KDDIは11月6日、2026年3月期の上期(2025年4月~9月)の決算について発表し、説明会を開いた。説明会の冒頭、代表取締役社長 CEOの松田浩路氏は大阪・関西万博について、次のようにコメントした。

「万博は大盛況のうちに閉幕した。当社は日立製作所と共に『未来の都市』パビリオンを共同展示し、約190万人と多くの方に足を運んでいただいた。未来に向き合う体験を通じて子供たちが学び、未来について考える機会を提供できたと思う。ご来館いただいた方やご支援いただいた皆様にお礼を申し上げたい」

  • KDDI 代表取締役社長 CEO 松田浩路氏

    KDDI 代表取締役社長 CEO 松田浩路氏

KDDIは上期連結で増収増益、第2四半期に大きく伸長

KDDIの2026年3月期上期の決算は、売上高が前年同期比3.8%増の2兆9632億円、営業利益は同0.7%増の5772億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は同7.6%増の3777億円と、増収増益だった。EPS(Earnings Per Share:1株当たり純利益)目標の達成に向けて想定通りの進捗だという。

  • 2026年度上期の連結業績

    2026年度上期の連結業績

第2四半期(7月~9月)単独で見ると、売上高は第1四半期と比較して6.3%(前年同期比5.6%)増の1兆5268億円、営業利益は同11.8%増(前年同期比6.9%)増の3046億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は同20.7%増(前年同期比1.5%減)の2066億円だった。モバイルの料金改定効果が顕在化するとともに、各事業領域が成長したことから第2四半期単独での業績が伸長した。

  • 2026年度第2四半期の業績

    2026年度第2四半期の業績

上期連結での業績成長を促した要因を見てみると、モバイル(パーソナルセグメント)が前年同期比111億円増、金融・エネルギー・ローソンが同127億円増、DX(ビジネスセグメント)が同39億円増、技術構造改革が96億円増となった。各事業が好調だったことから、一過性を含む過年度の販促費の影響を吸収して増益の決算となった。

  • 事業領域別の増減要因

    事業領域別の増減要因

下期(2025年10月~2026年3月)に向けては、モバイルの成長を加速してサービス改定を含む価値向上で190億円以上の利益創出を目指す。また、金融は金利の動向を踏まえて預貸率を重視した戦略へと転換。DX領域はBPO事業のターンアラウンドにより成長軌道に乗せる。過年度の販促費の影響は上期で吸収できたため、下期以降には響かないとしている。

モバイルは成長サイクルの好循環でLTV増大に寄与

モバイル事業は投資による成長とパートナー企業への還元が功を奏し、価値提供の好循環が生まれ始めた。このサイクルは松田氏がかねてから話していた、イノベーションへの投資による成長と、高品質な通信およびサービスによる対価の獲得、さらにパートナー企業への還元や販売チャネルの強化により、さらなる次の投資につなげるモデルだ。

この循環の中において、同社はLTV(Life Time Value:顧客生涯価値)の向上を意識した構造改革を進めている。UQ mobileおよびauがそれぞれの価値を提供するとともに、auブランドは通信品質やStarlinkをはじめとした差別化要素を訴求することで、ARPU(Average Revenue Per User:ユーザー当たりの平均売上高)の向上と解約率の低下を図っている。

松田氏は「短期での解約を誘発するような特典・プランを見直してきた。より長期的な価値づくりによるARPU成長と解約率の低下にこだわり、筋肉質な事業基盤を推進している」と説明した。

  • モバイル事業の構造改革

    モバイル事業の構造改革

より長期的なエンゲージメントに資するKDDIならではの価値づくりとしては、ローソンと取り組んでいる「Pontaパス」が第2四半期だけで約29万会員の純増だった。新たな特典として、ローソンのコーヒー無料クーポンが5枚(計800円相当)がもらえる「コーヒーコース」など魅力的なプランが人気だという。

また、通信と保険の組み合わせによる新サービスとして、あいおいニッセイ同和損保と共同開発した「地震の備えサポート」を年内に提供開始予定だ。これは、災害への備えとして、震度7の地震が発生した際にau PAY残高もしくは銀行口座に、当面必要となる3万円を最短当日に振り込むというサービス。auバリューリンクプランに含めて展開する。

その他にも、電話番号で写真や動画を送受信できるRCS(Rich Communication Services)を開始。11月のアップデートにより、iPhoneでも設定不要で利用できるようになった。今後はサービスの拡充やパートナーとの連携を強化する。

  • KDDIブランドのモバイルならではの価値づくり

    KDDIブランドのモバイルならではの価値づくり

これらの構造改革が効果として表れ始めた。モバイルARPUは第1四半期の4340円から120円増となる4460円まで増加。解約率も第1四半期の1.23%と比較して1.21%と改善している。

