花王 バイオ・マテリアルサイエンス研究所は12月1日、古い塗装や汚れをより簡便に除去するため、自発的に剥がれる仕組みを備えた“剥離除去技術”を開発したことを発表した。
剥離除去性能の検証映像も公開
ビルなどの建物の外装を補修したり、その塗装を塗り替えたりする際には、まず対象となる表面から劣化したものを除去する作業が必要となる。これまで建築現場では、有機溶剤を使って溶かす方法や機械的に削り取る手法が用いられていたというが、作業負荷が高い上、有機溶剤や作業により発生する粉塵が、作業者や環境への負担となっていたとのこと。そこで花王は、同社が強みとする精密界面制御技術を活かし、より簡便かつ低リスクで作業できる新発想の除去方法開発に取り組んだとする。
今回の開発で花王が着目したのは、粉塵などが空気中に舞わないように膜に閉じ込めて剥がし取る、剥離除去技術。さらに今回は、広範囲に及んで多くの労力を必要とする従来方式とは異なり、少ない力で簡単にはがせるよう、塗膜が自発的に剥がれ落ちる仕組みを有する新たな技術の確立を目指したという。
塗膜の自己剥離において重要となるのは、“内部応力”だ。これは乾燥などによって塗膜が縮んだ際に生じる力で、塗膜と接着面を引き離す方向に働くため、自己剥離を誘発するとのこと。花王は今回、この内部応力の発生メカニズムを詳細に調べることで、接着面から自己剥離するための内部応力を意図的に発生させる素材の組み合わせを選定したとする。
ただし同社によれば、内部応力をただ高くするだけでは、塗膜がその力に耐えられず割れてしまい、求める自己剥離性能を得ることはできない。そのため、さらに特性の異なる複数の樹脂を組み合わせたうえで、自己剥離性と塗膜強度が両立する配合を繰り返し検討することで、独自の剥離除去技術を開発したとしている。
また今回の開発技術を用いて、花王はさまざまな素材に付着した汚れに対する剥離除去性能の評価も実施。その結果、鋼板のサビやステンレス板の水性ペイントを除去可能であることを確認するとともに、コンクリート表面では表層を数十~数百μmの深さで除去できることが判明したという。なお同社は、いずれの評価においても塗膜が対象物を閉じ込めて自己剥離したことも明らかにした。
剥離除去技術の性能検証映像
サビに対する剥離除去技術の評価(出所:KaoJapan YouTubeチャンネル)
水性ペイントに対する剥離除去技術の評価(出所:KaoJapan YouTubeチャンネル)
コンクリート表層に対する剥離除去技術の評価(出所:KaoJapan YouTubeチャンネル)
花王は、開発した剥離除去技術がさまざまな素材に付着した汚れを除去できるだけでなく、塗膜が自ら剥がれる仕組みにより、従来の除去方法と比べて作業負荷を大幅に軽減できるとし、さらに有機溶剤を使用せず粉塵も発生しないため、作業者と環境への配慮を両立した設計になっているとする。また今後については、ビル外装や船舶塗装の除去などでの実用化を目指すとともに、他分野への応用展開についても検討を進めるとしている。

