DeepLは7月23日、リアルタイム音声翻訳ソリューション「DeepL Voice」の機能拡充について、記者向けの説明会を開催した。新たに中国語、ウクライナ語、ルーマニア語の対応を開始するほか、Microsoft Teamsに加えてZoom Meetingsとの連携を開始する。
言語の壁は企業の機会損失に
同社はすでにAIを利用している従業員1000人以上の日本企業を対象に、ITシステムの意思決定者515人と一般従業員515人の計1030人に対し、AI活用とビジネスリスクに関する調査を実施した。
この調査では、AIツールの利用実態、AIの精度に対する期待、セキュリティへの懸念、日常業務における言語の壁がもたらすビジネスリスクなどについて分析している。
調査の結果、すでにAIを導入している企業では、約80%が職場でのAIツール導入に賛成であることが明らかになった。一方で、「セキュリティやデータ保護の懸念」「内部知識や専門知識の不足」「ROIの不明確さ」などがAIツールの導入を妨げる要因となっていることも示されたという。
同調査では、翻訳ソリューションのような専門性を備えた特化型のAIツールに対する関心が高いことも明らかになった。その理由として、「使いやすさ」「信頼できる成果物」「成果物の品質」「データセキュリティ」などが挙げられている。
言語の壁に関する質問項目では、言語の壁がビジネス運営にネガティブな影響を与えていると感じた回答者は、言語の壁によって発生した可能性のあるコストとして「遅延」「機会損失」「非効率」「信用の損失」などを挙げた。
言語の壁がビジネス運営にネガティブな影響を与えていると感じた回答者のうち、言語の壁によって発生した可能性のあるコストとして上記の項目を挙げたのは約80%。そのうち約30%が損失額を7500万円~3億円未満と見積もっている。
回答者の59.2%が週に1回以上、20%以上が毎日、言語の違いによるコミュニケーションの課題に直面していると回答していることが明らかになった。
言語の壁がビジネス運営に与える課題として、「営業 / リード生成」「内部コラボレーション(異なる国のチーム間)」「カスタマーサービス / サポート」「製品開発」などの分野が挙げられた。
また、言語の壁がビジネス運営に与えるネガティブな影響としては、「内部の非効率」「中程度の遅延や混乱」「重大な収益や機会の損失」「パートナーシップの形成やグローバル展開の困難」などが挙げられた。
「DeepL Voice」が対応言語の拡大とZoom連携を開始
DeepL VoiceはWeb会議中に翻訳されたキャプションを提供する「DeepL Voice for Meetings」と、モバイルデバイスを利用して発話内容を即時通訳する「DeepL Voice for Conversations」の2つのモデルを展開する。
今回のアップデートにより、DeepL Voiceは音声入力において新たに中国語、ウクライナ語、ルーマニア語に対応を開始する。既存の13言語(英語、ドイツ語、日本語、韓国語、スウェーデン語、オランダ語、フランス語、トルコ語、ポーランド語、ポルトガル語、ロシア語、スペイン語、イタリア語)と合わせて16言語に拡大。翻訳キャプションはベトナム語とヘブライ語を含む、DeepL翻訳が対応する35言語で利用可能。
さらに、DeepL Voice for MeetingsはMicrosoft Teamsに加え、Zoom Meetingsにも連携を開始する予定。なお、提供開始日は後日発表する。
DeepL CTO(最高技術責任者)のセバスチャン・エンダーライン氏は「グローバルなコミュニケーションにおいて言語の壁はまさに障壁であり、それは特に会議の場において顕著である。グローバルな会議の時間は約34%が翻訳など言語の壁で消失しており、会議参加者は内容の6割ほどしか理解できていないとされる。DeepLはこうした障壁を取り除くことで、誰もが母国語で話を理解できる、スムーズな会話や意思決定を支援する」と説明した。
ちなみに説明会の会場では、セバスチャン氏の説明はDeepL Voiceを用いてリアルタイムで翻訳された。
サイボウズはDeepLを活用しグローバルコミュニケーションを円滑化
説明会ではユーザー企業を代表して、サイボウズの執行役員で情報システム本部長を務める鈴木秀一氏が登壇し、導入効果について紹介した。
同社では日本以外にもアメリカやベトナム、中国、マレーシアなどグローバルに拠点を拡大する中、社内でも多言語コミュニケーションが増加していたという。これにより言語の壁が業務の障壁となり始め、2022年末頃から対策の検討を開始。2023年6月にDeepLを導入した。
鈴木氏はDeepL導入の理由について、「入力データがAI学習に利用されないセキュリティの高さ」「業務にそのまま利用できる翻訳精度の高さ」「情報システム部門の管理負担の低さ」だと紹介していた。
サイボウズでは、同社が手掛けるノーコードで業務アプリを作成できる「kintone」とDeepLを連携し社内で活用している。kintone内に蓄積したミーティングの議事録や資料をワンクリックで翻訳できるプラグインを自社開発し、利用しているとのことだ。
その結果、ベトナムやアメリカなど海外拠点のスタッフも、日本で開催された会議の議事録の内容をほぼリアルタイムに理解できるようになった。そのため、正確な情報に基づく迅速なコミュニケーションが活性化されたとのことだ。
「今後は、いつでも、どこでも、誰とでも働ける環境作りを推進していく」(鈴木氏)