また、9月にはUQ mobileからauへの移行が、auからUQ mobileへの移行に対して初のプラス反転となり、ブランド間移行の改善が見られた。このトレンドは10月に入ってからも継続しているとのことだ。

モバイル収入は下期にさらなる成長を見込んでいる。構造改革の進展に伴う解約率の低減とARPUの向上、ブランドミックスの改善により、期初の想定以上にサービス改定による効果を拡大する。

  • 2026年度下期のモバイル事業の成長

    2026年度下期のモバイル事業の成長

下期は金融とDXの成長に向けた取り組みを推進

中期経営戦略の最終年度に当たる2026年度の通期目標達成に向け、同社は特に金融とDX事業の成長に向けた取り組みを推進する。注力領域としているDX、金融、エネルギー、ローソン持分法利益のうち、エネルギーとローソンは順調に進捗している。

まず、金融は持続的な成長の基盤を構築するために、銀行とクレジットカード事業の取り組みを推進する。金利の影響により預金調達環境が変化する中、住宅ローンに限らず預貸率を重視した戦略へと転換を図る。プランの特典強化や銀証連携の拡大により、預金調達力を強化する。

  • 金融事業の取り組み

    金融事業の取り組み

DX事業はモバイル、IoT、データセンターが順調だった一方で、BPO事業やSI関連事業が減益となった。BPO事業はコンタクトセンターの受注減と統合効果の遅れ、SI関連事業は大口案件の開発遅れに伴う一過性の受注抑制、クラウド案件の前年特需の反動減などが見られたという。松田氏はこれらの減益要因について、「解消のめどは付いている」と説明した。

具体的な施策の一つが、BPO事業を担うアルティウスリンクのターンアラウンド(事業再生)だ。既存サービスのシェアを防衛すると同時に、生成AIを活用した事業領域拡大と新規顧客の拡大により、事業活性化につなげる。また、コスト効率化などの取り組みについても、効果を具体化する。

  • DX事業の取り組みの一つ、BPO事業のターンアラウンド

    DX事業の取り組みの一つ、BPO事業のターンアラウンド

下期は通期目標の達成に向け、モバイルやIoTといった主力サービスの安定成長を継続しながら、ファシリティやStarlink、ドローンなど新規商材の受注を拡大して成長加速につなげる。

次期中期経営戦略における2つの重要テーマ

同社は2027年度から、次の中期経営戦略を始動する。次期中期経営戦略においては、AI時代に対応するインフラによる持続的成長と、中長期目線で高いリターンが見込める領域への投資という、2つの重要テーマが柱となる。

「持続的成長という当社の強みをAi時代においても進化させ、資本効率を重視したクオリティを追求して企業価値の向上を目指す」(松田氏)

AI時代のインフラ基盤として、Sub6帯にミリ波を重ねた通信エリアを拡大。4Gの転用周波数を含めた5GのSA(スタンドアロン)化により、人口カバー率は年度内に90%以上を目指す。

ミリ波の実用化に向けては高輪を中心に実証が進んでおり、Netflixの動画全10話分を約10秒でダウンロード完了した。また、Sonyとの実証では4Kの写真80枚を約80秒でアップロード完了した。

  • ネットワークの高度化に向けた取り組み

    ネットワークの高度化に向けた取り組み

次世代インフラの整備として、データセンターの拡張にも注力する。同社がTelehouse(テレハウス)ブランドで展開するデータセンターは、AI活用の拡大で高まるヨーロッパの需要増を見越して、ロンドンにおける6棟目を600億円で建設することを発表している。

2027年度に開業予定のこの「Telehouse West 2」は、22.4メガワットの電力容量を備え、GPUの放熱を冷却するための水冷方式に対応。高いコネクティビティにより低遅延かつ広帯域の通信を可能にする。これらの特徴は、推論などリアルタイムなAI利用に適していると考えられる。

  • データセンター事業の拡大

    データセンター事業の拡大

国内に目を移すと、2026年1月にはシャープ跡地の大阪堺データセンターの稼働開始が控えている。このデータセンターでは法人向けにGPUを提供するほか、Googleの生成AIモデル「Gemini」のオンプレミスサービスなども提供予定だ。

  • 大阪堺データセンターが2026年1月に稼働開始

    大阪堺データセンターが2026年1月に稼働開始予定

松田氏は「投資やパートナーとの連携は、後々の価値を創出するための財産。AI時代を支える5G・6Gなどの高品質なネットワークや、高付加価値なサービスを作り上げていくためにも、規律を持った効率的な投資とパートナー連携を進めていく」と説明していた。

  • 価値提供のサイクル

    価値提供のサイクル