Celonisは2025年度の製品戦略を発表し、プロセスインテリジェンスとAIの導入を支援する業務別のCelonis Solution Suitesをはじめとして、ドイツで開催したグローバルイベント「Celonis: Next」で発表した製品群についても説明。また、Celonis 共同創業者/共同CEOのバスティアン・ノミナヘル氏が、Celonisのこれまでの経緯や、AIへの取り組みなどについて説明した。ノミナヘル共同CEOは、7月9日に都内で開催した年次イベント「Process Intelligence Day Tokyo 2025」にあわせて来日した。

「プロセスインテリジェンスがなくてはAIは実現しない」 - ノミナヘル共同CEO

まず、ノミナヘル氏は「ERPのデータだけを活用している企業は、まだ表面を撫でているだけにあり、深い洞察を得られていない」と指摘。

  • Celonis 共同創業者/共同CEOのバスティアン・ノミナヘル氏

    Celonis 共同創業者/共同CEOのバスティアン・ノミナヘル氏

そのうえで同氏は「CRM(顧客関係管理)、PLM(製品ライフサイクル管理)、ITSM(ITサービス管理)、SCM(サプライチェーン管理)などのデータを統合することで、360度デジタルツインを構築でき、データをあらゆる方面から有効活用できるようになる。当社のプロセスインテリジェンスで現場に則した形で大規模にデータを取得・分析し、プロセス変革に活用できるようになる」と、同社製品の特徴を強調した。

こうした特徴の土台となるのは、全社規模のインテリジェントレイヤーを実現する「Process Intelligence Graph」だ。企業全体をリアルタイムで再現するデジタルツインであり、プロセスインテリジェンスに対する関心が高まり、機が熟したタイミングで構築することができるプラットフォームと位置付けている。

同氏は「今後、2~3年で多くの企業が活用することになるだろう。当社は企業の重要なビジネス判断を支援し、そこにAIを活用していく。エンタープライズデータと、Process Intelligence Graphとの組み合わせによって、企業が求めるAI活用の基盤が整う。AIがプロセスインテリジェントを超えることはなく、プロセスインテリジェンスがなくてはAIは実現しない」と述べている。

  • Celonisのソリューション概要

    Celonisのソリューション概要

日本は少子高齢化の課題を抱えているが、このような課題を積極的に捉え、解決していくためにはプロセスインテリジェンスは欠かせないという。こうした取り組みは、企業の課題解決にも直結するとの見立てだ。

ノミナヘル氏は「日本は重要な市場であり、顧客・販売規模ではドイツ、米国、スイス、英国とともに必ず5本の指に入る。ドイツでの導入実績は、50%以上が従業員100人程度の中小企業であり、そうした規模の企業でもプロセスマイニングで成功している。日本は中小企業の比率が高い。いまは大手企業での導入が進んでいるが、日本でもさまざまな会社で利用してもらいたい。中小企業の場合、プロセスマイニングの実行は、オーナーやCEOによるトップダウンで推進されることが多く、規模が小さい分、迅速に動くことができる特性がある」とした。

2025年度におけるCelonisの注力ポイント

Celonisが、2025年のプロダクトフォーカスとして掲げたのが「迅速な洞察の獲得」「より高度なインテリジェンス」「AI主導のプロセス改善」だ。また、2025年度の注力ポイントとして「AIとプロセスインテリジェンスの融合によるROI(投資対効果)の最大化」「業界別ソリューションスイートの展開」「リアルタイムのプロセスデータの活用」「構築と分析の高速化」の4点をあげた。

  • 注力ポイント別に製品を発表した

    注力ポイント別に製品を発表した

Celonis バリューエンジニアリング統括本部 統括本部長の森秀之氏は「4つの注力ポイントを通じて、企業の業務プロセスを、よりスマートに、より迅速に、より価値のあるものに変革することができる」と語る。

  • Celonis バリューエンジニアリング統括本部 統括本部長の森秀之氏

    Celonis バリューエンジニアリング統括本部 統括本部長の森秀之氏

ROIの最大化

ROIの最大化では「Process Copilots」で会話型インターフェースを通じた操作を行い、データ分析やデータ加工を実現。Celonisのプラットフォームの中心となるProcess Intelligence Graphと連携することで、シンプルな質問で深い洞察に基づいた回答を得られるとしている。専用のダッシュボードを作成する必要がなく、組織内の誰もが迅速にプロセスインサイトを得ることができる。

また「Process Intelligence API」でサードパーティアプリケーションや会話型ツール、AIエージェントなどを、CelonisのProcess Intelligence Graphに連携させ、処理を実行し、データを取得できる点も示した。既存の投資をCelonisの業務コンテキストで強化し、連携性を高め、ビジネス価値を創出するという。コンテキストやメトリック、推奨アクションなどを、Microsoft Copilot Studio、Amazon Bedrock、Salesforce AgentforceなどのAIプラットフォームと安全に共有することが可能だ。

