NTT-MEは10月22日、新たにコンテナ型データセンター事業に参入すると発表した。ブランド名は「JPDC AI Container」で、第一弾として、北海道石狩市に約5万平方メートルの敷地を確保し、最大で14基のコンテナ型データセンターを建設する。早ければ最短で2027年4月に稼働を開始するという。

同社がデータセンター市場に参入する背景には、今後、見込まれるAIサーバの需要がある。では、NTT-MEは、データセンター市場に対し、どのような戦略を考えているのか、データセンタ事業推進部門 部門長 水津次朗氏に聞いた。

  • NTT-ME 通信キャリア&データセンタビジネス部 データセンタ事業推進部門 部門長 水津次朗(スイズ ジロウ)氏

    NTT-ME 通信キャリア&データセンタビジネス部 データセンタ事業推進部門 部門長 水津次朗(スイズ ジロウ)氏

なぜ、コンテナ型を選択したのか

――NTT-MEが、データセンタービジネスに参入した理由をお聞かせください。

水津氏:NTT東日本は現在、35カ所のデータセンターを運営していますが、データセンターに新たにお客様が入った際にラックを作るなど、お客様用の設備を整えること、その後の運用といったNTT東日本グループのデータセンターの構築、運用・保守の部分をNTT-MEが請け負っています。

そうしたときに必要になる設計や電力調達、ネットワーク、管理設計・構築、オペレーションには、いろいろなケーパビリティが必要で、NTTグループの一社が単独でできることではありません。例えば、設計・建設・保守であればNTTファシリティーズ、電力であればNTTアノードエナジー、オペレーションであればNTTビズリンクが強みを持っていますが、そういうグループ企業と連携する必要があります。こうした点をマネジメントしながら、一元的にワンストップでデータセンターソリューションを提供できるのがNTT-MEの強みであり、そういうノウハウをもともと有していた点がデータセンタービジネスに参入した理由となります。これまでの実績を生かして、新しいビジネスに入っていきたいと考えています。

  • NTTグループが手掛けるデータセンター事業(出典:NTT-ME)

    NTTグループが手掛けるデータセンター事業(出典:NTT-ME)

――データセンターはビル型ではなく、なぜコンテナ型を選択したのでしょうか?

水津氏:国内も国外もデータセンターを立てること、ハイパースケーラー向けに関してはNTTデータグループが行っています。これから新しく建てるデータセンターは、基本的にはNTTデータグループが担当します。

弊社がコンテナ型に踏み込もうと思ったのは、AIやGPU向けの高発熱対応のサーバ向けのデータセンターが、現在、国内で枯渇していると言われているからです。今からビル型のデータセンターを建てようとすると、5~6年はかかります。足元では、データセンターをすぐに使いたいというニーズがあり、枯渇している状況にあるので、コンテナ型でビジネスをすれば商機があるのではないかと考えました。

  • NTT-MEが設置するコンテナデータセンターのイメージ(出典:NTT-ME)

    NTT-MEが設置するコンテナデータセンターのイメージ(出典:NTT-ME)

お客様は「コンテナが来年欲しい」「再来年には欲しい」といわれます。そういうスピード感です。お客様はコンテナ型に絞っているわけではないですが、こうしたニーズに応えられるのは、コンテナ型になると思います。

  • 高まるAIニーズ(出典:NTT-ME)

    高まるAIニーズ(出典:NTT-ME)

設置するコンテナの概要

――利用するコンテナは自社開発でしょうか?

水津氏:コンテナ自身は外部からの調達になります。ただ、お客様が最先端のGPUサーバが必要であれば、今までのコンテナの規格では高さが足りないケースもあります。そのため、要件ごとにカスタマイズしないといけないため、特定のコンテナではなく、マルチベンダーでお客様のニーズに対応していきたいと思っています。

石狩の5万平方メートルの土地にデータセンターを構築しますが、そこには、最大で14機のコンテナを置けます。それらは、同じ要件ではなくてもOKで、いろいろなベンダーさんが協力して建てたデータセンターが立ち並ぶこともあると思っています。

――コンテナは、ある程度パターンを決めて、それをカスマイズしていくのでしょうか? それとも1つ1つオーダーメイドでしょうか?

水津氏:ある程度の型を決めて提案できるのが理想ですが、オーダーメイドにならざるを得ないところもあると思います。基本的に、ラック単位ではなく、コンテナ単位でのオーダーになり、1機1ユーザーという対応になります。

コンテナ型のデータセンターを作ろうと思うと、土地の選定や電力調達が必要で、設計、ネットワーク施工、実際の運用を一気通貫でやっていく必要があるので、いろいろなベンダーさんと組みたいと思っています。

データセンターを建築するには、土地を選んで、杭打ちが必要かどうかを確認したり、電力で特別高圧対応が必要になったり、それを電力会社さんと調整したり、さまざまな作業を行います。コンテナ型データセンターはまだ新しい市場ですが、今回、石狩で苦労しながらデータセンターの運用ノウハウをためていますので、これからコンテナデータセンターを導入したいお客様がいらっしゃったときに、裏でわれわれが下支えするようなソリューションも、来年度から提供していきたいと考えています。

――石狩は自社の土地にコンテナを置く形ですが、お客さんの土地にコンテナを置くことも行っていきますか?

