11月13・14日にサンシャインシティ文化会館にて、「コールセンター/CRM デモ&コンファレンス 2025 in 東京が開催された。日本HPは同社の強みを生かした展示を行っていた。会場を一通り見てみたが、商材としてパソコンを展示していたのは(おそらく)唯一の存在だった。

  • コールセンター/CRM デモ&コンファレンス 2025 in 東京の日本HPブース

    コールセンター/CRM デモ&コンファレンス 2025 in 東京の日本HPブース

Polyブランドのヘッドセットを展示

コールセンター/CRMの展示会である以上、HPブースのメインの商材はPolyブランドの製品である。コールセンターというと古くは電話、現在はパソコンの前にヘッドセットをしたオペレーターが並んでいる様子を思い浮かべるだろう。同社はPolyを2022年に買収し、Plantronicsブランドをリブランドした。

多数のオペレーターが並び、長時間の電話応対を行うため、コールセンターにヘッドセットは不可欠な製品ともいえる。昨今の製品は双方向のANC(Active Noise Cancellation)が付いており、ANCにより、対応者の多いコールセンター内でも隣のオペレーターの声は相手に伝わらず、オペレーターは相手の声が明瞭に届く。長時間の装着でもオペレーターが疲れない装着・安定感も重要な要素だ。

  • コールセンター向けの展示会という事で、スペースの多くはPolyブランドのヘッドセット

    コールセンター向けの展示会という事で、スペースの多くはPolyブランドのヘッドセット

  • 左は一般ビジネスマン向けヘッドセット、右は両耳ヘッドセットで、展示では中央のIP電話とUSB接続していた。ボタン一つでヘッドセットでの応対が可能だという

    左は一般ビジネスマン向けヘッドセット、右は両耳ヘッドセットで、展示では中央のIP電話とUSB接続していた。ボタン一つでヘッドセットでの応対が可能だという

コールセンターでもAIを活用

また、AIブームの真っただ中ということもあり、同展示会でもコールセンター業務におけるAI活用をアピールしているブースが多くみられた。

AIの利用には計算資源が必要であり、従来はワークステーションやクラウド環境が必要だった。しかし、ここ数年AIの推論処理を末端で行い、パソコンの世界ではAI PCというCPU/GPU/NPUの計算源を駆使する製品市場が立ち上がりつつある。

PCベンダーは昨年からAI PCを商品化している。もちろんHPも例外ではなく、従来主流だったIntel使用パソコンだけでなく、AMDやQualcommを使用したパソコンを販売中だ。

  • 展示の一角にHPパソコンを展示。デスクトップは小型の方が日本では人気があり、中央のSFF筐体で10L。左の超小型筐体のHP EliteDesk 8 Mini G1i Desktop AI PCはディスプレイの裏に取り付けることも可能なAI PCだ

    展示の一角にHPパソコンを展示。デスクトップは小型の方が日本では人気があり、中央のSFF筐体で10L。左の超小型筐体のHP EliteDesk 8 Mini G1i Desktop AI PCはディスプレイの裏に取り付けることも可能なAI PCだ

HPが他のパソコンベンダーと大きく異なるのはPolyブランドを手中にしている点にある。このため、HPのコマーシャルPCにはPolyの技術が使われたオーディオ、ビデオ機能が含まれている。周りが会話で騒がしいコールセンターでパソコンのスピーカーとマイクを使って応対するのは非現実的だろうが、在宅勤務での対応やWeb会議等で威力を発揮するだろう。

HP製PCの注目すべき2つのセキュリティ機能

HPのパソコンのもう一つの強みはセキュリティだ。HPは社内にセキュリティチームを抱えているだけでなく、ソリューションも提供している。筆者として気になるHPのセキュリティ機能・サービスが2つある。

「HP Endpoint Security Controller(ESC)」

一つは耐量子暗号(PQC:Post-Quantum Cryptography)に対応した第5世代の「HP Endpoint Security Controller(ESC)」だ。現在のWindows 11パソコンではブートローダーを起点としたトラストチェーンがあり、第三者による悪質な改ざんを防ぐようになっている。

ここで重要なのが電子署名で、現在は大きな数値の素数の掛け算や楕円曲線の特性を使用したものを用いている。これらの暗号は現在のコンピュータでは計算量が多すぎて事実上解読できないためだ。

ところが、十分な性能の量子コンピュータがあれば掛け算の値から素数がわかる手法がすでに考案されている。現在は解けなくてもまずデータを取得しておいて、解読できるようになるまで保管する「Harvest Now, Decrypt Later」という手法も考えられている。

例えば、機密解除が20年後なのに、15年後に解読されてしまえば問題となる。説は色々あるが10年後に現在の暗号が解読できる量子コンピューターが登場するとも言われている。

これに対抗するのが耐量子暗号だ。量子コンピューターを使っても解読が困難なアルゴリズムを使う事で、実用的な量子コンピューターが登場したとしても秘密を守り、改ざんを阻止できるようになる。

すでにHPでは耐量子暗号を使用した第五世代のHP Endpoint Security Controllerを昨年から順次コマーシャルPCに搭載している。これによりUEFIの改ざんを防ぎ、トラストチェーンを守るのだ。第五世代のESCが入っているHPのコマーシャルPCならば将来に備えた安心が得られるだろう。

「HP Protect and Trace with Wolf Connect」

もう一つは業界でいち早くサービスを開始した企業向けのデータ通信使い放題のノートPC「HP eSIM Connect」と電源オフ時でも遠隔管理できるMDMソリューション「HP Protect and Trace with Wolf Connect」だ。

前者は出先でもインターネットアクセスが可能となり、後者はHP eSIM Connect対応PCに含まれているLTE Cat-Mを使用して、PCの電源が入っていなくてもリモートからパソコンの現在地をリアルタイムに探索可能。さらに遠隔で操作ロックやデータ消去が行える機能だ。

このようなMDMは他社でも提供されているが、HP Protect and Trace with Wolf ConnectはLTE Cat-Mを使用することでWi-Fiの接続がなくても対応可能な上、最小契約数がなく1台から使えるのが他社にないアドバンテージとなっている。すべてのコマーシャルPCで対応していない点には注意したいが、盗難や紛失の可能性のある利用環境で、機微情報を扱うならば検討に値するだろう。

  • HP EliteBook X G1i 14 AIはモデルにもよるがHP eSIM ConnectとHP Protect and Trace with Wolf Connectにも対応するAI PCだ。日本中ほとんどの場所でデータ通信が行え、PC管理は海外でも対応する(一部非対応国あり)

    HP EliteBook X G1i 14 AIはモデルにもよるがHP eSIM ConnectとHP Protect and Trace with Wolf Connectにも対応するAI PCだ。日本中ほとんどの場所でデータ通信が行え、PC管理は海外でも対応する(一部非対応国あり)

これからのコールセンターを考えると、AIによる効率化に加えて顧客情報を守るのは不可欠だ。日本HPの展示は今後のコールセンターに必要な機器を見せていた。