  • Process Intelligence APIの概要

    Process Intelligence APIの概要

Orchestration Engineでは、システムやアプリ、ボット、AIエージェント、人を横断してプロセスを接続。エンドトゥエンドでの自動化を実現し、継続的なプロセス改善を支援する。企業のAI活用を業務に落とし込むことができる基盤と位置づけている。現時点ではプレビュー版を提供している。

業界別ソリューションスイートの展開

業界別ソリューションスイートの展開では、Celonis Solution Suitesとして、サプライチェーン、ファイナンス、フロントオフィス、サステナビリティの4つの領域から製品投入を行う。

森氏は「3000社を超える導入事例から得られたプロセスデータと知識を体系化し、データモデルとして用意。重要なシステムへのコネクタや、AIを駆動するための機能のほか、事前に定義したビジネスコンテキストや、事前構築されたアプリを統合していることから、迅速にプロセスの改善につなげることができる」とする。

たとえば、サプライチェーンでは本番運用が可能な18種類の事前構築済みのアプリケーション、サプライチェーンに特化したAI機能、製造や流通などの1500社以上の導入実績に基づくプロセスデータと業務コンテキスト、主要なサプライチェーンシステムに対応する34種類のデータコネクタを提供。

  • サプライチェーンソリューションの概要

    サプライチェーンソリューションの概要

同氏は「標準提供機能に加えて、有償と無償を含めたカスタム機能を提供し、業務に最適化することができる。設定したあとにデータを読み込ませると、知見を抽出・分析し、適用可能な改善点を確認して、深い洞察が可能になる」と話す。

リアルタイムのプロセスデータの活用

リアルタイムのプロセスデータの活用では「Microsoft Fabric Integration」でゼロコピー統合(Zero-copy Integration)を実現。Celonisの分析ビューをMicrosoft Fabric環境にシームレスに埋め込むことができる。既存のデータを複製することなく、Microsoft Fabric上のデータを直接分析できるのが特徴となっており、コスト削減とデータエラーの防止にもつながる。

  • 「Microsoft Fabric Integration」の概要

    「Microsoft Fabric Integration」の概要

また、新たなPQL Editorにより、PQLエディタ内から、ナレッジモデルのビジネスコンテキストに直接アクセスし、編集や再利用ができる。

構築と分析の高速化

構築と分析の高速化においては「Celonis Process Mining(CPM) Product Suite」を発表した。イベントログをリアルタイムに生成し、即時にプロセス分析を実行するCPMによって標準プロセスを定義し、プロセスモデルや業務ダッシュボードに統合することで、ユーザーの支援と業務実行を強化することができる。

  • 「Celonis Process Mining(CPM) Product Suite」の概要

    「Celonis Process Mining(CPM) Product Suite」の概要

業務プロセスのマイニングとモデリングをシームレスに統合することで、現状と標準プロセスのギャップを可視化し、プロセスの標準化を迅速に推進することが可能だという。

編集ユーザーインターフェースとして、新たにBPMN 2.0に標準対応したほか、CPMで作成したプロセスモデルを、Process Adherence Manager(PAM)に直接インポートできるAPI統合により、プロセスマイニングとプロセスマネジメントの間をシームレスに接続できる。

スタートアップからグローバルリーダーへ - Celonisの軌跡

一方、ノミナヘル氏はこれまでの同社の歴史を振り返った。Celonisは、2011年にノミナヘル共同CEOを含む、独アーヘン工科大学の3人の学生が1万2500ユーロを持ち寄って起業したスタートアップ企業。

第1号ユーザーは、バイエルン放送局。ITヘルプデスクで、10個のプロセスを選定し、課題解決を図ったという。その後、シーメンスやバイエルなどのドイツ国内の大手企業が採用して注目を集め、グローバルで高い成長を遂げることにつながった。

ノミナヘル共同CEOは「プロセスマイニングは、大学での研究をもとに技術開発や製品化を行っているのが特徴。2011年に、研究室のなかの技術を企業で使ってもらえるように製品化したのが最初である」と振り返る。

その後、オンプレミスからクラウドに移行し、使いやすさを追求した。企業には、どのような困りごとがあるのかを追求し、分析した結果をもとに実行して、それを管理するためのExecution Management Systemを2018年に発表。

さらに、2023年にはProcess Intelligence Graphでデジタルツインを構成し、大規模な環境でプロセスインテリジェンスを推進できるようになった。ここ数年は、AIを組み込んだ開発を加速しており、企業内および企業全体のビジネスパフォーマンスを加速することに取り組んでいる。

同氏は「当社は人と企業、地球のために、プロセスを最適化することを目指している。プロセスマイニングのリーダーとして成長を遂げてきたが、今後は、プロセスインテリジェンスのリーダーとして、市場を牽引していく」と決意を述べていた。