トヨタ自動車の完全子会社であるウーブン・バイ・トヨタ(WbyT)は9月25日、2021年2月から進めていたトヨタ自動車東日本の東富士工場跡地(静岡県裾野市)における「Toyota Woven City(ウーブン・シティ)」をオフィシャルローンチした。これに伴い現地でイベントを開催した。

  • 「Toyota Woven City(ウーブン・シティ)」の外観

    「Toyota Woven City(ウーブン・シティ)」の外観

モビリティカンパニーを目指すための「Woven City」

まずは、Woven Cityのおさらいからしていこう。WbyTの前身は、トヨタ自動車とデンソー、アイシンが2018年に自動運転技術の実用化に向けた高品質なソフトウェアを提供するため設立したTRI-ADだ。

2018年の「CES 2018」でトヨタ自動車 代表取締役会長(当時は代表取締役社長) 豊田章男氏は同社が「モビリティカンパニー」に変革すると強く打ち出し、2020年の「CES 2020」において同氏は実証実験の都市としてWoven Cityのコンセプトを発表。

その後、2021年2月に東富士工場跡地に隣接する旧車両ヤードでWoven Cityのフェーズ1の地鎮祭を実施、2022年にはフェーズ1の建築工事を開始。そして「CES 2025」で豊田氏はフェーズ1が竣工したことを発表した。

ローンチイベントのスペシャルゲストとして登場した豊田氏は「Wove Cityで起こしていくのは“カケザン”だ。カケザンは1社だけでは成り立たず、最低でも2社が必要。参画した方たちと共感を生み出し、仲間を増やしていく。Woven Cityがスタートする」と宣言した。

  • トヨタ自動車 代表取締役会長 豊田章男氏

    トヨタ自動車 代表取締役会長 豊田章男氏

現在はフェーズ2として、居住エリアとテストコースの造成を進めていることに加え「Inventor Garage」として参画する企業がプロダクト・サービスの初期開発や改善を行う施設を整備する。

  • 「Toyota Woven City(ウーブン・シティ)」の全体イメージ

    「Toyota Woven City(ウーブン・シティ)」の全体イメージ

すでに数世帯が居住しており、徐々にリアルな実証の場として発展させ、フェーズごとに住民は増加し、フェーズ1では300人、最終的には約2000人が居住する予定だ。住民は「Weavers」と呼び、トヨタ従業員やその家族、定年を迎えた人、小売店舗、実証に参加する科学者、各業界のパートナー企業、起業家、研究者などが含まれる。なお、一般の方のビジターとしての受け入れは、2026年度以降を予定している。

Woven Cityに参画する企業は「Inventor(発明家)」とし、豊田自動織機、ジェイテクト、トヨタ車体、豊田通商、アイシン、デンソー、トヨタ紡織、トヨタ自動車東日本、豊田合成、トヨタ自動車九州のトヨターグループに加え、今年1月に公表したダイキン工業、ダイドードリンコ、日清食品、UCCジャパン、増進会ホールディングス、インターステラーテクノロジー(IST)、共立製薬、トヨタ、WbyTの19社、今回アーティストとしては初となるシンガーソングライターのナオト・インティライミ氏が加わり、計20者となった。

  • Inventorの一覧

    Inventorの一覧

スペシャルライブに登場したナオト・インティライミ氏は、初のアーティストのInventorとして、Woven Cityで音に関する実証を行う。また、Woven Cityのテーマ曲であるWoven City Anthem「Woven City」を初披露した。

  • テーマ曲「Woven City」を披露するナオト・インティライミ氏

    テーマ曲「Woven City」を披露するナオト・インティライミ氏

ウーブン・バイ・トヨタ 代表取締役CEOの隈部肇氏は「WbyTは人種や民族、宗教、国籍、性別、年齢、心身の状態にかかわらず、すべての人を尊重し、歓迎している。多様なアイデンティティやバックグラウンドを持つ1人1人のユニークな経験や知識を織り出していくことが新しい技術の創造、イノベーションの推進力になると考えている」と述べた。

