キヤノンITソリューションズ(キヤノンITS)は11月27日、オンラインで事業説明会を開催した。説明会には、同社 代表取締役社長の金澤明氏らが出席し、説明を行った。

VISION2025と重点事業領域の進捗

キヤノンマーケティングジャパン(キヤノンMJ)グループでは、2022年度~2025年度を対象とした中期経営計画において、3つの基本方針の核となるITソリューション事業の単年売上3000億円を目指す方針としていたが、これを1年前倒しの2024年度に売上高3146億円で達成した。

  • キヤノンMJグループにおけるITソリューション事業の業績推移

    キヤノンMJグループにおけるITソリューション事業の業績推移

金澤氏は「2024年はグループ全体利益の約3割となる売上高1395億円を当社が占め、グループ内での存在感を発揮している。2025年はエンベデッドシステム事業、ITインフラ構築が好調を維持し、金融業向けの超大型案件を完遂している」と説明した。

  • キヤノンITS 代表取締役社長の金澤明氏

    キヤノンITS 代表取締役社長の金澤明氏

同社は長期ビジョン「VISION2025」において、先進ICTと元気な社員で未来を拓く共想共創カンパニー」を掲げ、「サービス提供モデル」「システムインテグレーションモデル」「ビジネス共創モデル」の3つの事業モデルを展開。その中で「スマートSCM」「エンジニアリングDX」「車載(CASE)」「金融CX」「アジャイル開発プラットフォーム」「クラウドセキュリティ」「データセンター」の7つを重点事業領域として定めている。

  • 長期ビジョン「VISION2025」の概要

    長期ビジョン「VISION2025」の概要

金澤氏は「2025年の売上計画では25%以上を重点領域が担っており、2026年以降も各領域で受注活動を強化し、重点事業領域の売上比率を拡大していく」と話す。VISION2025における成長として、2020年~2024年の5年間で売上高が520億円、従業員数が480人それぞれ増加したという。

  • VISION2025における成長

    VISION2025における成長

サービス提供モデルでは、各業種・業務に対して多様なサービス提供方式によるソリューションを展開し、市場を拡大。2025年の取り組みは西東京データセンターにおいて、液冷方式サーバ冷却サービスのエリアを増床したほか、AIを活用したサービスの強化を実施した。

システムインテグレーションモデルに関しては、企画・設計構築・運用・保守にいたるITライフサイクルをフルサポートするだけでなく、顧客のITプロセスにおける上流システム構想やIT戦略立案に貢献。

2025年は大手総合リースやメガバンクなど超大型SI案件の獲得・完遂で組織体制と技術力が強化され、ITパートナーとしての存在感を拡大したほか、製品開発における上流工程やPoC(概念実証)からの参入や直接取引へのシフト、メガサプライヤーとの取引規模拡大に伴い、車載領域における売り上げが増加した。さらに、SCM業務ソリューション「Aemerial」、マイグレーションサービス「PREMIDIX」といった新しいソリューションで顧客の基幹業務やシステムの課題をサポートした。

  • システムインテグレーションモデル

    システムインテグレーションモデルでは超大型案件を完遂した

ビジネス共創モデルについては、DXビジョン立案に向けたコンサルティングを中心に実績を積み重ねるとともに、そのノウハウを活かしてオウンドメディアやホワイトペーパーなどで発信力を強化した。結果として累積案件数は2021年の18倍に拡大している。

一方、先進技術の取り組みでは、R&D(研究開発)のソフトウェア技術、映像解析技術、数理技術、言語処理技術といった研究領域のサービス適用を加速し、煙検出AIによる火災の早期発見支援、複雑な積載輸送計画・生産計画作成などのサービスにつなげている。また、生成AIビジネスの推進として開発プロセスへの適用・検討、新規ビジネスの創出、ガバナンス構築、環境整備、人材育成などの基盤整備を進めている。

