メディア効果測定プラットフォームのDoubleVerifyと広告会社大手の博報堂は、11月5日、都内で「ブランドを守り、成果を伸ばす。攻めと守りのデジタル広告戦略」をテーマにした共催フォーラムを開催した。

同フォーラムでは、デジタル広告市場の急速な拡大に伴い関心が集まる「ブランドセーフティ」の現状や、ブランドの価値観に適合したコンテンツの隣に広告が表示されるようにする「ブランドスータビリティ(適合性)」という考え方について解説。同時に、ブランド価値の保護とビジネス成果を両立するソリューション「AaaS with DV」の活用事例が紹介された。ここでは、そのフォーラムの様子を紹介する。

  • フォーラム会場の様子

    会場の様子

ブランドセーフティ/ブランドスータビリティにおける最前線の取り組み

フォーラムでは、まずDoubleVerifyのAPAC(アジア太平洋地域)マネージングディレクターを務めるコンラッド・タラリティ氏が登壇。同社のミッションが「デジタル広告の効率や透明性を高め、その効果を最大化すること」にあると語り、「日本の広告市場に貢献するため昨年7月に博報堂と提携した。その協力体制の結果を本日皆さんと共有できることを心から感謝する」と挨拶を行なった。

  • DoubleVerifyのAPACマネージングディレクター、コンラッド・タラリティ氏

    DoubleVerifyのAPACマネージングディレクターを務めるコンラッド・タラリティ氏

続いてオープニングセッションに移り、パネリストとしてデジタル広告品質認証機構(JICDAQ)事務局長の小出誠氏、博報堂 AaaSビジネス戦略局 局長の飯塚隆博氏が登壇。DoubleVerify Japanの粟津原玲氏がモデレーターを務め、「ブランドセーフティ/ブランドスータビリティにおける最前線の取り組みとソリューションの進化」をテーマにディスカッションが行われた。

  • デジタル広告品質認証機構(JICDAQ)事務局長の小出誠氏

    デジタル広告品質認証機構(JICDAQ)事務局長の小出誠氏

  • JICDAQの役割について紹介

    JICDAQの役割について紹介

現在、デジタル広告の課題は、詐欺広告やなりすまし広告などの“広告内容”の問題で生活者が被害を受ける「BtoC的課題」と、不正クリックや不適切サイトへの掲載などの“広告掲載”の問題で広告主が被害を受ける「BtoB的課題」のふたつに大きく分けることができる。

  • デジタル広告課題のふたつの領域

    デジタル広告課題のふたつの領域

このうち前者については、広告プラットフォームによる事前審査や事後削除、各種法令に基づいた対応などが行われている。一方、後者も無視できない問題になっており、その改善のため2021年4月にデジタル広告の掲載品質の認証を行う機構としてJICDAQが設立された。また2025年6月には、総務省から「デジタル広告の適正かつ効果的な配信に向けた広告主等向けガイダンス」が公表され、広告主や広告会社が考慮すべきリスクや課題、望ましい取り組みなどが示された。

具体的なリスクとしては、広告が人の目に触れることなく、ボットなどの自動化プログラムによって閲覧やクリックが水増しされる「アドフラウド」や、広告が偽情報サイトや違法アップロードサイトなどの不適切なサイトに表示される「ブランドセーフティ」などが挙げられる。それによって広告主が意図せず不健全なエコシステムに加担すると、デジタル社会全体に悪影響を与えることになってしまう。

そのため総務省のガイダンスでは、経営層がこうしたリスクを理解し、体制構築や配信目的の確認、アニュアルレポートでの情報開示などを行うことが重要とされている。

  • 広告主が考慮すべきリスク・課題

    広告主が考慮すべきリスク・課題

  • 博報堂 AaaSビジネス戦略局 局長の飯塚隆博氏

    博報堂 AaaSビジネス戦略局 局長の飯塚隆博氏

また広告主側の具体的な取り組みとしては、契約段階でデジタル広告取扱事業者に対して効果的な配信の選択やリスク対処のための取り組みなどを要件に含めることや、JICDAQ認証事業者と取引を行うこと、アドベリフィケーションツールの利用、広告プラットフォームが提供する諸機能の利用、配信先の取捨選択などを実施することが望ましいとされている。

しかし、このようなメディア品質の向上と広告のビジネス成果は両立が難しい課題で、日本のマーケターの82%がメディア品質を重視する一方で、実際に対策を講じているのは66%にとどまり、その多くも部分的な対策に終わっている。

  • メディア品質の重要性は広く認識されているが、実際に対策を講じているマーケターはまだまだ少ない

    メディア品質の重要性は広く認識されているが、実際に対策を講じているマーケターはまだまだ少ない

ディスカッションでは、その現状を打破するには広告主の課題への意識を高めることや、アドベリフィケーションのための費用負担に対する認識を変えていく必要があること、短期的な指標でなく長期的な視野で広告効果を捉える必要があることなどが指摘された。

こうした背景を踏まえ、博報堂とDoubleVerifyは2024年9月にメディア品質とパフォーマンスの両立を目指す新ソリューション「AaaS with DV」の提供を開始した。

  • 博報堂とDoubleVerifyによる「AaaS with DV」。第一弾としてYouTube広告から提供されている

    博報堂とDoubleVerifyによる「AaaS with DV」。第一弾としてYouTube広告から提供されている

そのベースとなったAaaS(Advertising as a Service)は、博報堂が2020年に打ち出した広告ビジネスの次世代型モデルで、広告メディアのDX化を推進すべく多くの広告主に導入されている。「枠から効果へ」、「TV×Digitalのメディア横断」、「生活者データ×AIで事業成果最大化」、「常時接続コンサルティング」という4つのコンセプトのもと、さまざまなソリューションが展開されている。

