TISインテックグループのTISとQuantum Meshは10月22日、Quantum Meshが提供する分散型エッジデータセンターや液浸冷却システム「KAMUI」を活用したAI基盤サービスの開発と展開を目的として協業を開始することを発表した。

エンタープライズ向けの開発運用実績と国内最大級のデータセンター網を持つTISと、分散型エッジデータセンターや液浸冷却システムに関する技術を持つQuantum Meshは、双方の強みを生かしてGPUサーバ需要の増大やデータセンターの高負荷化、電力コスト高騰といった課題に対応するAI基盤サービスを共同で展開するという。

2025年11月ころから、液浸冷却システム「KAMUI」のファーストユーザーとなる企業と共に、液浸冷却システムの運用や追加開発機能などの検証を目的としたPoC(Proof of Concept:概念実証)を実施する予定。

その成果を踏まえ、2026年夏ころより両社のデータセンターをハイブリッドで活用し、社内データを活用したAIモデル構築や業界・業務特化型LLM構築といった幅広いニーズに対応可能なAI基盤サービスの提供開始を目指すとのことだ。

  • 事業構想のイメージ

    事業構想のイメージ

協業の背景

企業によるAI活用は、業務効率化や新規事業の展開を目的に急速に拡大している。AI活用には高性能なGPUサーバが必要であり、企業からの需要も年々高まっている。こうしたAI活用向けのデータセンター需要の増加に伴い、高性能GPUサーバをデータセンターで預かるハウジングサービス市場は、2029年までに年平均成長率73.1%で推移し、急速な市場拡大により5年間で約15倍になると予測されている。

一方で、高性能GPUサーバは稼働時に多くの電力を消費し、さらに発熱量も大きいため、高効率な冷却システムの導入が求められる。今後のAI活用の拡大に伴ってデータセンターの負荷はより増大する見込みであり、従来の空調システムでの冷却に加え、水冷や液冷といった高度な冷却技術の発展が期待される。特に液浸冷却は冷却効率の向上と電力使用量の削減を実現し、データセンター運用コストの抑制に直結する注目度の高い技術とされる。

TISは東京都心に延床面積約2万平方メートルの都市型のデータセンター「東京第4データセンター」を保有している。ここは免震構造と最新設備を備え、エンタープライズを中心とした幅広い顧客基盤にサービスを提供している。豊富な開発実績と運用ノウハウを持つ一方で、AI時代に備えてデータセンター事業のさらなる付加価値向上と、AIを活用したサービスを軸とした新規顧客の獲得強化が急務となっていたとのことだ。

Quantum Meshは分散型エッジデータセンターの開発と運営を行うスタートアップ企業。2025年3月には、GPUサーバ自体を冷却液に浸してサーバから発生する熱を吸収する仕組みを採用した液浸冷却システム「KAMUI」を開発し、国内で初めて商用化している。高効率かつセキュアなサービスアセットを保有する一方、市場拡大に対応するための体制強化や展開力の向上が課題となっていた。

TISとQuantum Meshはこうした背景から、データセンターの高負荷化や電力などのコスト高騰といった課題に早期に対処し、冷却効率の向上と運用コスト削減を両立させる「高効率なAI基盤サービス」の早期提供を目指し、今回の協業に至った。

協業の概要

今回の協業では、TISおよびQuantum Meshのデータセンターをハイブリッド活用した新サービスの共同開発・提供のほか、分散型エッジデータセンターおよび新サービスの共同保守・運用、分散型エッジデータセンターの共同での設置拡大、液浸冷却システム「KAMUI」の販売・共同開発、セキュアデータ基盤のサービス展開などを実施する。

PoCの概要

両社は2025年11月ころから約6カ月にわたり、液浸冷却システム「KAMUI」を活用したAI基盤の導入と運用検証に向けたPoCを実施する予定。提供価値と技術を検証した後、その結果をもって新サービスを本格展開する。

  • PoCの概要図

    PoCの概要図

新サービスの概要

AIを活用したサービスを展開する事業者や社内でのAI活用を検討する事業者、業界・業務特化型AI研究に取り組む事業者向けに、業務効率化や事業展開を支援する高い効率性や利便性を持ったAI基盤サービスの開発を予定している。

また、AIエージェント時代を見据え、セキュアなプライベートAI学習ニーズに対応するため、企業ごとの用途に応じてTISの東京第4データセンターとQuantum Meshの分散型エッジデータセンターをハイブリッドで活用できる体制の構築を目指す。

  • ハイブリッド形式での提供例

    ハイブリッド形式での提供例