米Microsoft(マイクロソフト)は11月12日(現地時間)、デンマーク・コペンハーゲン北部に位置するLyngby(リュンビュー)にある量子施設の拡張を発表した。同国において2カ所目のラボであり、同社の「Majorana 1」チップの中核を成すトポロジカル量子ビットの開発が行われる。

  • クリーンルームの内部

    クリーンルームの内部

北欧の量子イニシアチブ「QuNorth」が「Magne」を提供

マイクロソフトのデンマークにおける量子関連の投資総額は、今回で10億デンマーククローネ(日本円で約2150億円)を超え、リュンビューのチームは、物理学者、材料科学者、マイクロ・ナノファブリケーションの専門家、ソフトウェアエンジニアで構成され、20以上の国籍を持つメンバーが集結している。

同社は今年2月にトポロジカルコアを搭載した量子コンピューティングチップ「Majorana 1」を発表。同チップは、単一チップ上で数百万の量子ビットにスケールできるよう設計されており、一部をデンマークのラボで開発している。今回の拡張により、Majoranaチップの心臓部をデンマークで製造できるようになるという。

  • 量子コンピューティングチップ「Majorana 1」

    量子コンピューティングチップ「Majorana 1」

ヨーロッパは競争力とデジタル主権を守るため、量子分野での取り組みを加速させており、欧州委員会の「Quantum Europe Strategy」は、2030年までに世界的リーダーシップを確立するための道筋を示し、材料科学、チップ設計、量子ソフトウェアのブレークスルー、国際パートナーとの協力に重点を置いている。同社では、こうしたビジョンを支援することを目指し、欧州の人材への投資、主要機関とのパートナーシップ、研究成果をラボから市場へスケールさせる取り組みを進めている。

また、マイクロソフトはニールス・ボーア研究所やデンマーク工科大学(DTU)など、デンマークの大学と協力し、トポロジカル量子ビットのための材料やデバイス工学を進めてきた。同技術は量子情報を保護し、エラーを低減することに役立ち、2018年には大学とのパートナーシップとして、最初のラボを開設した。

今回のラボ拡張は、同社によるもう1つのデンマークにおける量子関連の取り組みに続くものとなり、今夏にはデンマークの輸出・投資基金(EIFO)とノボノルディスク財団が支援する北欧の量子イニシアチブ「QuNorth」は、マイクロソフトとAtom Computingのパートナーシップにより、次世代量子コンピュータ「Magne」を提供することを発表。

Magneは、論理量子ビットを搭載したマシンの初の実運用展開となり、同社の高度なエラー訂正ソフトウェアとAtom Computingの中性原子ハードウェアを組み合わせる。建設は2025年秋に開始され、運用は2026年末に予定している。

  • 材料実験室の内部

    材料実験室の内部

同社ではオペレーティングシステム、クラウド統合、Quantum Development Kitなどの開発ツールを提供し、材料科学やバイオテクノロジーなどの分野で研究と商業利用を加速するフルスタックソリューションを実現するという。