リコー、リコージャパンの両社は8月20日、東京都とともに、東京都渋谷区の東京体育館においてペロブスカイト太陽電池を搭載した庭園灯を35本設置し、同太陽電池の実証事業を開始したことを発表。同日には、東京都の小池百合子知事が実際に設置された庭園灯の視察に訪れた。
期待高まるペロブスカイト太陽電池の実証実験が始動
近年注目が集まるペロブスカイト太陽電池は、軽量かつ設計の柔軟性が高く、低照度環境や垂直設置でも高効率で発電できるという特徴を有することから、従来のシリコン系太陽電池に代わる発電技術として期待される。東京都もその社会実装に向けた取り組みに力を入れており、2025年7月には普及を見据えた施策として「次世代型太陽電池ネーミング総選挙」を実施。1万5000票あまりの投票により選定された「Airソーラー」という新名称のもと、普及拡大に取り組んでいる。
今回の実証は、2024年10月に東京都が採択した開発事業者向け支援事業の一環として行われるもので、東京体育館周辺にペロブスカイト太陽電池を9枚搭載した庭園灯を35本設置し、屋外環境での発電量は耐久性などを検証するという。なおリコーによると、この庭園灯の設置には配線工事が必要なく、自律して明かりを灯すとのこと。加えて内部には気温・湿度・照度・二酸化炭素濃度を測定する環境センサを搭載し、クラウド通信を介して環境情報のモニタリングも行うといい、照度の変化に応じて電灯の明滅を切り替えるとした。
また今回の実証では、生産性の高さ、およびコストの低さを強みとするインクジェット技術により作成したペロブスカイト太陽電池を搭載する庭園灯も5本設置されている。リコー担当者は、今回の実証において従来型のものと併せてデータを取得することで、屋外実使用環境における性能の差異について検証を進めるとしている。
庭園灯の設置を行ったリコーは、複合機の開発で培われた有機感光体の技術を応用し、照度の低い室内光でも発電する「固体型色素増感太陽電池」を2020年に開発して以降、東京都大田区や神奈川県厚木市でもペロブスカイト太陽電池の実証実験を行うなど、次世代太陽電池の社会実装に向けた取り組みを進めてきた。また現在は東京都庁展望台でも実装実験が行われており、東京都とも共同で取り組みを推進。早期事業化に向けて開発スピードを高めている。
小池都知事「少しでも早い社会実装を」
そうした中で今般開始された実証実験。視察に訪れた小池都知事は、「従来は屋根の上に設置されていた太陽電池だが、軽くて薄くて曲がるという特徴を持つAirソーラーはさまざまな場所で活用できるため、防災などの観点で見ても電力確保の上でとても役立つと考えている」とコメント。また、9月に開幕予定の世界陸上2025で会場となる国立競技場にもほど近いことから人流の増加が予測される中、「国内外の多くの方々がAirソーラーを見る機会になると期待している」と話す。加えて、過去には日本が世界の太陽電池開発における先駆者であった事実を顧み、「今回のような太陽電池が“日本発”のゲームチェンジャーとして世界で活用されるよう、知財が守られた形で発展させていきたい」と語った。
またリコーの山下良則取締役会長は、ペロブスカイト太陽電池の今後の想定ユースケースについて問われると「供給側の立場として使い方を提案するよりも、社会のさまざまなところから『こんな使い方ができるんじゃないか』とアイデアが生まれてくるといい」とし、「供給者として発電効率やインクジェット工法の進化を進めていくのは当然として、その使い方については認知を広げながらさまざまなステークホルダーと議論を深めていきたい」と語った。
今回の視察が行われている最中にも、東京体育館の周辺では多くのランナーが軽やかな足取りで駆け抜けていた。世界陸上の開催に併せ世界中から多くのアスリート・観客が訪れることになる道で、世界の新たなエネルギー源になるかもしれないAirソーラーが、足元を照らす。




