花王 ヒューマンヘルスケア研究所は10月22日、歩行中の“身体アライメント”解析から姿勢を把握し、身体アライメントのゆがみが慢性的な疲労と関係している可能性があることを明らかにしたと発表した。

実は未解明だった「姿勢×健康」の関係性を調査

近年では、猫背や反り腰などといった“姿勢”への関心が高まっている。一般的には、姿勢が崩れると健康に悪影響を及ぼすと認識されているものの、その科学的根拠については十分に解明されていなかった。そこで花王は、姿勢と健康との関係を明らかにするため研究に着手したとする。

今回の研究において「姿勢」とは、骨格・間接・筋肉などの位置関係やバランスで構成される「身体アライメント」を指すとする花王は、歩行中の身体アライメントを簡便かつ詳細に解析する「Walk Coordinator」技術を有しているとのこと。また、歩行が本来左右対称であることが望ましい動作であり、意識的にコントロールしにくいという特性があることから、研究にあたり、歩行時の身体アライメント測定が姿勢の評価に最適だと考えたという。

Walk Coordinator技術のイメージ動画(出所:花王ジャパン YouTubeチャンネル)

今回活用されたWalk Coordinator技術搭載アプリでは、8歩の歩行から骨盤角度・間接角度・関節モーメントの左右差や可動性などが測定可能。そこで同研究では、2023年に919人のデータを取得し、歩行時の身体アライメントの非対称性に関する52項目を機械学習で整理した後、身体アライメントのゆがみの程度で分類したマップが作成された。

このマップでは、52項目から計算された一人ひとりの身体アライメントのゆがみ特徴に基づいたプロットが行われ、位置関係が近いほどその特徴が似通っていることを示すとのこと。そしてプロットの結果、歩行に表れる身体アライメントの特徴は、類似度によって7つの小さなグループに分類され、さらにそこから3つの大きなタイプへと集約できることが判明した。なおこれらのタイプは、ゆがみが少なく相対的に良好な身体アライメントを保持しているとされた「Aタイプ」、多くの項目でゆがみが認められた「Cタイプ」、そして両タイプの中間にあたる「Bタイプ」に区分された。

  • 身体アライメントのゆがみタイプ分類

    身体アライメントのゆがみタイプ分類(出所:花王)

インソールによるゆがみ軽減効果も確認

さらに2024年にも、花王は歩行測定を実施。対象とされた196名をA・B・Cタイプのいずれかに分類し、チャルダー疲労尺度で評価された“慢性的疲労度”のスコアと併せてプロットされた。すると、身体アライメントのゆがみが比較的良好なAタイプでは、疲労度の高い人がほとんど見られなかった一方で、対照的にCタイプでは疲労度の高い人が多く確認されたとのこと。またBタイプには疲労度の高い人と低い人が混在しており、疲労に対しては身体アライメントのゆがみに加え、別の要因の関与が大きいことも推察されたとする。

  • ゆがみタイプと慢性的疲労度の関係性

    身体アライメントのゆがみタイプと慢性的疲労度の関係性(出所:花王)

研究チームは加えて、筋肉の使い方の改善などで身体アライメントのゆがみを整えた場合の効果を検証するため、簡易的な方法として、物理的な補正を行えるインソールの効果を調査した。実験では114人を対象に、研究用のインソールを着用して10m歩行した際の骨盤や関節の角度、関節モーメントなど49項目の変化を測定。その結果、インソール未着用時には骨盤角度が左右いずれかに平均0.95度傾いていたのに対し、着用後には傾きが0.22度まで改善されたことを確認。このことから研究チームは、インソールの着用により身体アライメントのゆがみを補正できる可能性があると考えられるとした。

  • 骨盤角度の左右差変化

    骨盤角度の左右差変化の調査結果(出所:花王)

花王は、今回の研究で得られた知見を今後のサービスや製品開発に活用していくとともに、身体アライメントのゆがみが、慢性的疲労だけでなく意欲低下やストレスに対する感受性などといった精神的側面にも関係する可能性があることから、さらなる研究を進めていくとしている。