ENEOSは、米ラスベガスで開催された「CES 2026」(会期:現地時間1月6〜9日)に出展し、冷却をテーマに「液浸冷却液」や「放熱グリース」、「EV Fluid」を、取り組み事例と共に紹介した。同社商品が使われているテスラのサイバートラックや、データセンター向けサーバー液浸冷却液「ENEOS IXシリーズ」を使ったサーバーのモデルが複数展示され、来場者の注目を集めていた。

  • ENEOSは“油で冷やす”技術を「CES 2026」で紹介した

    ENEOSは“油で冷やす”技術を「CES 2026」で紹介した

展示はLVCC(ラスベガス・コンベンションセンター)のノースホールにある「VEHICLE TECH & ADVANCED MOBILITY」ゾーンで、ホール全体ではサスティナビリティやエンタープライズAIなどのカテゴリが集まる。2025年はENEOS全体で出展していたが、2026年は潤滑油カンパニーでの出展となり、“油で熱を冷ます”ことで熱処理の問題を解決する、サーマルソリューションの実現に向けた商品をメインに紹介していた。

サイバートラックの部品にも採用された「EV Fluid」

モビリティ関連では、EV(電気自動車)のモーターやバッテリー、エアコンなどの用途にあわせて、潤滑と冷却、保護を目的に開発された専用オイル「EV Fluid」を展示。この商品は、テスラのサイバートラックに搭載された部品に使われている。

  • 「EV Fluid」は用途にあわせて商品を展開

    「EV Fluid」は用途にあわせて商品を展開

  • ENEOS仕様にラッピングされたテスラのサイバートラックが目を引く

    ENEOS仕様にラッピングされたテスラのサイバートラックが目を引く

  • EV用の液浸冷却バッテリーシステムの展示

    EV用の液浸冷却バッテリーシステムの展示

電子機器のTIM(Thermal Interface Materials)として開発した「放熱グリース」は、これまで培ってきたグリース製造技術と添加剤配合技術を生かし、高熱伝導性、接点不良防止、優れた作業性を追求している。

  • 「放熱グリース」の解説に見入る人の姿もあった

    「放熱グリース」の解説に見入る人の姿もあった

注目集めるDC向け冷却液「ENEOS IXシリーズ」のデモ

ブースで最も注目を集めていたのが、データセンター(DC:Data Center)向けサーバー液浸冷却液「ENEOS IXシリーズ」と、それらを使用した液浸サーバーのデモだ。

自動運転や生成AIにより高出力のデータセンターが求められ、空冷や水冷よりも冷却効果が高い液浸サーバーの開発が進んでいる。油に浸けて冷やす液浸は、空冷や水冷に比べて効率が良く、結露や冷却ムラ、ほこりからサーバーを守るといった効果もある。

「ENEOS IXシリーズ」は添加剤処方技術によって使用期間を長期化し、高い酸化安定性と電気絶縁性を両立させており、2024年4月の発売後、複数の会社に採用されている。

この製品は、日本の消防法にあわせて引火点が250度以上かつ低粘度の「タイプJ」、低粘度で自動点火温度が300度以下の「タイプH」、石油由来ではない植物ベースの合成油でカーボンフットプリントを削減する「タイプB」の3つがある。

  • 「ENEOS IXシリーズ」は用途や目的にあわせて3つのタイプがある

    「ENEOS IXシリーズ」は用途や目的にあわせて3つのタイプがある

会場では3社による、異なるタイプの液浸サーバーのデモが展示されていた。

1社目は英Iceotope Technologiesの製品で、完全密封型のサーバーシャーシ内を油で浸すことで、サーバーが放射する熱を効率的に処理でき、既存のデータセンターでシームレスに導入できる形状になっている。会場では内部がわかるようガラスケースに入れられており、中がどのような仕組みになっているのかがわかりやすかった。

  • 英Iceotopeのサーバーは既存のデータセンターでそのまま使用できる

    英Iceotopeのサーバーは既存のデータセンターでそのまま使用できる

  • 中を流れる油は粘度が低く水のように見える

    中を流れる油は粘度が低く水のように見える

2社目は米GRC(Green Revolution Cooling)が開発するGRC Immersionソリューションを用いたPICO 5Uのデモで、液体に満ちた縦型のボックスにサーバーを垂直に静めて冷やすというもの。フルサイズのラックは1台あたり最大180kWをサポートする。業界標準サーバーとハードウェアに対する互換性があり、カスタムシャーシは必要としない。現在、20カ国以上で採用されているという。

  • 米GRCの展示用のデモ機で中が見える

    米GRCの展示用のデモ機で中が見える

  • 米GRCの展示デモ機を上から見たところ

    米GRCの展示デモ機を上から見たところ

3社目は日本のスタートアップ、Quantum Mesh(クォンタムメッシュ)が開発する、日本初の商用液浸冷却システム「KAMUI」だ。独自開発の閉鎖循環式の単相液浸冷却システムで、サーバーの熱を効率的に冷却液へ吸収して地下水と熱交換する。

水を汲むポンプとオイルを回すポンプの動きだけでサーバーを冷却できるので、従来の空冷方式に比べて使用電力を大幅に削減できるのが特徴。基本的には地下水を利用するが、CES会場があるラスベガスのように、水が少ない場所でもチラー(冷却水循環装置)を使って水を冷やせるので、既存のデータセンターと同じようにどこでも設置できるという。

会場でデモを行っていた、Quantum Meshの取締役・笹田亮氏は「物理限界にほぼ近い性能を実現しており、データセンター全体としてはPUE(Power Usage Effectiveness、電力使用効率)1.03~1.04という世界最高水準の効率を実現している。水も油も循環して使用するので、ランニングコストで電気代を約40%削減できる」と話す。同社では、ENEOSのXIシリーズが発売されたのを機に開発に踏み切り、今後も性能を高めるべく協力関係を結んでいる。

  •  Quantum Meshは商用液浸冷却システム「KAMUI」を公開

    Quantum Meshは商用液浸冷却システム「KAMUI」を公開

2026年のCESは「CES Foundry」と呼ばれる、NVIDIAを中心にAIやハイパフォーマンスコンピューティング関連の展示が集まるエリアが新たに登場。通常よりもエンジニアリングや開発寄りの参加者が多かったのか、ENEOSブースにも多くの人が訪れていたように見えた。

いずれにしてもデータセンターのニーズはますます高まる方向にあり、油で冷やす技術がさらに進化するのか注目したいところだ。