水津氏:それはあると思います。例えば、ある自治体が自分たちの土地に置いてほしいというニーズがあれば、提供していきたいです。コンテナは1個単位で置けるので、狭い駐車スペースや使わない遊休地に置く可能性もあるでしょう。また、コンテナだけを提供して、運用はお客様が行うこともあると思います。われわれは、このビジネスはある意味SIだと思っていますので、一個一個ソリューションとして提供していきたいです。

――記者会見では、顧客ターゲットとして、GPUクラウドやSIer、製造業、大学を挙げていましたが、NTTデータと市場が被らないようにすると、この辺りがターゲットになるのですか?

水津氏:基本はそうなります。ハイパースケーラーの方が使いたい要件を満たそうとすると、受電容量が数百メガワットになることもありますが、われわれのコンテナでは、1機あたり2メガワットで、石狩データセンター全体でも20~30メガワットになります。また、ハイパースケーラーさんのデータセンターのニーズは、東京と大阪にあると思っています。そのため、コンテナはハイパースケーラーさんの利用ニーズにミートできないと思っています。

なぜ、石狩を設置場所に選んだのか

――最初のデータセンターの設置場所として石狩を選んだ理由は何でしょうか?

水津氏:日本のデータセンターは東京や大阪、印西市(千葉県)に集中しています。ただ、これらの地域には、データセンター向けの電力や土地が少ないという状況があります。総務省や経済省が「ワットビット連携官民懇談会」を開いて、データセンターを分散させないといけないという話をしています。これは、電力の問題(ワット)を情報通信(ビット)を分散させて解決していこうという構想で、東京や大阪から福岡、石狩に分散させようとしており、石狩が中核拠点として考えられています。また、BCPの観点で分散させたいと考える事業者も多い中で、北海道バレー構想により、産官学が一体となって北海道にデータセンターをはじめとする産業誘致を推進している点も背景にあります。さらに、秋田と石狩をつなぐ海底ケーブルも敷設されるので、石狩はそういった意味でも非常にホットな場所だと思っています。

また、石狩には、さくらインターネットさんやKCCSさんのデータセンターがあり、東急不動産も巨大なデータセンターを建てようと動いています。そういうデータセンター事業者さんとの協業もでき、そこに需要家のみなさんも集まってくるという点もあります。

  • 石狩エリアへの期待(出典:NTT-ME)

    石狩エリアへの期待(出典:NTT-ME)

――最近、データセンターは再エネ由来の電力を求める傾向にありますが、そうした電力の調達の見通しはありますか?

水津氏:最初は証書での対応になると思いますが、もちろん再エネをデータセンターの運用の中に組み込んでいきたいです。すべてを再エネにできるかは、これから検討しないといけないと思いますが、視野に入れています。こうした電力の調達もサポートしますし、補助金の申請も肩代わりするなど、お客様にノウハウを提供していこうとしています。

IOWNをどう活用していくのか

――首都圏からデータセンターが離れると、技術者のアクセスに時間がかかりますが、そのあたりの課題はどう解決していきますか?

水津氏:この課題解決にはNTTのIOWNが関わってきますが、われわれは現在、35のデータセンターの中でも、遠隔監視やちょっとしたスイッチを押す作業であれば、ロボットにやってもらおうとしています。技術者が行かなくてもトラブルがあったときに、軽微な対応であればできるような仕組みはできると思います。

また、われわれは各地域に根差した技術者がいますので、北海道であれば、札幌から30分で駆けつけられる距離にあります。そうした面は、ある意味、全国に拠点を持つ企業だから対応できる信頼性としてお届けできると思います。

――今後IOWNは、NTTグループがプッシュしていく技術だと思いますが、データセンタービジネスにおいて、どのようにIOWNを活用していきますか?

水津氏:東京など都市とのネットワークをIOWNで結んで、東京と石狩のデータセンターを1つのデータセンターのようにオペレーションするといったことに取り組みたいと思っています。

東急不動産さんの再エネデータセンターが石狩にできるので、そこと都心のデータセンターのAPNをIOWNで結んでオペレーションすることもやっていきたいと思っています。石狩はデータセンター集積地で東京との距離もあるので、ワットビット連携をAPN接続で表現しやすいと思います。

そのほか、関西万博のNTTパビリオンでは、IOWNと光電融合のデバイスを利用し、電力消費8分の1のコンピュータを実現しました。5年後、10年後にIOWNと光電融デバイスが進展して、データセンターに導入できるようになれば、当然、導入していくことを視野に入れていきます。ビル型のデータセンターは、建てるのに6年かかりますので、6年前の技術が陳腐化している可能性もあります。コンテナであれば1年という単位で立てられるので、そういう新しい技術の導入も容易なので、コンテナ型にはビル型にはない魅力があると思います。

――何年後に、コンテナを何機設置したいといった目標はありますか?

水津氏:コンテナは使いたいお客様がいて、初めて立てるものなので、いつまでに何機設置するかは、ニーズ次第だと思っています。われわれが向き合わなければいけないのは、やはり石狩です。北海道以外の他のエリアに展開も考えていますが、石狩だけも約140~150億円ぐらいのビジネス(1機あたり10億円程度の収入)にはしていかないといけないと考えています。