KDDIは、ビジネス向けのイベント「KDDI SUMMIT 2025」を東京・高輪ゲートウェイにおいて、10月28日~29日にかけて開催している。初日である28日には同社の松田浩路社長が登壇し、「つなぐチカラを進化させる」と題して基調講演を行った。
KDDIが社会課題を解決するキーワード、「テクノロジー」「リアル」
松田社長が特に強調したのは、「地域」と「社会課題の解決」だ。冒頭で大阪・関西万博に触れた松田社長は、自身も1985年のつくば万博がターニングポイントになって技術者への道を歩んだことから、子供たちが未来について考えるきっかけになればと、大阪・関西万博への参加を決めたと説明。そうした未来の実現のためには解決すべき課題がある、と松田社長は話す。
社会課題としては、人口減少、少子高齢化によって産業そのものが衰退する可能性もある。こうした影響は今後都市部でも問題になるが、すでに地方で先行して問題が大きくなっており、松田社長は「町に安心して住み続けたいという願いに寄り添って、それに応えるべく取り組んでいきたいと強調する。
そうした社会課題の解決に関しては、「3つの力で貢献したい」と松田社長。1つ目が「テクノロジー」で、特にKDDIにとっては「通信が一丁目一番地」(松田社長)。通信品質にこだわってきた結果、同社は直近の3年連続でOpensignalの評価において世界1位の評価を獲得している。
2つ目が「リアル」だと松田社長は話す。全国で通信エリアを広げてきたKDDIは、その点で地域に向き合ってきた。スマートフォンだけでなく、家電や自動車など様々なデバイスが通信に接続するようになり、「当たり前のインフラ」(同)となり、どの地域でも使えるように向き合ったエリアづくりをしているという。
さらにリアルのタッチポイントも重視する。auショップ/auスタイルを全国に約2,000店舗を展開している同社だが、それにローソンも加えることで、リアルのタッチポイントを拡大。「コンビニエンスストアはこれからの日本の将来、未来を考える上で非常に大事な地域のインフラ」だと松田社長は説明し、テクノロジーの社会実装においてリアルのタッチポイントの大切さを強調した。
このリアルに関しては、「暮らし」「産業」「人」という3つの観点から地域へ向き合っていくという。「暮らし」としては、地域交通への取り組みを進めており、地方の交通弱者の課題解決として、つくば市や高輪ゲートウェイなどで取り組みを行う。
「産業」では、特に第一次産業に関してテクノロジーでの支援を検討しているという。例えば米作りにおける水の管理のデジタル化、地域の特産品の育成の過程/養殖の過程で環境データを見える化する取り組み、スマート農業やスマート漁業などの取り組みも行っているそうだ。
局所的/一過性の取り組みを持続的なものにするために必要な「循環」
「人」では、「誰一人取り残されないのが大事」と松田社長。人材育成やリテラシー教育、子供のテクノロジー教育などに取り組んでいるが、こうした取り組みについては、「どれも局所的、一過性」だと松田社長は指摘。これを持続的にするために「循環」が必要だと強調した。
この点で進展しているのがドローンだという。社会インフラの老朽化が全国で課題になっており、人口減少の中で対処するために、橋梁や鉄塔の点検などに活躍しているドローンは、災害時にも活躍できるポテンシャルもあり、幅広いシーンで活用されている。石川県ではドローン基地を4カ所に常設して、平時も有事も利用できる環境を構築した。
KDDIのドローン事業は黒字転換しているとのことで、今後はドローン基地を1,000カ所に常設していきたい考え。地域にドローンスクールも開講し、地域課題を地域で解決できる体制作りにも貢献していきたい考えだ。
循環しているもう1つの事業が衛星通信。Starlinkを活用した衛星通信は、災害時などのBCP目的だけでなく、平時でも地域のイベントや音楽フェスなどで使用されている。イベント現場では、通常の通信が繋がりにくくなりがちで、イベントでのスムーズなモバイルオーダーやグッズ販売で活躍しているという。
災害対策面では、先日の八丈島などにおける台風被害においてもモバイル通信が使えなる被害があったが、同社の端末は基地局がダウンすると自動的にStarlinkを探す設計になっており、ユーザーがなにをしなくてもそちらに繋がるようになる。このため、台風直後にはStarlinkのデータ利用が急増していたそうだ。
KDDIはStarlinkを使ったスマートフォンとの直接データ通信に世界で初めて対応しており、「フロントランナーとして業界を引っ張っていきたい」と松田社長はアピールする。このStarlink対応においては、準備万端にして先手を打つことで、日本のユーザーに今すぐ使える環境を提供するようにしたと松田社長。こうした過去における投資が今の社会を支えるようになると話し、未来を作るために現在の投資を重視する考えを示した。
大阪堺データセンター、Google Cloudとの提携などAIにも積極的に取り組む
そこで避けて通れないのがAIに対する投資だ。すでに大阪堺データセンターが2026年1月に稼働開始することが発表されているが、これまでのデータセンター運用ノウハウとシャープのパネル工場の施設などを流用することで時間を節約して短期間で稼働にこぎつけたという。「なんとかAI時代に間に合った」と松田社長は言う。
さらにGoogle Cloudとの戦略的提携も発表。GoogleのGeminiやNotebookLMといった最先端のAI技術を活用して、コンテンツプロバイダーの権利を保護しながら信頼性の高い情報を得られるサービスを2026年春にも提供する計画が明らかにされた。
松田社長は、「現在のAI検索サービスは、利用者からすると関心のある情報をどう探したらよいか、どこまで正しいかが分からない。コンテンツプロバイダーからすると、資産が無断利用されていないか懸念がある。グローバルでは無断利用に関する訴訟も増えてきている」と問題点を指摘する。
コンテンツプロバイダーのコンテンツを守ったり、コンテンツをユーザーに届けたりするという事業は「携帯電話の黎明期から行っている我々の使命」と松田社長は強調し、そうしたサービスを提供したい考えだ。すでにコンテンツプロバイダーには幅広く声をかけているそうで、サービス開始直後はユーザーに無償提供しつつ、レベニューシェアの形でコンテンツプロバイダーに貢献していく。
こうしたAIに対する取り組みが次の循環にも繋がる、というのが松田社長の考え。テクノロジー+リアルと循環という3つの観点から、地域に関する取り組みを継続していくと松田社長は話し、講演を締めくくっていた。