  • ウーブン・バイ・トヨタ 代表取締役CEOの隈部肇氏

    ウーブン・バイ・トヨタ 代表取締役CEOの隈部肇氏

重点領域は安全を重視したSDV(Software Defined Vehicle)の基盤となるソフトウェアプラットフォーム「Arene」、人を中心としたデータ駆動型の自動運転・高度運転支援技術「AD/ADAS」、最新のクラウド、AI基盤、全社横断型コラボレーションプラットフォーム「Cloud & AI」、そして人、モノ、情報、エネルギーのモビリティを実証するテストコース「Woven City」となる。

  • ウーブン・バイ・トヨタにおける重点領域

    ウーブン・バイ・トヨタにおける重点領域

隈部氏は「安全・安心なモビリティ社会の実現を目指し、人、モビリティ、社会インフラの三位一体で実証をおこなっていく。われわれはトヨタがモビリティカンパニーに変革するためタグボートとしての役割を果たしていく。必ずしもトヨタのルールに縛られずに新しいやり方を実装し、常にトヨタに貢献するとともに移動の未来をトヨタとともに切り拓いていく」と力を込めた。

“モビリティ”へのこだわり

続いて、登壇したウーブン・バイ・トヨタ シニア・バイス・プレジデント ウーブン・シティ・マネジメント ヘッドの豊田大輔氏は「モビリティカンパニーは何をする会社なのだろうと考えた。モビリティという言葉の語源はMoveであり、2つの意味がある。1つは移動、もう1つは心が動くという意味があり、われわれはモビリティを通じて移動を提供することに加え、人の心と心をつなぐような価値を提供することがモビリティカンパニーとしてやるべきことだ」と話す。

  • ウーブン・バイ・トヨタ シニア・バイス・プレジデント ウーブン・シティ・マネジメント ヘッドの豊田大輔氏

    ウーブン・バイ・トヨタ シニア・バイス・プレジデント ウーブン・シティ・マネジメント ヘッドの豊田大輔氏

また、同氏は「競争力のある商品を作るための既存のテストコースでは不十分であり、車が動いていない時や社会インフラの連携など、新たな価値を模索する必要がある。その際にテストコースを活用することで、より良い価値をお客さまに届けていく。そのため、Woven Cityは単なるテストコースではなく“モビリティのテストコース”として位置付けている」と説明した。

Woven Cityでは、企業・個人がさまざまなプロダクトやサービスの実証を開始するとともに、住民が居住を開始し、モビリティカンパニーへの変革に向けた人が生活するテストコースとして進めていく。

  • Woven City内の様子

    Woven City内の様子

Inventorは、トヨタのものづくりの知見やWbyTのソフトウェア技術、各Inventorが持つさまざまな強みや専門性といった、自分たちが持っていないものを掛け合わせることで、価値を創出していく。これらを同社は「カケザン」と位置付けている。幅広くWoven Cityでの実証に参加することでカケザンを加速していくという。

9月8日からはスタートアップや起業家、大学・研究機関など企業・個人を対象に、アクセラレータープログラム「Toyota Woven City Challenge -Hack the Mobility-」の募集を開始している。

グローバル規模でカケザンのアイデアの応募を2025年10月14日まで受け付け、Woven CityではWeaversもカケザンによる発明に参加する。さらに、WeaversはInventorが開発するプロダクトやサービスを試し、使い勝手や感想を伝え、Inventorはフィードバックを発明に活かしていく。

  • InventorとWeaversでフィードバックとカイゼンを回していく

    InventorとWeaversでフィードバックとカイゼンを回していく

豊田氏は「Inventorの方とは解決したい社会課題などざっくばらんに話す中で未来の役に立ちたい、自分以外の誰かのためにという思いを共感できる、また未来を目指す仲間になるかどうかを何度も議論した。そのため、一緒になっていい価値を作り、未来の子供たちのためにInventorの強みとトヨタの強みをカケザンして、届けられればと考えている」と強調していた。