夜空を見上げるだけで楽しめる天体ショー「皆既月食」が、今年もやってくる。9月8日未明、天気が良ければ、2時30分から3時53分までの約83分間にわたって皆既食をじっくり楽しめるはずだ。写真に収めたくなる人も多いと思うので、今回は皆さんにとって身近なカメラである「スマートフォン」を使った撮影方法を紹介したい。

  • スマートフォンでも工夫すれば、皆既月食の様子をキレイに撮れる。写真はXperia XZ1 Compact(2017年発売)と、後述のスマホ用望遠レンズの組み合わせで撮影した作例

    スマートフォンでも工夫すれば、皆既月食の様子をキレイに撮れる。写真はXperia XZ1 Compact(2017年発売)と、後述のスマホ用望遠レンズの組み合わせで撮影した作例

今回の皆既月食の詳細や、なぜ皆既食の最中は赤い月になるのかといった、詳しい話は国立天文台日本公開天文台協会の解説記事、弊誌連載「どこでもサイエンス」(2022年2025年)などをぜひ参照してほしい。

  • 参考までにミラーレスカメラ(ソニー α7 III)と中望遠レンズで撮影した、2022年11月8日の皆既月食

    参考までにミラーレスカメラ(ソニー α7 III)と中望遠レンズで撮影した、2022年11月8日の皆既月食

スマホで皆既月食を撮るときの準備・気を付けたいこと

2022年の皆既月食では、スマホで撮影に挑戦し、X(旧Twitter)やInstagramなどに写真を投稿する人が数多くいたことを覚えている人もいるだろう。

あれから3年、機械学習などの力を使った“コンピュテーショナルフォトグラフィー”によって、特にハイエンドなスマホカメラの性能はさらに底上げされている。しかしそうはいっても天体ショーの撮影は、普段の写真とは撮り方に気を付けなくてはならないポイントがいくつもある。ぜんぶスマホ任せで手軽に撮れればある意味“理想的”ではあるが、これから紹介する準備は最低限必要だ。

スマホ画面を見ながら撮れる場所を確保、天候も事前にチェック

まずはスマホを固定して撮れる安全な場所を確保しよう。三脚があるとなおよく、テーブル三脚など小さなものでも構わない。月は意外と撮影視野からどんどん動いてしまうので、撮影中の画面を都度見られるようにセッティングするのが望ましい。

撮影場所だけでなく、天候の事前チェックも大事だ。9月に入ったとはいえまだ暑い日々が続くものの、深夜〜早朝の天体ショーなので、羽織り物が一枚あると良いだろう。当日の天気予報などもしっかりチェックしながら、撮影・観望に臨みたい。

  • 2022年の皆既月食を楽しんだ、隅田川沿いの様子。この日は天気も良く、多くの人が足を止めて赤く染まる月を見上げていた

    2022年の皆既月食を楽しんだ、隅田川沿いの様子。この日は天気も良く、多くの人が足を止めて赤く染まる月を見上げていた

  • 皆既月食撮影時の様子。ミラーレスカメラの上に、別途用意したアルミ製スマホホルダーを使って固定している

    皆既月食撮影時の様子。ミラーレスカメラの上に、別途用意したアルミ製スマホホルダーを使って固定している

撮影アプリはお好みで、マニュアル設定できれば◎。撮影のコツも紹介

撮影に使うスマホアプリは、使い慣れたものがあれば基本的にはなんでも構わない。「ProCam」(iOS用)や、Adobeの「Lightroom」(iOS/Android用、要Adobeアカウント)に備わっている撮影機能などのように、シャッタースピードやISO感度といった露出設定やピント合わせを手動で設定できるほうが、仕上がりは格段に良くなるはずだ。ただし、各機種の標準カメラアプリ以外では、スマホの広角/望遠レンズ切り替えに対応していないことがある点には注意してほしい。

  • Adobeの「Lightroom」アプリに備わっているカメラ機能を使って月を撮っているところ。手動でのピント合わせをラクにしてくれる「ハイライトのクリッピング」が便利

    Adobeの「Lightroom」アプリに備わっているカメラ機能を使って月を撮っているところ。手動でのピント合わせをラクにしてくれる「ハイライトのクリッピング」が便利

