京セラは11月11日、2026年1月6日から9日にかけて米国ネバダ州ラスベガスで開催される世界最大級のテクノロジー見本市「CES 2026」に京セラグループとして参加することを発表し、その出展内容の一部を報道陣に公開した。
透明な物質や繰り返し模様でも測距を可能とした3眼AIカメラ
公開された主な出展内容については大きく5つに分けられる。1つ目は、初展示となる「3眼AI測距カメラ技術」。2眼のステレオカメラは三角測量の原理で、2つのカメラと対象物の関係から距離を割り出す技術だが、10cm程度の近距離でのセンシングや繰り返しパターン、反射/半透明の物体の測距が難しいといった課題があった。
こうした課題に対して、同社は2024年に1つのイメージセンサ上に2つのレンズを配置した2眼AI測距カメラを開発し、10cmの距離で測定誤差0.1mmの処理測定を可能としたが、2025年はそこからさらに技術を発展させ、1つのイメージセンサ上に3つのレンズをトライアングル状に配置。左レンズと右レンズ、左レンズと中央上レンズ、右レンズと中央上レンズの3つのステレオカメラの組み合わせとし、独自開発のAIと組み合わせることで、それぞれの視差データを比較・検証を行い、誤認識を減らすことを可能とした。その結果、細くて形が不規則なハーネスのような線状の物体であったり、直径0.3mmの極細ケーブルなども正確に距離の測定ができるようになったという。


実際のデモの様子。左から3眼AI測距カメラ、2024年開発の2眼AI測距カメラ、他社のステレオカメラで複数本の紐を撮影した。複数のステレオカメラによる撮像情報を重ねることで、物体の認識と距離の高精度な測定が可能になった
また、2眼では測定が難しかった繰り返し模様を持つ対象物や部分的に反射する金属、半透明のプラスチックなど、物体表面にあまり特長のない対象物であっても正確に距離を測定することが可能になったともしており、「繰り返しパターンの多い検査工程」や「手術ロボット」、「農業分野の収穫ロボット」といった分野での活用を目指すとしている。
水中で5.2Gbpsの高速通信を実現
2つ目は、「高速水中光無線通信技術」。AUV(自立型無人潜水機)や水中ドローンを活用した海洋調査、構造物点検、資源探査などが急速に進みつつあるが、水中のそうしたAUVを中心とする機体と海上の母船との連絡は超音波を中心とする音響通信が用いられてきた。その通信速度は数Mbps程度にとどまっており、高解像度の映像の伝送や大容量データの即時共有が難しいという課題があった。
京セラは、そうした水中における通信課題への対応に向けて水中環境に特化した光無線通信技術としてGaNを用いた青色レーザーに着目。Li-Fi技術と京セラが培ってきた無線通信技術を組み合わせることで、高速通信を実現してきた。2025年8月には静岡県の沼津市の実海域において水深6.7m付近付近で向かい合わせた2台の通信機の間で750Mbpsで安定して通信することに成功したことを報告していた。
CES 2026でも2台の通信機を向かい合わせた形で大型水槽内に沈め、カメラの映像を伝送するというデモを行う予定。水槽の中と外にカメラが設置され、訪問者が水中のカメラをジョイスティックで光無線通信を活用して操作するというものになるという。
また、今回、実験室レベルではあるが、世界最速レベルとなる5.2Gbpsの伝送を実現したことを発表した。実現した手法としては、独自の通信使用を適用することで光学半導体部品の帯域特性を最大限に活用した1GHzを超す帯域幅を持つ光フロントエンド回路を開発したという。これにより、同一時間内により多くの情報を送ることが可能となったとのことで、こちらも展示する予定だという。
実用化済みの技術の新たな活用法を紹介
3つ目は「高分解能ミリ波センサ」。独自の基板材料技術による低ノイズ化や独自アルゴリズムにより対象物に対する速度、距離、水平方向、垂直方向の4Dセンシングが可能なミリ波センサ。マイクロメートルオーダーの動きを計測することが可能であり、バイタルセンシングや非接触での社会インフラの点検などでも活用が期待されている。
CES 2026では、高速道路とビルの模型を用いた非接触による微小振動の計測を複数地点で1台のセンサにて同時に行うというデモを行うとしている。
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高速道路とビルの模型を用いた非接触での微小振動計測デモ。左の四角の箱の中にミリ波センサのモジュールが入っており、右側の高速道路とビルの模型にミリ波を照射して測定するというもの。左下の2つの黒いボックスは振動を起こすためのスイッチ
4つ目は光電集積モジュール「OPTINITY」。AIの台頭でデータトラフィックが激増しており、その中心を担うデータセンターの消費電力も急増している。インタフェースの1つであるPCI Express(PCIe)はメタルでの通信がこれまでメインで用いられてきたが、伝送距離は約7mで限界であり、かつ高速化についてもノイズなどの影響から限界が見えてきている。
将来的にも高速伝送を実現するために光通信をPCIeでも活用しようという話が出てきており、OPTINITYはそうしたPCIeの電気信号通信を光信号通信へと置き換えることを目指したものとなる。
光信号に置き換えることで伝送距離が約30mほどまで伸ばせるようになり、同社では将来的には500mまで伸ばしたいとする。
また、シリコンフォトニクス(SiPh)と独自の高集積化技術、放熱設計の工夫やセラミック/有機の基板技術などを組み合わせることで、低消費電力化も実現できるようになっているとする。
例えば、プリント基板上のロジック近くに取り付けることで、電気配線の使用量を減らすことができるようになるほか、32Gbpsのシリコンフォトニクスを4ch、これを4チップ搭載することで最大512Gbpsの通信をPCIe 5.0光インタフェースで実現できるとする。
PCIeを推進するPCI-SIGも光通信に対する取り組みの強化を図ろうとしており、将来的にこうした光電集積モジュールの存在感が増していく可能性がある。
5つ目は字幕表示システム「Cotopat」。話した言葉を認識して、リアルタイムに文字・図解・動画を表示することで、コミュニケーションを円滑化するシステムで、透過型の表示スクリーンを介して対面でやり取りする「Cotopat Screen」と、タブレット端末のディスプレイに文字などを投影する「Cotopat Mobile」の2種類が用意されている。
2023年に日本国内向けに発売が開始されてきたが、2025年9月にグローバル対応版が登場。Cotopat Screenは73言語、Cotopat Mobileは42言語の音声入力が可能となり、それをもとに翻訳される言語の数は134言語に対応するという。
すでにドイツにて販売を開始し、EU圏内への展開を図っていく予定とするほか、2026年にはオーストラリアならびにニュージーランドでの展開も計画。米国ならびにアジア市場については、ニーズを確認しながら2026年以降、順次展開を検討していきたいとしており、今回のCES 2026に出展することで北米での認知向上などにつなげていきたいとしている。








