半導体分野の共創拠点を日本橋に開設へ

三井不動産は7月16日、半導体分野の産業創造に向けた共創環境の構築を目指す一般社団法人「RISE-A(Revolutionary Innovation by Semiconductor Ecosystem for All industries)」を設立し、会員募集を開始したこと、ならびに2025年10月をめどに東京・日本橋に拠点を開設し、本格的な活動を開始する予定であることを発表した。

  • 産業デベロッパーとしての三井不動産
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  • 産業デベロッパーとしての三井不動産
  • 産業デベロッパーとしての三井不動産
  • 産業デベロッパーとしての三井不動産としては場と機会を提供することでオープンイノベーションの推進を目指す。すでにライフサイエンスのLINK-Jや宇宙産業のcross Uといった組織を立ち上げ、オープンイノベーションの推進を図ってきたノウハウがある (資料提供:三井不動産、以下すべてのスライド同様)

RISE-Aの目的は、半導体デバイスメーカー、ファウンドリ、ファブレス、IPベンダ、製造装置メーカー、材料メーカーなどの「サプライヤ」と、半導体デバイスを自社の製品に組み込むアプリケーションメーカーや、そうしたハードウェア上で動作するソフトウェアやサービスを提供する「ユーザー」、そして研究機関や政府/自治体、ベンチャーキャピタルなどの半導体業界の周辺に位置する団体などで構成される「サポーター」の3者を結び付けようというもの。三井不動産の常務執行役員イノベーション推進本部長の山下和則氏は、「産業競争力の向上には、サプライヤとユーザーの連携によるバリューチェーン構築が不可欠で、そのための共創・協調の場と機会を提供する。大手サプライヤだけでなく、ユーザー、スタートアップ、サポーターなどが集う環境を整えることでオープンイノベーションの加速、産業課題の解決、産業基盤の誘発を目指す」と、意気込みを語る。

  • RISE-Aの枠組み
  • RISE-Aの枠組み
  • RISE-Aではサプライヤ、ユーザー、サポーターの連携を推進していくことでオープンイノベーションの推進を図る

そうしたRISE-Aの会員が集う場として提供されるのが2025年10月をめどに東京・日本橋に開設される予定の「RISE GATE NIHONBASHI」となる。「日本橋が五街道の起点であるように、さまざまなイノベーションの入り口になることを願って立ち上げる」(同)とのことで、会員向けのサービスオフィスや会議室のほか、カンファレンスホールやラウンジも用意。会員同士の交流促進に向けて、会員が企画するイベントや情報発信のサポートや、RISE-A自身が企画するイベントや情報発信を積極的に行っていくことで、協業パートナーの探索や人脈形成、ネットワークの形成などを推進していくとする。

  • 「RISE GATE NIHONBASHI」
  • 「RISE GATE NIHONBASHI」
  • 「RISE GATE NIHONBASHI」の概要

10月にはRISE GATE NIHONBASHIでのイベント開催を予定

その第1弾が10月の拠点開設の際に予定しているオープニングイベントで、RISE-A単独開催によるイベントのほか、同じく三井不動産が日本橋で産業発展を支援するライフサイエンス分野の「LINK-J」や宇宙産業分野の「cross U」といった団体と連携した形でのイベントの開催を検討しているという。

また、会員同士の交流促進に加え、半導体や半導体を適用したアプリケーションの研究開発促進に向けて、ベルギーimecならびに台湾の産業技術研究・開発機関の「ITRI(工業技術研究院)」、日本の半導体などの領域を中心に技術資産の提供を行う「AIST Solutions」「OpenSUSI」の4者との連携協定も締結。こうした連携パートナーが有するネットワーク・ノウハウを活かした共同イベントの実施や情報交換会、技術交流などを行っていくことも予定しているとする。

  • 世界的な半導体研究機関ともMOUを締結

    日本のAISTSolutionsやOpenSUSIに加え、imecやITRIといった世界的な半導体研究機関ともMOUを締結。さまざまな交流を会員企業と行っていくことも予定しているという

機会と場の提供で半導体産業の振興を支援

RISE-Aの理事長にはノーベル物理学賞受賞者で名古屋大学の天野浩 教授が就任。副理事長には三井不動産の山下氏が就任したほか、理事には三井不動産フェロー(イノベーション担当)の三枝寛氏、東北大学 国際集積エレクトロニクス研究開発センター センター長の遠藤哲郎 教授、東京大学の鈴木寛教授(慶応義塾大学 特任教授)の就任が決まっているという。また、理事会に戦略的なアドバイスを提供する運営諮問委員会の委員長に理化学研究所(理研)の五神真 理事長が就任する予定のほか、委員としてSEMIジャパン 代表の浜島雅彦氏や、東京大学 執行役・副学長 産学協創推進本部長の染谷隆夫 教授、東京科学大学 特別顧問の益一哉 名誉教授など半導体関連の識者が合計12名(五神氏含む)参画するという。

  • 理事会と運営諮問委員会のメンバーの概要

    理事会と運営諮問委員会のメンバーの概要

天野氏は設立会見にて「RISE-Aは、サプライヤとユーザーの融合による新たな価値創造や、材料同士の融合、大学でも世代間ギャップが話題になっているがベテランと若手の融合、金融や行政などとの産業の融合などを目指している。半導体をあまり扱ってない人にも知識を提供したり、ファンドの提供による産業活性、人材、特に異分野の融合、使用した素材などのリサイクルなど、さまざまな循環も提供できると思っている」と、その提供する価値に対する期待を語っている。

このほか、横浜国立大学の准教授で半導体・量子集積エレクトロニクス研究センター 副センター長も務める井上史大氏など12名がエバンジェリストとして、イベントの企画立案などに協力してくれる予定。半導体のユーザーやサポーター、さまざまな産業分野で最前線で活躍する人たちをエバンジェリストとして招くことで、半導体産業の活性につなげていきたいとのことで、今後も人員の拡充を図っていきたいとしている。

  • エバンジェリスト

    さまざまな分野で第一線で活躍する人物たちがエバンジェリストとして参画が予定されている

なお、先行するLINK-Jの取り組みと近い枠組みでの運営を検討しているとのことで、機会の提供をRISE-A(ライフサイエンスの場合はLINK-J)が担い、集積交流拠点をRISE GATE NIHONBASHI(ライフサイエンスの場合はLife Science Building)に据えるほか、ライフサイエンスの研究開発・製造拠点として「三井リンクラボ」があるように、半導体の研究開発・製造拠点の整備も検討していきたいとする。実は三井リンクラボにも複数社の半導体関連企業が入居している実績があるとのことで、山下氏はそうした経験が応用展開できるのではないかとの考えを示している。

  • LINK-Jやcross Uとも連携を図っていく
  • LINK-Jやcross Uとも連携を図っていく
  • RISE-Aは先行するLINK-Jの取り組みに近い形での仕組みが構築される見通し。同じ日本橋に拠点を構えるLINK-Jやcross Uとも連携を図っていくとしている

  • 記念撮影

    RISE-Aの副理事長を務める三井不動産の山下氏(左)とRISE-Aの理事長を務める名古屋大の天野教授(右)による記念撮影