ITプラットフォーム事業部門の統合とTCSとのシナジー

続いて、ITプラットフォーム事業部門の取り組みに関して、キヤノンITS 上席執行役員 ITプラットフォーム事業部門担当の山岸弘幸氏が紹介した。

  • キヤノンITS 上席執行役員 ITプラットフォーム事業部門担当の山岸弘幸氏

    キヤノンITS 上席執行役員 ITプラットフォーム事業部門担当の山岸弘幸氏

同事業はITインフラの企画、設計、構築から保守、運用、セキュリティまで包括的なソリューションを提供している。昨年10月にキヤノンMJの完全子会社であるTCSを消滅会社、キヤノンITSを存続会社とした吸収合併を発表しており、今年7月からITプラットフォーム事業部門に合流した。

山岸氏は「ITプラットフォーム事業部門は、ITサービス事業、ITインフラ事業、セキュリティ事業、TCS事業で構成し、直販機能と各事業部を支援するアカウント支援機能2つの機能を持つ」と説明する。

  • ITプラットフォーム事業部門の位置づけ

    ITプラットフォーム事業部門の位置づけ

ITサービス事業は世界基準の運営品質を有する西東京データセンターを中心にクラウドなどのITサービスを、ITインフラ事業は企画、設計、構築から運用、保守までライフサイクルに沿ったサービスを、セキュリティ事業は開発力、製品力、サポート力を活かし、エンドポイントからゲートウェイまで包括的なソリューションをそれぞれ提供している。

TCS統合によるシナジー創出と成長戦略について、山岸氏は「営業と技術者の相互活用に案件対応力が強化され、キヤノンMJグループのソリューション・商材を拡販し、MPS(Managed Platform Service)とキヤノンITSのインフラサービス『SOLTAGE』とのサービス連携により、想定以上にシナジーが発揮できている」と述べた。

  • TCS統合によるシナジーは想定以上に発揮できているという

    TCS統合によるシナジーは想定以上に発揮できているという

ITプラットフォーム事業部門が主力とするSOLTAGEは「クラウドインテグレーション」「ネットワーク」「システム運用・保守」「セキュリティ」「データセンター」の5つのサービスを展開。同事業部門では先述した7つの重点事業領域のうち、データセンターとクラウドセキュリティを重点事業として位置付けている。

そのうち、データセンターサービスの中核である西東京データセンターは、日本データセンター協会が定めるティア4レベルのファシリティ基準をクリアしており、沖縄データセンターを併用すればBCP(事業継続計画)対策が図れる。また、西東京データセンターは昨年末からDLC(直接液冷方式)に対応した高密度型サーバの実運用を開始。

  • SOLTAGEにおけるデータセンターサービスの概要

    SOLTAGEにおけるデータセンターサービスの概要

また、クラウドセキュリティについては、中小企業からエンタープライズまでの顧客基盤(キヤノンMJグループ)を持ち、「技術力」「開発力」「ライフサイクルサポート力」を強みとしている。ゼロトラストを中心にアセスメントから運用までクラウドセキュリティの全領域にラインアップを拡充している。

  • キヤノンITSにおけるクラウドセキュリティ事業の強み

    キヤノンITSにおけるクラウドセキュリティ事業の強み

アセスメントでは今年6月に提供を開始した「セキュリティ対策診断サービス」がNIST(米国国立標準技術研究所)の「Cybersecurity Framework 2.0」にもとづく診断・分析を行い、調査レポートでセキュリティ対策を可視化し、セキュリティ強化のロードマップを策定を支援。今後、経済産業省の「サプライチェーン強化のためのセキュリティ対策評価精度」への対応を予定している。

  • 「セキュリティ対策診断サービス」の概要

    「セキュリティ対策診断サービス」の概要

また、ソリューションとしては2023年から提供している自社開発のIDaaS(ID as a Service)「ID Entrance」を訴求。昨年末にはパスキー認証とIDプロビジョニング機能がオプションで追加されており、今後もさまざまな機能を順次リリースしていく。