「AaaS with DV」は、喫緊の課題であるブランドセーフティ領域でのアライアンスとなり、博報堂が有するAI技術やアルゴリズムによる「効率の担保」と、DoubleVerifyが提供するデジタルメディア品質の測定技術とAIを駆使した「品質の担保」の組み合わせで効率化と高品質化を両立させているのがポイント。すでに飲料、家電、金融、保険、流通、情報・通信、自動車、エンタメなど多様な業種の30社を超える広告主に利用されているという。

同サービスは、(リスクのある広告出稿を事前に回避する)プレビッドの単体利用が可能で、導入のハードルが低い。その種類もニーズに合わせて複数用意されており、DSPによる運用経験が豊富でリードタイムが短いことなどが特徴だ。さらにプレビッド利用のために別途予算を確保しなくても配信予算の中で対応できることもメリットとなっている。

現時点では動画配信サービスの広告のみに対応しているが、今後はディスプレイ広告やSNS広告の領域に拡張を計画しているとのことだ。

  • DoubleVerify Japanの粟津原玲氏

    オープニングセッションでモデレーターを務めたDoubleVerify Japanの粟津原玲氏

「AaaS with DV」の導入事例も紹介

フォーラムでは、「AaaS with DV」の導入事例として、サントリーホールディングスの取り組みと、シャークニンジャ合同会社の活用法も紹介された。

サントリーホールディングスの事例

そのうち、サントリーの事例は「量と質の最大化に向けたマーケティングROI改善の取り組み」と題し、同社の宣伝活動の考え方やメディア戦略、「AaaS with DV」を導入した経緯、実際の取り組み内容やその効果などが語られた。

それによると、同社にはYouTube広告のリーチの量だけでなく質を向上するにはどうすればいいのか、年末などの単価が高騰しやすい時期に単価を抑えて量を担保するにはどうすればいいのかという課題があり、その解決のために「AaaS with DV」の導入を検討したとのこと。

そこで、2024年12月にAI最適機能で配信単価を抑制する検証を行い、2025年3月にプレビッド単体で態度変容の検証を実施。2025年7月にその両方を掛け合わせた検証を行い、それぞれの効果を見定めた。

  • サントリーの事例紹介の様子1

    AI最適機能/プレビッド単体/AI最適×プレビッド掛け合わせの3回の検証を実施

結果、AI最適機能のみの場合は5案件中4案件について単価抑制を実現でき、残り1案件も想定内。またプレビッド単体での検証では広告認知度が大きく向上した。さらにAI最適機能とプレビッドの掛け合わせでも通常配信に比べて非常に良好な結果で、ROI(投資対効果)改善を実感できたという。

サントリーでは、複数回の検証を経てこれらの結果が再現性の高いものだと結論し、今後さらなる検証を重ねたあとで「AaaS with DV」の本格導入を進めていきたいとのことだ。

シャークニンジャの事例

続くシャークニンジャの事例では、「KPI達成に向けたAaaS with DVの活用と売り上げ貢献へのメソッド」と題し、同社のデジタル広告に対する課題や「AaaS with DV」の活用法などが語られた。

同社の場合、「ブランドや製品を知ってもらい(アッパー)」、「その製品をより深く理解していただき(ミドル)」、「購入を検討していただく(ローワー)」という具合にフルファネルのデジタル広告を実施している。なかでもYouTubeは製品の特徴や製品PRの場として不可欠な媒体。しかし媒体単位で最適化していく中で、その効果も頭打ちになってしまっていたとのこと。

一方、企業としてCPM(インプレッション単価)の抑制は欠かせない要素。しかし、CPM抑制によって配信面が悪化するのではないかという懸念も存在した。そこで「AaaS with DV」なら、ブランドセーフティやブランドスータビリティに反する動画をブロックする機能を活用することでそれが解決できるのではないか、またプレビッドを使って配信面での品質を保ちながらクリックやコンバージョンの改善が実現できるのではないかと、導入を検討したそうだ。

実際に導入して、CPMはYouTubeのみで-49%、CPCはYouTubeのクリックのみで-16%、CPAはオンライン・オフラインの両方で-47%という結果に。掲載品質を高めてもコストが上がることなく、むしろ大きく下げることができた。

  • シャークニンジャの事例紹介の様子(イベントオフィシャル素材より)

    シャークニンジャの事例における成果(イベントオフィシャル素材より)

導入前は、「GoogleやYahoo、Metaなどのプラットフォーマー側でブランドセーフティはある程度担保されているため、それで十分なのでは?」、「AaaS with DVを間に入れるわけだから安くなるはずがないのでは?」と半信半疑だったが、導入して1~2カ月くらいですぐに結果が出始め、社内でも驚いているそうだ。また導入前後の比較だけでなく前年同期比でもしっかりコストが下がっており、その効果を日々実感しているとのこと。

今後の動向について、同社の堀端勲氏は「(フロアケアのブランドであるSharkにとって)年末年始の大掃除、春の新生活に向けてお金をかける時期なので、少しでもCPMを下げられれば大変ありがたい。小型キッチン家電のNINJAの方は、現在はミキサーしか展開していないが、近々ラインナップの拡大を含めて新製品がどんどん出てくる予定。AaaS with DVは本当は独り占めしたいようなサービスだが、YouTubeに限らずいろいろ展開していければと思う。スモールスタートができるサービスでもあるので、皆様も活用していただけるといいのでは」と結んだ。

フォーラムでは、このあと粟津原氏により各セッションの振り返りが行われ、博報堂 常務執行役員の石川直樹氏によるクロージングスピーチで幕を閉じた。

  • 博報堂 常務執行役員の石川直樹氏

    クロージングスピーチを行った博報堂 常務執行役員の石川直樹氏