NVIDIAの中国向けRTX PRO 6000が競争力を維持できない可能性

NVIDIAのBlackwellアーキテクチャを採用したGDDR7採用GPU「RTX PRO 6000」は、堅調な需要に支えられた好調な出荷が見込まれているが、TrendForceの半導体市場調査担当シニアバイスプレジデントであるAvril Wu氏によると、依然として不確実性が残っているという。具体的には、中国向けに設計されたカスタム版が、コストパフォーマンスの不利に伴う競合他社との競争激化が生じる可能性、およびメモリの供給制約が出荷へ影響を及ぼす可能性があるとしている。

このカスタム仕様の中国向けRTX PRO 6000についてTrendForceでは、2025年後半には発売されると予想しているが、現状、中国のバイヤーからは大きな関心は寄せられていないという。大きな理由の1つとして、より価格競争力のある「Huawei Ascend 910C」の存在があるという。すでにAscend 910Cはコスト効率の高い代替品として評価されており、多くのユースケースに十分な性能を備えているとされ、間もなく増産体制が整い、既存のAscend 910Bを徐々に置き換えていくと予想されるとする。

RTX PRO 6000は96GBのGDDR7メモリを搭載したミッドレンジからエントリーレベルのGPUとして位置付けられており、AIの推論、エッジベースのディープラーニングトレーニング、画像処理、シミュレーションなどのアプリケーションを対象としているが、このGDDR7はSamsung Electronicsが手掛けており、もし供給がひっ迫する場合、同シリーズ全体の生産能力と供給能力に影響を与える可能性があると同氏は指摘している。そのため、今後の四半期ベースでの実際の出荷量は不透明であるとしている。

  • NVIDIAの主要DRAMサプライヤとの関係性

    NVIDIAの主要DRAMサプライヤとの関係性 (出所:TrendForce)

Huaweiが次世代のAscend 910Dを用意か?

Huaweiは、最新世代のAscend 910Cに加えて、AI向け次世代半導体「Ascend 910D」の開発を終え、すでに特定顧客向けサンプル出荷を開始していると中国内で噂されているが、同社はこの件について沈黙を貫いている。Ascend 910DはNVIDIAのH100をはじめとする高性能AIチップを超える性能を目指したものだといわれており、米国の対中輸出規制下で中国のAI技術の自立を目指す製品となるものとみられている。

そのため、Ascend 910Dが目標性能を達成できるのか、中国内の製造能力や対中半導体規制の中で量産化できるのかが注目される課題となっており、中でもTSMCの先端プロセスが利用できないこと、米国および韓国のDRAMへのアクセスが制限されていることなどが挙げられるという。

なお、先行するNVIDIAのJensen Huang CEOは、Huaweiが急速にNVIDIAに追いつこうとしていることを認め、米国政府が対中半導体輸出規制を緩和して、NVIDIAが中国市場でシェアを再び獲得できるように政策転換することを要求しているといわれている。