クラウドセキュリティ市場の動向と課題

最後にキヤノンITS 執行役員 ITプラットフォーム事業部門 ITプラットフォーム営業統括本部長の西野勝規氏がクラウドセキュリティの戦略を解説した。

  • キヤノンITS 執行役員 ITプラットフォーム事業部門 ITプラットフォーム営業統括本部長の西野勝規氏

    キヤノンITS 執行役員 ITプラットフォーム事業部門 ITプラットフォーム営業統括本部長の西野勝規氏

キメラ総研によると、国内におけるセキュリティビジネス市場のCAGR(年平均成長率)は2023年度の6526億円から2029年度には9599億円の6.6%となり、ゼロトラストの進展に伴う「クラウド/Webアクセス」の市場成長率は高く、CAGRは13.1%となっている。

近年はサイバー攻撃の高度化・巧妙化により、規模、業種を問わず被害に遭っており、特にサプライチェーンの中堅・中小企業を狙った攻撃に注目が集まっている。西野氏は「こうした状況においてゼロトラストの取り組みは有効だが、導入に関する課題として最も大野は運用人員の不足だ」と指摘。

このような課題に対して、同社はクラウドセキュリティの強みである技術力と開発力、ライフサイクルサポート力で支援するという。

技術力ではサイバーセキュリティラボが国際共同研究や情報発信、産学連携活動、執筆活動、脆弱性情報の発見などに取り組んでいる。こうした取り組みをもとに、自社開発したメールセキュリティ製品「GUARDIANWALL」のキーワード検査、個人情報検査、全文検索などに応用し、情報漏えい防止やリスク検知、検索、分類など多層的な機能を提供している。

  • サイバーセキュリティラボでは共同研究、情報発信、産学連携などに取り組んでいる

    サイバーセキュリティラボでは共同研究、情報発信、産学連携などに取り組んでいる

サービス開発力は20年以上、セキュリティ事業で培ってきた開発力により3年間で20の新サービスをリリースし、ラインアップを増強。具体的にはペネトレーションテストサービス、ASM(Attack Surface Management)サービス、CNAPP(Cloud Native Application Protection Platform)サービス、ID Entranceなどがサイバーセキュリティラボの知見にもとづいたサービスとなっている。

  • サイバーセキュリティラボの知見をサービスに活かしている

    サイバーセキュリティラボの知見をサービスに活かしている

ライフサイクルサポート力は、データセンタービジネスで得たシステム運用のノウハウと、サービスラインアップでセキュリティライフサイクル全体を支えるという。

SOCサービスとAI活用による将来構想

今後、クラウドセキュリティの展望としてサービス戦略ではアセスメントやソリューションに加え、今後はSOC(Security Operation Center)サービスやAIの活用を見据えて運用領域に展開する。一方で、販売戦略はセキュリティラボの知見を活用したアセスメントサービスを通じて、セキュリティ対策状況を可視化し、最適な施策の選定を支援するとのことだ。

これにより、アセスメントから運用までを一貫して担う「トータルセキュリティパートナー」としての役割を果たす考えだ。その一環として、11月27日にSOLTAGEの新たなセキュリティ運用サービス「Cato SASEクラウド」を対象としたSOCサービスを2026年3月から提供開始すると発表している。

西野氏は「新サービスは当社の技術力と運用ノウハウを活かし、独自性のあるSOCを構築することでクラウド時代に求められるセキュリティ監視体制の強化を図る。将来的には、人とAIエージェントが協働する自律型SCOを視野に入れた先進的な取り組みだ。まずは、キヤノンMJが強みを持つ中堅企業を主なターゲットとし、クラウドセキュリティ領域に特化した監視サービスから展開する。この取り組みを通じて、お客さまのセキュリティ運用における課題解決を支援し、当社のセキュリティ事業のさらなる拡大を目指す」と述べていた。

さらにセキュリティ事業の将来構想として、AI時代における脅威を鑑みて「Security for AI」(AIの利用におけるセキュリティ対策)と、「AI for Security」(AIを活用した防御)の両面での展開を強化し、顧客のセキュリティと利便性を両立させて、事業継続性とブランド価値を顧客が高められるように支援していく考えを示していた。