富士フイルムと堀場製作所は8月7日、遺伝子治療薬の生産性を向上させる遺伝子導入装置(連続エレクトロポレーション装置)を共同で開発したことを発表した。
連続エレクトロポレーション技術を実装し高効率化を実現
富士フイルムと堀場製作所の両社はこれまで長きにわたりライフサイエンスや半導体などの幅広い分野で交流を深めており、製薬プロセスの生産性向上を目的として堀場製作所のセンシング技術を用いた共同研究を行うなど、さまざまな取り組みを共同で進めてきたとのこと。その一環として2023年からは、今後の成長が期待される“遺伝子治療薬”の製造における課題解決に向け、遺伝子導入装置の開発に向けた共同プロジェクトを開始したという。
遺伝子治療薬とは、病気の原因となる遺伝子の問題を修正するため、外部から遺伝子を体内に入れて治療するバイオ医薬品のこと。これまで有効な治療が確立されていない難病などを治療できる可能性をもたらす技術として世界的に大きな期待を集めており、細胞・遺伝子治療の市場は2030年まで年率約30%での急成長が見込まれている。しかしその実用化にあたっては、複雑で低効率な製造プロセスに対する技術的ハードルや、研究開発に要するコストの大きさなどが課題となっている。
培養した細胞に遺伝子を導入する遺伝子治療薬の製造においては、遺伝子の導入効率をいかに高めるかが生産性向上に極めて重要となる。ただし、現在は一般的に、試薬を用いて化学的に遺伝子を細胞に導入する製造方法が用いられており、複雑な化学反応や細胞と試薬の相互作用を制御することが難しく、効率化へのハードルとなっていた。
そこで今回両社は、制御された電圧により細胞の膜に極めて小さな穴をあけ、遺伝子を直接注入する「連続エレクトロポレーション技術」を開発。細胞への高効率な遺伝子導入を実現するとともに、連続フローシステムであることから生産量の調整を可能にし、少量から大量までさまざまな製造に対応できるという。この連続エレクトロポレーション装置については、従来手法のバッチ処理に比べ約100倍の生産性で遺伝子治療薬を製造可能だとし、その実用化によって遺伝子治療薬の生産性向上や製造コスト低減に大きく貢献するとした。
なお今般の開発では、富士フイルムの幅広い事業領域で培われたプロセス制御技術やバイオ医薬品分野で保有する高度な技術・知見が活用され、多様なものづくりの知見とグローバルサポート体制を有する堀場製作所が設計および生産を担当したとのこと。また製品の市場投入後は、堀場製作所のネットワークを通じて、遺伝子治療薬への需要が特に高い欧米を中心に販売を推進するという。
両社は今後も互いの強みを活かして連携し、同装置の開発・普及を通じて、“アンメットメディカルニーズ”の解決という社会課題解決に貢献するとしている。


