宇宙医学の研究ユニットを順天堂大が設立
順天堂大学は7月7日、2025年4月1日付で同大 大学院医学研究科ニューロン-グリアクロストークセンター順天堂・センター長の服部信孝 学長補佐(同大 大学院医学研究科神経学・特任教授)が主導する形で「宇宙医学研究ユニット」を設立したことを発表した。
同研究ユニットは、同大医学部のあらゆる研究分野の研究者が横断的に参加し、それぞれの専門知識とアイデアを持ち寄ることで、宇宙医学分野における新たな知見と医療技術の創出を目指すことを目的に設立されたもの。具体的には、元宇宙航空研究開発機構(JAXA)の宇宙飛行士である山崎直子氏を客員教授として招聘したほか、AI研究機関であるヴイアールアイ((VRI)が主要パートナーとして参画することで、山崎氏の宇宙飛行士としての実体験・国際ネットワーク、ならびにVRIの技術力、同大医学部の研究者が取り組む学際的な知見を連携・融合し、宇宙と地球をつなぐ新しい医学・健康管理モデルを構築することを使命とするとしている。
4つの研究課題を推進
実際には、以下の4つの大きな研究開発課題に対して取り組んでいくとする。
- 宇宙環境の特性が人体に与える影響
- 人体への影響に関する研究開発項目の具体的な事例
- AI・先端技術による宇宙医療開発
- 研究開発の成果により期待される応用分野
1つ目の宇宙環境の特性が人体に与える影響については、「微小重力・無重力による医学的影響」、「宇宙放射線による医学的影響」、「閉鎖・隔離環境による医学的影響」などを、2つ目の人体への影響に関する研究開発項目の具体的な事例としては、「筋骨格系(筋萎縮、骨密度低下)」、「心血管系(血圧変動、心臓負荷)」、「神経系(認知機能、平衡感覚の変化)」、「免疫系の低下」、「精神的健康(長期滞在によるストレス・孤独感)」、「概日リズム(体内時計)の乱れ」などを、3つ目のAI・先端技術による宇宙医療開発については、「生体モニタリングとリアルタイム健康データ解析」、「AIによる個別化健康リスク予測と行動最適化技術」、「遺伝子解析データに基づく個別化医療の実装」、「宇宙用医療機器の開発」、「宇宙環境下での遠隔医療・テレメディスン基盤構築」などを、そして4つ目の研究開発の成果により期待される応用分野については、「地上医療への応用(高齢者医療、リハビリテーションなど)」、「災害医療や極限環境医療」、「宇宙旅行者の健康管理」、「長期宇宙探査(火星ミッションなど)」などをそれぞれ取り組んでいくとする。
なお、順天堂大では、宇宙医学を通じて同大医学部の知見を結集し、グローバルかつ多様な産学官連携機関をパートナーとして共創し、「宇宙×医療AI」領域をリードしていきたいとするほか、同研究ユニットをハブとする各種のプロジェクトを通して、将来的には宇宙コロニーでの医療体制構築や宇宙医学の地球医療への還元を目指すともしている。