近畿大学は、トワロントレーディングと朝日金網の3者による産学連携で、静電気を利用し、つる性雑草の繁茂を抑制する設置型雑草抑制装置「WCP(Weed Control Panel)」を共同開発したと7月28日に発表。こうした装置の開発は世界初とアピールしている。

  • (左)WCP本体。3kg弱の重量のため、軽量なので既設フェンスへの設置も容易だ。(右)WCPの試作品を設置したフェンス。画像左側のつる性雑草などが生えている部分は、比較対象のためのWCP未設置区画。右側に立つ赤と黒の装置は市販のソーラー式電牧器で、WCPに電気を供給している
    (出所:近大ニュースリリース、NEWSCAST掲載)

同成果は、近大 農学部 農業生産科学科の松田克礼教授、トワロントレーディング、朝日金網の共同研究チームによるもの。

植物の学術分類に「雑草」は存在しない。これは、意図せずに自然に生え、人にとっては邪魔と感じられる植物を指す感覚的な総称である。そのため、雑草には多様な植物が含まれる。中でも、雨樋(あまどい)やフェンス、金網などの構造物に絡みつき、景観を損ね、見通しを悪くするつる性の植物は特に厄介な存在だ。こうした背景から研究チームは今回、静電気を応用したつる性雑草を枯らす装置の開発を試みることにした。

WCPは、二重構造の金網を採用している。この二重金網の間に形成される強力な静電場につる性雑草が侵入すると、アーク放電が誘発され、その熱エネルギーによってつる性雑草の頂芽を枯らし、成長を抑制する仕組みだ。これにより、つる性雑草の繁茂を効果的に防ぐことが可能となる。

特筆すべきは、枯れた頂芽にはアーク放電を発生しないため、火災の心配がない点である。さらに、WCPは雑草の根までは枯死させることはない。そのため、土地の保水能力が損なわれたり、大雨などによる地盤崩壊リスクが高まったりする懸念がなく、環境への影響も最小限に抑えられる。

WCPの二重金網のうちの敷地外側、つまり既設フェンスに接する面はアース用金網だ。静電気金網は、植物が触れる敷地内側に配置されている。WCPは、このように既設フェンスなどに取り付けて使用することを想定して設計されている。この二重構造により、敷地外から既設フェンスに誤って触れたとしても感電の危険性は排除されており、安心して利用できる点も大きな特徴だ。

WCPの静電気は、具体的には、主に家畜や野生動物の侵入を防ぐために用いられる電気柵様のソーラー式電牧器(でんぼくき)から発生させる仕組みだ。この電牧器は、法律で定められたメーカーのものであれば、特にどれを利用しても問題ない。

なお、万が一WCPの静電気金網に触れたとしても、電牧器を利用しているため、約1秒間隔でわずか0.03秒間のみ電気が流れる設計だ。この際の電圧は1万Vと高いものの、人体に影響を及ぼす電流値はきわめて低い10mA以下に抑えられている。これは、日常生活で経験する冬場の静電気ショックと同程度であり、重大な事故につながる可能性はきわめて低い。

サイズは945mm×945mm×30mm、素材は塩化ビニルと亀甲金網で、1パネル当たりの重量は2.95kg。この軽量設計により、特別な技術や専門知識を要することなく、誰でも容易に設置可能となっている。そのため、公共インフラ施設、太陽光発電所、高速道路、鉄道沿いのフェンスなど、つる性雑草が繁茂しやすい場所での活用が期待される。また、除草作業における人手不足に悩む現場では、物理的な除草作業の負担を大幅に軽減し、作業効率の向上に大きく貢献するとしている。

研究チームは、WCPを用いた実用化試験を2021年から4年間実施。その結果、つる性雑草の一種である葛(クズ)に対する抑制効果が確認された。現在も、大阪府東大阪市から奈良県奈良市を結ぶ第二阪奈有料道路(NEXCO西日本)と近大農学部との境界フェンス、および農学部キャンパス内において実用化試験を実施中だ。WCPに活用している技術については、現在、トワロントレーディングと近大が共同で特許出願の手続きを進めているとのこと。