神奈川大学、京都工芸繊維大学(京工繊)、近畿大学(近大)の3者は2月13日、「メリライト型構造」を持つ酸素貯蔵材料「Ba2MnGe2O7+δ」が従来にない特異な酸素の吸収・放出特性を示すことを発見し、酸素を放出すると白色に、酸素を吸収すると青色に可逆的に変化することを確認したと共同で発表した。
同成果は、神奈川大 化学生命学部の本橋輝樹教授、同・大石耕作 研究員、東北大学 多元物質科学研究所の山根久典教授(研究当時)、京工繊 材料化学系の細川三郎教授、近大 理工学部の杉本邦久教授、同・Zi Lang Goo博士研究員(研究当時)らの共同研究チームによるもの。詳細は、米国化学学会が刊行する材料化学を扱う学術誌「Chemistry of Materials」に掲載された。
酸素貯蔵材料は、温度や雰囲気の変化に応じて酸素を可逆的に吸収・放出できる機能性酸化物であり、酸化還元触媒や酸素分離膜、固体酸化物形燃料電池、次世代の酸化物イオン電池などへの応用が期待されている。
マンガン(Mn)を含む酸素貯蔵材料は、その価数変化(Mn2+/Mn3+)を利用して酸素を出し入れする。しかし、「YMnO3-δ」や「BaYMn2O5+δ」など、従来のマンガン系酸素貯蔵材料では、酸素を放出するために5%水素/窒素やアンモニアといった酸素を奪い取る性質の強い強力な還元雰囲気が必要だった。そのため、より穏やかな条件で動作する新規材料の開発が、酸素関連技術のさらなる発展に向けられていた。
そこで研究チームは今回、一般式「A2BC2X7」で表され、四面体配位したカチオンが層状に連なる平面ネットワークを特徴とする「メリライト型構造」に着目。同構造は多様な元素置換が可能で、磁性体や蛍光体など幅広い機能性材料の母体として注目されている。今回の研究では、同構造を持つ「A2MnC2O7(A=Sr、Ba / C=Si、Ge)系酸化物」の酸素貯蔵特性を系統的に調査したという。
調査の結果、バリウム、マンガン、ゲルマニウムで構成される「Ba2MnGe2O7+δ」(BMG)が、最も優れた酸素貯蔵特性を示すことが判明した。BMGの最大の特徴は、大気中や酸素雰囲気下でも温度変化のみで酸素を放出できるという点だ。従来のMn2+/Mn3+系材料は酸素放出に強い還元雰囲気が必須だが、BMGは純酸素下でも200℃付近で酸素を取り込み、500℃付近で放出することが確認された。最大酸素貯蔵量は1.2重量%(δ≒0.45)に達することも明らかにされた。
放射光X線吸収分光法、放射光その場X線回折、単結晶X線回折、粉末中性子回折などを用いた詳細な結晶構造解析により、酸素吸収・放出のメカニズムも解明された。酸素吸収時にはMn2+がMn3+に酸化され、結晶構造中のMnO4四面体ユニットが、MnO5三角両錐ユニットへと変化。これに伴い、結晶構造は基本的なメリライト型構造から、5a×5a×1cの周期を持つ「超構造」へと相転移することが突き止められた。
さらにBMGは、酸素を取り込むと白色から鮮やかな青色へ変化し、酸素の放出に伴い可逆的に白色へ戻ることが明らかにされた。この青色への変化は、Mn3+が三角両錐配位(D3h対称性)を取ることで可視光応答の電子遷移(d-d遷移)が許容されることに起因しており、これは有名な青色無機顔料「YInMnブルー」と同様のメカニズムとした。
BMGの酸素含有雰囲気中で酸素を放出するというユニークな性質は、酸素吸収相における多面体ネットワークの構造不安定性に起因すると考えられている。この知見は、新たな酸素貯蔵材料の設計指針として極めて重要だ。雰囲気に応じた白色/青色の顕著な色の変化は、酸素センサや酸素感応性無機顔料など、新たな応用分野を開拓する可能性が期待されるとしている。