撮影のコツも紹介しておこう。月の明るく光る部分と、地球の影に隠されていく部分の明暗差はかなり大きく、時間を追うごとにどんどん変化する。そのため、画面(特に明るく写りがちな、月のあたり)をタップして最適な露出をスマホに決めてもらったり、太陽マークのあるスライダーを下げてみたり、シャッタースピードとISO感度を細かく調整したりしながら、複数枚取っておくとよい。自然相手の撮影でもあるので、月に薄い雲がかかったり、空がかすんできたりと、状況は常に変化する。キレイな月食撮影には、気長さと粘り強さも必要だ。

手動設定できる場合は、部分食が始まる頃はシャッタースピード早め、ISO感度は抑えめで撮り始め、皆既食のあいだはシャッタースピードを最長でも1秒程度に抑えつつ、ノイズが出ない程度にISO感度を上げる。皆既食が終わって明るくなり始めたら、シャッタースピード早め、ISO感度抑えめに戻そう。白い部分食や赤みを帯びた皆既食といった、月の色味を引き立てるようにホワイトバランス(あるいはフィルタ)の設定を変えるのも良い。

より本格的な月の撮り方はここでは割愛する。月は身近な天体であり、皆既月食も比較的メジャーな天体ショーなので、こうした情報はネットを検索するとたくさん記事が見つかる。ぜひ自分でも探してみてほしい。

  • 天体ショーの撮影は、自然相手の撮影でもある。月に薄い雲がかかるなど、状況は常に変わるので気長に、粘り強くトライしよう

    天体ショーの撮影は、自然相手の撮影でもある。月に薄い雲がかかるなど、状況は常に変わるので気長に、粘り強くトライしよう

持っていると何かと便利、後付けの「スマホ用望遠レンズ」

最後に、持っておくと便利なアイテムが「スマホ用望遠レンズ」。ハイエンドスマホであれば望遠レンズを装備しているのが当たり前だが、それでも月を写真に収めると「あれ、意外と小さく写るな」と感じるだろう。高倍率ズームを備えていればなくても構わないが、めったにない天体ショーをキレイに撮りたければ、持っていてソンはない。

オススメはケンコー・トキナーの「リアルプロクリップレンズ 望遠8倍」(実売約2,940円)。スマホ側のレンズ部と背面の段差をできるだけなくすスマホケースがあると装着しやすい。機種によっては取り付けにくいこともあるので、カメラ周りの寸法を測っておこう。詳細は2022年の僚誌記事に譲りたい。

  • ケンコー・トキナーの「リアルプロクリップレンズ 望遠8倍」を取り付けたiPhone 11(上)

    ケンコー・トキナーの「リアルプロクリップレンズ 望遠8倍」を取り付けたiPhone 11(上)

  • iPhone SE(第3世代)と同レンズの組み合わせで撮った、月食が始まる前の月。単眼のiPhoneに望遠レンズをつけても、ようやくこれくらいのサイズで写る。月は身近だが、地上からはとても遠い天体であることを実感する

    iPhone SE(第3世代)と同レンズの組み合わせで撮った、月食が始まる前の月。単眼のiPhoneに望遠レンズをつけても、ようやくこれくらいのサイズで写る。月は身近だが、地上からはとても遠い天体であることを実感する

安全確保とマナー遵守で楽しい皆既月食撮影を!

いうまでもなく、天体ショーの撮影にも安全とマナーの問題はつきものだ。都市部でも楽しめる皆既月食だが、昼間なら分かりやすい段差や側溝、駐車場であれば車止めやチェーンなども、暗闇では大変キケンな存在だ。地方や山間部では、クマやイノシシといったあぶない野生動物と出くわす可能性もある。

仲間と撮影や観望に出かける人もいるだろうが、真夜中なので大声でのおしゃべりは控えたいし、ゴミの放置はもってのほか。また、暗いところでスマホを持っていると不審者と間違われたり、逆に撮影している自分が不審者のターゲットにされたりするおそれもある。

周囲への注意を十分に配りつつ、マナーを守って楽しい皆既月食撮影を楽しんでほしい。