青山学院大学(青学大)は12月2日、名前の経時的変化を実証的に検討している世界の先行研究を概観し、日本では広義の意味で「キラキラネーム」に含まれるような個性的な名前の増加が、日本だけでなく、ドイツ・英国・フランス・米国・中国・インドネシアの3地域7か国にも共通する世界的な傾向であることが確認されたと発表した。
同成果は、青学大 教育人間科学部 心理学科の荻原祐二准教授によるもの。詳細は、「Humanities and Social Sciences Communications」に掲載された。
個性重視の文化変容が世界的に進んでいる?
これまでいくつかの国において、一般的でない名前が増加していることが示されてきた。これらの先行研究における「一般的でない名前」の定義は、頻度上位10位や上位50位などの一般的な名前の割合を用いたものが多いというが、地域内で重複がない名前や、特定の割合以下の名前といった、低頻度の珍しい名前を指標として用いている研究も存在していた。
ただしこれらの知見は国ごとに個別に報告されていたため、一般的でない名前の増加という現象が、世界的な共通の傾向なのか、一部の限られた国でのみ見られるのかが明確ではなかったとのこと。さらにこれらの報告は、心理学・社会学・言語学・人口学・地域研究など、異なる学術領域で個別に行われることが多く、その結果、包括的・俯瞰的な理解が十分ではなかったとする。
そこで荻原准教授は今回、一般的でない名前の頻度の経時的変化を実証的に検討した研究を体系的に概観し、この増加が世界的に共通した現象なのかを検証。これにより、個別の学術領域を超えた学際的・分野横断的な理解を試みるとともに、その際に各研究の対象期間や使用指標、サンプルの特徴などについても整理したという。
今回の研究では、ドイツ、英国、フランス、米国、日本、中国、インドネシアの3地域7か国を対象として検証を実施。その結果、一般的でない名前は、検討されたすべての国で一貫して増加していることが示されたとした。つまり、この現象は世界的に共通して見られるものであり、一部の限られた国でのみ見られるものではないことが明らかにされた。
さらに、この傾向はヨーロッパ、アメリカ、アジアという多様な文化圏で共通して見られたとのこと。したがって、一般的でない名前の増加は、より世界的な傾向であるといえるとする。なお研究チームによれば、こうした変化は個性や他者との違いをより強調する方向へ、社会・文化が変容していることを示すといい、名前や名づけの変化だけでなく、社会・文化の理解にも貢献する知見とした。
また、日本では1979年以降、一般的でない名前が増加していることが示されている一方、アメリカでは1880年以降、イギリスでは1838年以降という具合で、より長期間にわたって一般的でない名前が増加していることが示されているとした。
ただし今回の研究で対象とされたのは、あくまで頻度に基づく一般的でない名前という広義の意味合いのキラキラネームである。キラキラネームは、広義では「頻度が低い名前」とされる一方、狭義では「漢字が用いられている場合に読むことが難しく、伝統から逸脱した、頻度が低い名前で、肯定的または中立的な文脈で用いられる名前」とされている。しかし、使用者や文脈によって定義は異なっており、キラキラネームに関して主張や議論を行う際には、その定義を、少なくともキラキラネームが何を意味しているのかを簡潔にでも説明をしてから、議論を進めるべきというほど、使用者や状況次第によって曖昧である。
そのため、キラキラネームが世界的に増えているかどうかは、それをどのように定義するかに依存するといい、今回のようにキラキラネームを広義の「頻度が低い名前」として用いるのであれば、キラキラネームは世界的に増加しているともいえる。しかし、「伝統から逸脱した名前」や「読むことが難しい名前」といった要素を含めた狭義の定義として用いるのであれば、キラキラネームが世界的に増加しているかどうかは、現時点ではわかっていないとことを研究チームは強調する。
なお今回の研究の限界点は大きく2つあるといい、その1つ目は、今回扱った研究の中に、サンプルに偏りが見られたり、対象期間が十分に長くなかったりするなど、検証が十分とはいえない国もあった点だ。そのため、今後はより詳細な検討を追加していくことが望まれるとした。また2つ目には、今回の研究で検討された7つの国だけでは、十分な数とはいえない点を挙げ、今後は、他の国でも同様の変化が見られるのかを検討する必要があるとした上で、特にヨーロッパ、アメリカ、アジア以外の異なる文化圏での検証が望まれるとしている。
