サイボウズの「kintone」と、Microsoftの「Power Platform(Power Apps)」は、どちらもノーコード・ローコードで業務アプリ作成やデータ分析が可能なツールであるため、競合関係にあると捉えられやすい。自社でどちらを導入しようか迷っている読者も多いだろう。
しかしこれらのツールは互いに相反するものではなく、業務内容や利用目的に応じて、適材適所な使い方が可能だという。また、場合によっては両ツールを「共存・共栄」させる使い方も可能とのことだ。
本稿では、サイボウズが2025年10月に開催した年次イベント「Cybozu Days 2025」のトークセッションの中から、Power Platformとkintoneの使い分け、そして併用の勘所を探ってみたい。
トークセッションではBizOptimars 代表取締役社長でMicrosoft MVPのりなたむ氏と、ロート製薬DX / AI推進室の柴田久也氏が、それぞれのツールの使い方を紹介した。また、サイボウズ エンタープライズ営業部の小島雄一朗氏がモデレーターを務めた。
kintoneとPower Platform、どちらを導入するべき?
柴田氏によると、ロート製薬ではkintoneとMicrosoft365をどちらも導入しており、両ツールの強みや特性に応じて使い分けているという。
具体的には、kintoneは業務改善のプラットフォームとして使用しており、柴田氏らDX推進室によるアプリ内製開発をはじめ、現場担当の非エンジニア社員による市民開発も進められている。
一方のMicrosoft365は、WordやExcelといった旧Officeツールの他、Teams、Outlookなど日常のビジネスアプリケーションの基盤として導入。業務によってどちらのツールを使うのかを選択している。
りなたむ氏は、「アプリ開発を伴走支援する中では、kintoneとPower Platformをどちらも導入して、業務に応じて使い分けている企業が多いと感じる。DX(デジタルトランスフォーメーション)を進めるために部署ごとにどちらかを導入した結果、企業内にどちらのツールも共存しているのだろう」とコメントしていた。
kintoneとPower Platformは共存・ 共栄も可能
現場のIT化やDXを進める際には、紙資料を含めた既存ツールのレイアウト変更が障壁となり得る。
こうした課題に対し、りなたむ氏は「現場の方が利用するフロントエンドは、Power Appsのキャンバスアプリで自由にレイアウトをデザインできる。その裏側を日本の商習慣に合わせてkintoneで構築するように、相互に連携したシステム開発が可能」と説明した。
その際にはkintoneのAPI連携機能や、Power Appsのカスタムコネクタ、CDataのConnect AIなどが利用できる。
さらに同氏は、「現場の担当者は繁忙期と閑散期のアルバイトのように、人員の増減が想定される。担当者側(フロントエンド)のPower Appsはチケット制のプランで、人数の増減が少ないバックオフィスはkintoneでというように、ライセンスを適切に設計することで、コストをできるだけ抑えながら運用できる」と、アドバイスしていた。
両ツールを導入したロート製薬が見つけた使い分けの"勘所"とは?
柴田氏はkintoneとPower Platformの使い分けについて、「自己(自社)理解」が重要だと紹介した。
ロート製薬ではkintoneを市民開発のプラットフォームとして利用しており、多くの社員がkintoneを認知し、接点を持っている。また、Microsoft 365は一部を除くほとんどの社員がアカウントを保有し、旧Officeなど多くのツールを日常的に利用している。
同社ではkintoneを用いた市民開発が普及し、各プロジェクトを通して得られたナレッジが蓄積されてきたという。一方で、Microsoft 365はExcelやWordなど利用頻度の高い親近感のあるツールが活用されている。
社内で両ツールが共存し、使い分けが進む中、柴田氏は「自己理解の上で、業務改善の最適解はkintoneだ」と語った。
Power Platformは依然として英語の資料が多く、日常的な業務改善や市民開発には一定のハードルが残されている。これに対しkintoneは自習コンテンツが多く、多様なユーザーコミュニティの運営も活発だ。
「ITツールの選定や意思決定の際には、予算やサポート、セキュリティなどを比較する場合が多いはず。ぜひ、これらに加えて自社のカルチャー(文化・風土)にフィットするのかという観点でも検討してほしい」と、同氏は会場の参加者にアドバイスを送っていた。
さらに、ITツールの選定者と意思決定者が異なるという組織に対して、「より経営層に近い意思決定を行うレイヤーは、現場の動きが見えづらい。予算や機能だけでなく、現場の担当者にフィットするカルチャーも含めて、意思決定者に丁寧に伝えて理解してもらうのが良いだろう」と話していた。
同氏はツールの選定について、「"ベスト・オブ・ブリード"が重要」だと示していた。ベスト・オブ・ブリードとは、異なるベンダーのシステムやツールを組み合わせ、自社に最適な環境を構築する戦略を指す。いわゆる"Suite"とは逆の考え方だ。
「業務や目的に応じて最適な製品を選択してほしい。ツールはあくまで手段であり、何を達成したいのかが大事。ツールありきで考えるのではなく業務シーンに合わせたツールを選ぶ、適材適所ではなく適所適材の考え方ができるはず」(柴田氏)






