リコーは10月27日、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発し10月26日に打ち上げられた新型宇宙ステーション補給機1号機「HTV-X1」に搭載されたSDX(次世代宇宙用太陽電池実証装置)に、リコーが開発するペロブスカイト太陽電池が搭載されたことを発表した。

  • HTV-X1に搭載されたSDX

    HTV-X1に搭載されたSDXのイメージ(c)JAXA(出所:リコー)

約2ヶ月の宇宙の旅に臨むペロブスカイト太陽電池

HTV-X1は、国際宇宙ステーション(ISS)への物資補給を行うために開発された宇宙機だ。2009年から2020年にかけて、この役割は先代の宇宙ステーション補給機「こうのとり」が担っており、全9機にわたって運用が行われてきた。そして今般、こうのとりからさらに性能を向上させるとともに、より効率的で柔軟な輸送を実現するため、後継機となるHTV-X1の開発が完了。10月26日には、JAXAのH3ロケット7号機に搭載される形で宇宙空間へと打ち上げられ、ロケットから分離された後に所定の軌道へ投入された。

そんなHTV-X1では、従来は機体に貼り付ける方式が採用されていた太陽電池について、展開型のソーラーパドルへと構造が刷新された。従来の衛星用太陽電池における課題として、重量が大きいことに起因する打ち上げコストの増大や、宇宙線による劣化、充分に太陽光が当たらないと発電できないなどの点が挙げられており、今回の新方式実現には太陽電池の軽量化や高耐久性などが不可欠となる。そのため今回は、低照度での高い発電量や、宇宙線に対する高い耐久性、さらに将来的にはフレキシブル化や軽量化も可能とされる素材であることから、宇宙空間での活用への期待が高まっていることも受け、リコーのペロブスカイト太陽電池が採用されたという。

リコーは現在、脱炭素社会の実現に向けた取り組みの一環として、ペロブスカイト太陽電池の実用化に向けた技術開発に取り組んでいるとのこと。2017年からはJAXA 宇宙探査イノベーションハブとの共同研究にも参画し、過酷な宇宙環境でも高い耐久性を発揮するペロブスカイト太陽電池の開発を目指してきたとする。

そして今般、HTV-X1の宇宙実証において同機へのペロブスカイト太陽電池搭載が決定。この実証では、HTV-X1がISSへと物資を輸送した後に、宇宙空間にリコーのペロブスカイト太陽電池を約2か月間曝露し、電流‐電圧(I-V)特性の取得や発電性能・耐久性などの評価を行う計画だという。

リコーは今後、複合機の開発で培われた有機感光体技術とインクジェットヘッド技術、インク・サプライ技術、プリンティングシステム技術、ロールtoロール搬送技術などさまざまな要素を掛け合わせることにより、ペロブスカイト太陽電池の高変換効率化・高耐久化に加え、高生産性や低コスト化の実現を目指すとのこと。特にインクジェット印刷では、高精度パターニングにより任意の位置に全機能層を積層出来る特性を活かし、意匠性の付与やサイズのカスタマイズを実現するなど、太陽電池のさらなる普及拡大を後押しするための開発を進めていくとした。

なおリコーは、今回実施される宇宙実証の成果を活用し、ペロブスカイト太陽電池の性能向上と高耐久化に関する研究をさらに進め、ペロブスカイト太陽電池の早期事業化を目指すとしている。