シリコン設計からシステム設計までシームレスにソリューションを提供できる体制を構築へ

Ansys Part of Synopsysの日本窓口であるアンシス・ジャパンは10月10日、年次イベント「Ansys Simulation World 2025」の開催に合わせてメディア説明会を開催。Synopsysとの統合に関する状況説明などを行った。

Ansys カスタマーエクセレンス担当バイスプレジデントのAnthony Dawson(アンソニー・ドーソン)氏は、「AnsysとSynopsysの統合により、今後、いろいろと楽しみな動きがでてくる。未来のエンジニアリングの課題解決に向けたさまざまな解決策を提示できるようになる」と、その統合がもたらすメリットを説明する。

  • Anthony Dawson氏

    説明を行ったAnsys カスタマーエクセレンス担当バイスプレジデントのAnthony Dawson氏

具体的には、半導体設計ツールを主体とするSynopsysから、半導体設計も担うが、自動車をはじめとするさまざまなシステムに対する解析を主体とするAnsysが結び付くことで、「シリコン to システムとしてシリコンの設計からシステムの開発まで一貫して提供できるようになる」(同)とし、このシリコンからシステム設計までシームレスに1つの流れとして提供することが現在のコミットメントであることを強調する。

  • AnsysとSynopsysの統合

    AnsysとSynopsysの統合によりシリコンというミクロな設計からシステムレベルのマクロな設計まで一貫したエンジニアリングソリューションを提供できるようになるという (資料提供:Ansys、以下すべて同様)

また、「我々の顧客が直面する課題は日々、複雑さが増しており、そこで生まれる課題への対処が難しくなってきていることを我々は理解している。そうした顧客の課題解決の助けとなるように、日々、新たな製品の機能強化を推進しており、例えば最近でもエンジニアリングAI戦略を打ち出し、AIを活用したソリューションを顧客が活用できるようになった」とし、AIを活用することで、開発サイクルの短縮、設計の容易化などの加速も可能になってきたことも協調した。

  • シミュレーションはデジタルスレッドの中心に位置

    シミュレーションがデジタルスレッドの中心に位置することで、さまざまなツールがシームレスにつながり、現実との垣根を超えたソリューションの実現につながっていくこととなる

SynopsysおよびTSMCと協力して推進する次世代プロセスの開発

Synopsysと協力して取り組んでいる内容の1つとして半導体設計の領域がある。2nm以降のデザインプロセスのほか、複数のチップ/ダイを積層する3D ICへの取り組みが重要視されるようになっているが、半導体同士を積層しつつ、チップの小型化とパッケージのコンパクト化を進めることは、チップ間の熱処理や機械的な部分の解析が増すことを意味する。

  • より多くの機能が1つのパッケージに統合されることとなる
  • より多くの機能が1つのパッケージに統合されることとなる
  • より多くの機能が1つのパッケージに統合されることとなる
  • プロセスの微細化が進めば進むほど搭載できるトランジスタ数が増加し、より多くの機能を盛り込むことができるようになる。今後、縦の方向に複数の半導体同士が重ね合わせるようになると、より多くの機能が1つのパッケージに統合されることとなるが、その一方で統合の複雑さや、熱、電磁波、機械的なストレスなど、これまでになかった問題が次々と生じ、その解決策が求められるようになり、その基礎となるのがシミュレーションとなってくる

「チップやコンポーネントを垂直に重ねていくことはさまざまな新たな課題が生じることとなるが、将来の半導体の高性能化に向けて重要になってくる。そうした複雑化する半導体設計にた氏、より効率的な設計を追及していくことは重要な要素であり、TSMCのようなファウンドリからもSynopsys/Ansysとのパートナーシップに対する期待をもらっており、我々としてもシステムアーキテクチャと複数ドメインの解析をつなぐエンジニアリングの輪をしっかりと完結させ、回していく重要性を理解して、対応を進めていきたい」(同)とのことで、AnsysとしてSynopsysとともに、顧客に対して、これまでと変わらないメリットを提供できるように、シームレスなインテグレーションを通じて、今後も低品を提供していくとしている。

その具体的なAnsysとSynopsysの製品の連携について同氏は、「シームレスに両社のツールを使えるようにしていくことは顧客のメリットになる」とのことで、例えば半導体分野ではSynopsysのツールとして、どのチップの消費電力が大きいのかを調べる機能があったとして、 そのツールから得られるデータをAnsysのツールに統合することができれば、熱の発生状況やシステム稼働時の熱の動きを正確にシミュレーションすることができるようになるといったことがメリットだとする。すでにそうしたシームレスな活用に向けた取り組みは両社間で進められており、2026年の早い時期にツールを統合した形の製品を出すことを目指しているという。

また、そのデータの管理についても、できるだけシームレスにデータが流れていくようなデータマネジメントを実現したいと思っているとのことで、将来的な話になるが、そういった課題の解決に向けた取り組みも進められているともする。

  • AnsysとSynopsysの連携によりシミュレーションと解析の能力をあらゆる市場に提供できるようになりる

    AnsysとSynopsysの連携によりシミュレーションと解析の能力をあらゆる市場に提供できるようになり、かつさまざまなレイヤにその恩恵を届けることができるようになるという

なお、Ansysは先日、理化学研究所(理研)のスパコン「富岳」にて流体シミュレーションソフトウェア「Ansys Fluent」と衝突シミュレーションソフトウェア「Ansys LS-DYNA」の商用利用が可能になったことを発表しているが、Ansysカスタマーエクセレンスジャパン ディレクターのAshok Khondge(アショク・コンダゲ)氏)は、「将来的には理研とのコラボレーションが広がっていくことを期待したい」と、今後のさらなる協力関係の発展に意欲を見せており、富岳の次世代機となる「富岳NEXT」についても、将来的な話とはしながらも、協力関係の構築に向けた検討を行っている段階としており、日本でのさらなるシミュレーションの活用をSynopsysと協力して推進していきたいとしている。