住友ゴム工業は7月23日、京都大学(京大)化学研究所の小川紘樹准教授と共同で、破壊につながるゴム内部構造の分布の違いを3次元的に可視化することに成功したと発表した。

タイヤゴムの“破壊”を可視化する新手法とは

昨今では、EV(電気自動車)の普及による車両重量の増加や省資源などの環境負荷低減への関心が高まるのに伴い、より長持ちするタイヤへのニーズが高まっている。長期経営戦略「R.I.S.E. 2035」において、強みとする“ゴム・解析技術力”と“ブランド想像力”により「ゴムから生み出す“新たな体験価値”をすべての人に提供し続ける」ことを目指すとしている住友ゴムは、これまで、大型放射光研究施設「SPring-8」の活用などを通じて、ゴム内部の構造を詳細に解析することで、低燃費性能や耐摩耗性能に優れたタイヤゴム材料の開発を行ってきたとする。

タイヤゴムの内部構造は、骨格となるポリマー、補強剤であるシリカやカーボンブラック、機能向上に貢献する添加剤や架橋剤など、十数種類以上の材料から構成されている。そのため従来手法による構造解析では、X線が通過した部分におけるゴム内部構造の平均的な情報しか得られず、ゴムを変形させて破壊が発生しても、X線が通過した部分のどこで破壊が発生したのかを特定することはできなかったという。

  • タイヤゴムの内部構造イメージ図

    タイヤゴムの内部構造イメージ図(出所:住友ゴム工業)

そこで今回の研究では、京大の小川准教授が開発した、ゴム内部構造の分布の違いを3次元的に可視化する新たな計測手法を用いた共同プロジェクトを2023年5月より開始。この新手法により、ゴムを変形させた際にどこで破壊が始まるかを3次元的に捉えるとともに、ポリマーとシリカが特殊な状態(部分的に並んだ状態)に変化することで破壊が始まるという現象を捉えることに成功したとする。

  • 新旧計測手法の比較

    従来の計測手法と、今回用いられた計測手法の比較(出所:住友ゴム工業)

  • 今回の研究で得られた成果

    今回の研究で得られた成果の概要(出所:住友ゴム工業)

住友ゴムは今回の結果について、ゴム材料に関するさまざまな知見を有する同社と、ゴム内部構造の分布の違いを可視化する技術を有する京大化学研究所による、それぞれの強みを活かした産学連携の共同プロジェクトにより実現したとしており、今後はこの成果を活かし、耐摩耗性能を高めたタイヤの開発を進めることで、安全性の向上および環境負荷の低減に貢献するとしている。

なお今回の研究は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が推進する「NEDO先導研究プログラム」の一環で行われたものであり、研究成果は国際学術誌「Small Structures」に掲載されている。