乗ってうまみがあるため「白身のトロ」とも呼ばれる。近年、人気が増している一方で供給が追いつかず、高値で取引されるようになっているという。近畿大学発ベンチャー企業の提案で、2015年から近畿大学水産研究所・富山実験場(富山県射水市)で完全養殖の研究が始まった。

近畿大学水産研究所長で富山実験場長の家戸(かと)敬太郎教授によると、ノドグロを漁獲する時間帯や場所などを工夫して、2019年ごろ、安定的な採卵と人工授精・人工ふ化が可能になった。しかし、ふ化後に稚魚の浮き袋が肥大し、水面をくるくる回っているうちに全滅するという問題が起きた。水深100メートルほどにすむ深海魚である点を考慮して、水温の管理のみならず、水中に泡として溶かし込む酸素の飽和度を調節することで卵や稚魚が死ぬのを防ぐことに成功。22年には1万匹、23年には3万匹の稚魚を養殖によって育てることができた。

さらには完全養殖を目指し、2022年に天然物のノドグロの卵からふ化した稚魚を育て、25年10月にメス6匹にホルモンを投与して計36万個ほどの卵を採取。人工授精した2日後、約4万匹がふ化したことで完全養殖が実現した。今月初めの時点で、ふ化してから120日程度の稚魚7千匹ほどを飼育できているという。

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    人工授精・人工ふ化で生まれたノドグロ(上)が産んだ卵から稚魚がふ化したことで完全養殖が実現した(近畿大学提供)

今後は量産に向けて採卵や飼育の技術を向上させ、種苗(稚魚)の安定的な生産技術を確立する。現状の人工飼育ではマダイやブリに比べて成長が遅く、出荷サイズ(全長20センチ、重さ150グラム程度)になるまで3年かかる。また、人工ふ化したノドグロの9割以上がオスとなるという課題もある。家戸教授は「養殖研究の事例が少なく、まだまだ謎の多い魚だが、完全養殖が達成できたので、成長の早い親の子どもを増やす品種改良の道が開けた。成長の早いメスのみ生産する方法なども開発したい」と説明している。

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    近畿大学水産研究所・富山実験場では、水深100メートルからくみ上げた海水をノドグロの飼育に使っている(近畿大学提供)