宇宙航空研究開発機構(JAXA)、ウェザーニューズ、NTTデータ、テラドローンの4者は、有人機やドローンなどの無人機の運航情報を一元的に管理し、警備活動を安全かつ効率的に行えるようにする「運航安全管理システム」を、大阪・関西万博会場において共同で実証。突発的な任務が発生しても、迅速に運航調整できることも示されたという。
大規模イベントの警備などでは今後、有人機とドローンなどの無人機が混在して活用される機会が増えることが見込まれるが、これまではそれぞれ異なるシステムで管理されているため、リアルタイムでの監視や、突発的に発生した事象への迅速な対応が難しいという課題があった。
JAXAでは、複数の企業・機関と共同で、既存の「災害救援航空機情報共有ネットワーク」(D-NET)を発展させ、無人機と連携できるようにする「災害・緊急時等に活用可能な運航安全管理システム」(DOERシステム)の研究開発を進めている。
今回の実証は10月2日から10月10日まで、大阪・関西万博(2025年日本国際博覧会)の警備に際して、前出の4者が参加する「運航調整所」をアジア太平洋トレードセンター(ATC)に模擬的に設置。同システムを利用した「運航調整所業務」の有効性の確認を行った。各者が担当した役割は以下の通り。
- JAXA:運航安全管理システムの開発・技術検証の統括
- ウェザーニューズ:気象情報の収集・分析による安全運航支援
- NTTデータ:無人機システム連携基盤・無人機運航データの統合管理
- テラドローン:無人機の運航制御・無人機飛行データ(仮想データ)提供
運航調整所では、飛行前日の調整や、飛行当日の運航監視、飛行当日に発生した緊急任務を有人機・無人機に割り当てる対応(任務割当)などを、シナリオに基づいて実施した。
今回の運用シナリオは、大規模な国際スポーツ大会での技術協力により得られた知見を基に設定したものだが、任務割当に関するシナリオは、実機への影響を考慮し、仮想のデータを使用している。さらに、次世代空モビリティの社会実装に向けた実現プロジェクト(ReAMoプロジェクト)と連携し、eVTOL(いわゆる“空飛ぶクルマ”)の情報も共有できる体制を構築した。
実証実験後、システムの有効性についてユーザー候補である省庁や自治体から、社会実装をめざすにあたり必要な機能・性能を満たしている旨の評価が得られたとのこと。
JAXAは、DOERシステムの災害対応実証を2026年度に予定しており、今回の実証で得られた知見をもとに機能を改良。さらに、遠隔地における災害・警備への適用拡大をめざし、研究開発を進めていく。



