佐賀大学と宇宙航空研究開発機構(JAXA)、佐賀大発ベンチャーのダイヤモンドセミコンダクターの3者は12月8日、究極のパワー半導体と言われるダイヤモンドを用いた半導体(ダイヤモンド半導体)にて、電子線描画(EB)技術による157nmのT型ゲート電極を形成した高周波デバイスを作成し、120GHzのマイクロ波帯(3~30GHz)とミリ波(30~300GHz)の増幅を確認したほか、オフ耐圧4266Vを達成したことを発表した。
文部科学省「内閣府宇宙開発利用加速化戦略プログラム(スターダストプログラム)」の委託事業および情報通信研究機構(NICT)「革新的情報通信技術(Beyond 5G(6G))基金事業の要素技術・シーズ創出型プログラム」に基づいて進められてきた研究による成果で、同大 理工学部の嘉数誠 教授(ダイヤモンド半導体研究センター センター長)、同 サハ・ニロイ・チャンドラ 助教、同大 シンクロトロン光応用研究センターの江口正徳 准教授、JAXA宇宙科学研究所の冨木淳史氏らによるもの。詳細は、学術誌「Journal of Vacuum Science and Technology(JVST)」と学術誌「Japanese Journal of Applied Physics」に掲載された。
同プログラムでは、2023年度より5か年で、人工衛星に搭載される送信用マイクロ波電力増幅デバイスの実用化を目指した研究開発が進められてきており、今回の研究成果であるダイヤモンド半導体技術は、地上におけるBeyond 5G・6G基地局からの送信出力を向上させるためのブロードバンド化に向けたデュアルユース技術としても期待されているとする。
ゲート絶縁膜原料の高純度化で耐電圧向上を実現
今回の研究では、ゲート絶縁膜の原料のトリメチルアルミニウムを高純度化したことで、ゲート絶縁膜の耐電圧の向上を実現。その結果、オフ時の耐電圧がこれまで研究グループが報告していた値を超える4266Vへと向上させることに成功したという。
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今回、ゲート酸化膜の原料であるトリメチルアルミニウムを高純度化することで、ゲート絶縁膜の耐電圧を向上させることに成功。オフ時の耐電圧を世界最高値を更新する4266Vに向上させることに成功した(ダイヤモンド自体はCVDで成膜したものを活用) (資料提供:佐賀大学、以下すべて同様)
また、電子ビーム(EB)を活用することで幅157nmのゲート電極を作製することに成功。電力利得を測定したところ、遮断周波数が120GHzとなり、マイクロ波帯・ミリ波帯域での増幅動作が可能なことが示されたともする。
後工程技術も開発したことで社会実装に前進
さらに、今回の研究では独自のワイヤーボンディングやパッケージングの後工程技術も並行して開発。これにより、実際のアプリケーションへの搭載が容易になり、社会実装化が近づいたと研究グループでは説明している。
なお、今回開発されたT型ゲート構造のダイヤモンド半導体については、2026年1月よりダイヤモンドセミコンダクターよりサンプルの製造・販売が行われる予定となっているのと同時に、研究グループとしては、ダイヤモンド半導体デバイスのボンディング、パッケージングなどの後工程技術の開発を進め、宇宙環境や地上でのマイクロ波帯・ミリ波帯無線機器での動作実証に向けた研究開発を行い、ダイヤモンド半導体のBeyond5G・6G、衛星通信の応用に向けた社会実装化を進めていくとしている。


