Ga2O3の容易なp型NiO層形成技術を名大が開発
名古屋大学(名大)は9月1日、次世代パワー化合物半導体である「酸化ガリウム(Ga2O3)」において、Ni(ニッケル)をイオン注入して2段階熱処理をすることで酸化ガリウムの中にp型NiO層を形成できる技術を開発したことを発表した。
同成果は、同大 低温プラズマ科学研究センターの堀勝 特任教授、小田修 特任教授、清水尚博 特任教授、Arun Kumar Dhasiyan 特任講師、同大 未来材料・システム研究所 附属未来エレクトロニクス集積研究センター 先端物性解析部の五十嵐信行 教授らの研究グループによるもの。詳細は科学誌「Journal of Applied Physics」に8月14日付で掲載されたほか、9月15日~18日にかけてパシフィコ横浜で開催される国際会議「SSDM2025(国際固体素子・材料カンファレンス)」でも17日に発表を行う予定だという。
SiCやGaNを超す高性能パワー半導体として期待されるGa2O3
酸化ガリウムは、パワー半導体としてSiCやGaNを超す高い特性を実現することが期待されるが、p型を形成することが難しく、pnダイオードやMOSFET、IGBTといったパワー半導体の製造にまではなかなか到達できていないという課題がある。
こうした課題の克服に向け、研究グループは今回、同大 低温プラズマ科学研究センターの先端技術を活用する形で、酸化ガリウムにNiをイオン注入した後、これを独自装置による酸素ラジカル照射下の300℃で熱処理して p型ドーパントとなるNiOを形成。その後、950℃の酸素雰囲気中でRTA(Rapid Thermal Anneal:高温短時間アニール)を行うことで、酸化ガリウム中にNiOをアクセプターとしてp型層を容易に形成することに成功したという。
実際に開発した技術を用いてpnダイオードを試作し、従来法によるショットキーダイオードと比較したところ、2倍の電流を得ることができたとするほか、従来法よりも安定してダイオードができることを実証したとする。
大学発ベンチャーを通じて社会実装を加速へ
なお、研究グループでは開発された技術について、イオン注入と熱処理という工業的技術をベースとしたものであり、さまざまな構造のパワーデバイスの製造に応用が期待できると説明しているほか、量産化についても容易であり、先行して報告されているGa2O3の上にp型のNiOをヘテロエビタキシャル成長させる技術と比べても応用性や生産性の向上を図ることができるともしている。
また、同大発ベンチャーのNU-Reiが今回開発された技術も含めて名大から実施許諾を受ける形で、Ga2O3材料ならびにデバイスの開発を共同研究という形で進めており、同社を通じて興味のある企業と協業していくことで、早期にGa2O3の社会実装を進めていく予定ともしている。

