高まる映画の撮影機材向け電源による環境負荷
Vicorは、同社の電源モジュールがReVoltが開発した映画の撮影現場や屋外スタジオに電力を供給するためのクリーンで移動可能かつ常時稼働の電源ソリューションに採用されたことを発表した。
ハリウッドでの映画撮影の多くが、ガソリンやディーゼル発電機を用いて映画のセットや撮影機材などを動かしている。しかし、セットの設営面積の巨大化、特殊な電子機器の増加などに伴い、エネルギー需要が高まりを見せており、CO2排出量も増加傾向にあり、一説には大規模な映画セットのCO2年間排出量は米国の650世帯分の電力消費で排出される量に相当するとも言われている。
ReVoltは、ディーゼル発電機をクリーンで高効率の電力に置き換えることを目指した企業。例えば10kWのディーゼル発電機は、およそ75dBの騒音(落ち葉掃除のブロワーと同程度)を出すのと同時に、12時間で排出されるCO2は、ガソリン車が225マイル(約362km)走行するのと同じ量であるため、騒音と排気ガスを避けるために多くの場合、ディーゼル発電機は映画セットから1000フィート(約305m)以上離れた場所に設置され、高価な電源ケーブルを数百メートル敷設する必要も生じることとなる。また、ディーゼル発電機は電圧が不安定になることもあり、繊細なデジタル制御の照明やモーションコントロール機器などに適用する場合、フィルタを追加する必要があるといった課題もある。
バッテリー発電システムで環境負荷を低減
こうした課題に対し、ReVoltは充電中にも稼働できるバッテリー発電システムを解決策として考案。現在、ポータブル電源車両に組み込む形でラインナップを拡大しており、もっとも小型のWeVoltでも電力容量17.5kWh、出力14kWという家庭用の小型発電機に相当する性能を実現しているほか、重量が約3.85トンのMuleに至っては電力容量210kWh、出力120kWで、480V、208V、240V、110Vの電源系に必要に応じて電力を供給することを可能としているとする。
こうした発電システムは、内蔵されたコンピュータの冷却のためのファン程度の動作音だけで、純粋な正弦波の波形を生成し、クリーンで安定した電力を供給することを可能としているが、その安定した電圧の確保のためにVicorのバスコンバータ(BCM)とDC-DCコンバータ(DCM)が用いられてきたほか、最近、レギュレータ(PRM)も採用されたという。
具体的には、絶縁DC/DCコンバータである「BCM4414」を用いて800Vを48V/35Aのバスに変換・絶縁し、絶縁DC/DCコンバータの「DCM3414」により24Vの負荷電圧に安定化しているとする。BCM4414は、サイズが約11.05cm×3.56cm×0.94cmで電力密度が770W/in3(約47W/cm3)、仮想バッテリーとして動作するため、従来の大きな48Vバッテリーは不要だという。また、非絶縁型の昇降圧DC-DCレギュレータであるPRMは、48Vをさまざまな出力電圧に変換可能で、2kW/in3(122W/cm3)を超える電力密度で、変換効率は96%だという。
ReVoltでは、従来6~8個の部品が必要であったものが、Vicorの電源モジュール1つで実現できるようになったとしており、システムの小型化、高性能化が可能になったことを強調している。
すでに複数の大手製作会社が活用中
なお、ReVoltの電源ソリューションはすでにAmazon MGMスタジオ、Appleスタジオ、ソニー・ピクチャーズ、ワーナー・ブラザース・ディスカバリーとその子会社HBOといった大手制作会社と提携し、撮影現場への電力供給を行っているが、映画業界に留まらず、自然災害の被災地、工事現場、ライブイベントなど、さまざまな分野での活用に向けた取り組みを進めているとのことで、モジュールで構成する電力供給を基盤とするVicorとの提携を加速していくことで、より環境にやさしい未来の実現につなげていきたいとしている。


