11月12日から14日まで幕張メッセにて開催された「高機能素材Week 2025」内の「第5回 サステナブル マテリアル展」にて、日立ハイテクは、普及が期待される再生プラスチックの“売り手”と“買い手”のマッチングをサポートする「再生材マーケットプレイス」を提案するブースを展開した。
持続可能な社会の実現には欠かせない再生材の普及を促進する同サービスは、着々と社会実装に向けた動きが進行中。しかし展示会の中で市場の声に触れると、期待を寄せられると同時に課題も見えてきたという。
着実な進化が進む再生材マーケットプレイス
日立ハイテクが日立製作所と共に開発を進める再生材マーケットプレイスは、独自技術を活用したマテリアルズ・インフォマティクス(MI)や生成AIなどのデジタル技術と、日立ハイテクが有するマテリアル・バリューチェーン全体における知見や解析装置事業における品質解析技術を組み合わせて開発された、再生材向けの購買プラットフォーム。現在では、環境課題への対応が本格的に求められる中で特に注目が集まる“再生プラスチック”を対象として、その売り手と買い手のマッチングを効率化し、さらに取引プロセスまでもオンライン上で実現するサービスだという。
再生材マーケットプレイスの社会実装に向けた準備として、日立ハイテクはこれまで社外とも連携しさまざまなマイルストーンを発表済み。2024年6月には積水化学工業と共同で、同マーケットプレイスのプロトタイプ版を用いた実証実験を行い、その有用性を確認した。また2025年10月には、再生材マーケットプレイスの事業化に不可欠となる“金融機能”の提供を見据え、三菱UFJ銀行との間で共同検討を開始する基本合意書の締結を発表。さらに11月、環境リサイクルを事業の柱とするリサイクラーのトーエイとの連携により、AI技術を活用した再生プラスチック配合支援の実証も開始。あらゆるステークホルダーが関わる同マーケットプレイスの実現に向けて、社外とも連携しながら機能強化を進めているとする。
特にトーエイとの連携では、再生プラスチックの品質を定量評価するのに加え、AIやMIを活用することで、買い手が求める物性・価格などの条件を満たす最適な配合レシピをサービス上で提案することが目指されている。再生プラスチックを原料として実製品の生産に繋げるためには、複数材料を組み合わせることが不可欠。そのため配合レシピを自動提案する新機能の実装により、属人化が課題とされ作業時間も長期化していた再生材の利用検討を効率化し、再生プラスチックの普及を後押しするのである。
来場者から寄せられた“不安要素”とは?
今回の高機能素材Weekにて日立ハイテクが展開したブース内にも、さまざまな再生プラスチック原料が展示されていた。さまざまな企業での開発競争によって数多くの種類が生まれ続けている再生プラスチック。その利用が広がる仕組みが整えば、素材の買い手となる利用者にとっては多くの利点があると考えられるが、同社のブース担当者によると、来場者の中でも再生プラスチックの売り手となる素材メーカーからは、ある懸念が寄せられたという。
それは、素材の“情報”に関する不安だ。再生材マーケットプレイスでは、その性能を最大限に発揮し、より正確な配合レシピを算出することが求められるため、素材メーカーは詳細な物性データなども製品と併せて提供する必要がある。来場者の中には、そうした情報の公開を“リスク”だと感じ、いわゆる企業秘密を模倣されかねない状況への不安感をにじませる人も、思いのほか少なくなかったのだという。
日立ハイテクの再生材マーケットプレイスでは、再生プラスチックの細かい情報が得られることが大きな強みであり、買い手への詳細データの共有は避けられない。ただしこれはいわば発展途上である再生プラスチック市場だからこそ懸念されるリスクで、今後開発競争がよりオープンな形で進み、あるいは技術が進歩して一朝一夕には模倣できないレベルの素材が続々と登場すれば、そうした不安感は拭われるのかもしれない。
そして再生材マーケットプレイスを提供する日立ハイテクとして目指すべき先は、「再生プラスチックに関わるすべての人が利用するプラットフォームとなること」。買い手を満足させる利便性を実現することで、マーケットプレイス経由での取引数を増大させ、あらゆるプレイヤーにとって不可欠なサービスにしていくことが、社会実装への最短経路だといえる。
担当者によれば、今後は現在も取り組んでいる実証を進めるとともに、さらなる機能性向上を続けるとのこと。また将来的には、再生材として取り扱う範囲をプラスチック以外にも広げ、サービスの拡大を目指していくとしている。



