ソフトバンクは、AI(人工知能)エージェント同士を安全に連携させる「Agent Firewall(エージェント・ファイヤーウォール、仮称)」のプロトタイプの開発に成功したと、7月24日に発表。企業や組織ごとに異なるデータの取り扱いルールや管理基準の下でも、安全かつ柔軟な連携を可能にするもので、2026年度頃の実用化をめざす。

  • AIエージェント間の安全・安心な連携のために、ソフトバンクが開発を進める「Agent Firewall(仮称)」の概念

近年、複数のAIエージェントが相互に連携し、社会全体の最適化を目指す「マルチAIエージェント」の動きが加速している。AIエージェント間のプロトコルやデータフォーマット、インタフェースの仕様などの通信規格の整備が進む中、企業や組織の枠を超えたデータ連携においては、データの所在地やアクセス権限管理の水準差、各種独自ルールへの適合といった、データの取り扱いルールや管理基準の違いに起因する各種課題が障壁となることが予想される。

同社はこうした将来的な課題に備え、さまざまな企業や組織のルール・管理基準に準拠した上で、AIエージェント間の通信を制御・監視可能にする「Agent Firewall(仮称)」のプロトタイプを開発し、特許出願を行った。

Agent Firewall(仮称)の主な特長

  • 動的ガバナンス制御:通信時のリスクの高さや求められるセキュリティーレベルに応じて、検査強度を自動調整
  • AIエージェントの認証・認可:信頼されたAIエージェント間のみ通信を許可
  • 契約、ポリシーによる制御:契約条件および各種ポリシーに応じた違反を自動で検知。機密情報や重要データの紛失、外部への漏えいを防ぎ、セキュリティーを強化するためのシステム「DLP」(Data Loss Prevention)の事前防止
  • 監視、監査、ログ管理:通信内容を改ざん困難な台帳に記録し、リアルタイムで監視

Agent Firewall(仮称)に実装している技術は、異なるAIエージェント間の連携を実現する「A2A」(Agent2Agent Protocol)や「ACP」(Agent Communication Protocol)などの各種プロトコルを補完し、プロトコルの種類を問わず一貫したセキュリティー方針の適用を可能にするもの。

また、従来のようにネットワークの内部・外部を区別してセキュリティーの対策を行い、社内ネットワークへの不正アクセスを防ぐ“ネットワーク境界型”の考え方ではなく、すべての通信を常に確認する“ゼロトラスト”の考え方に基づき、必要なときに必要な範囲だけをチェックする仕組みを取り入れる。これにより、ことで、安全性を保ちながらシステムの負荷を抑えられ、大規模かつ分散型のネットワーク環境にも柔軟に対応できるとする。

同社では今後、Agent Firewall(仮称)の2026年度の実用化に向けた開発および検証を本格化させ、将来的には「ソブリンクラウド」や「ソブリンAI」との連携により、企業や自治体、研究機関が扱う機密性の高いデータを守りながら、次世代社会インフラの実現をめざす。