新たな局面を迎えた日韓関係

近年、日韓関係は複雑な歴史的背景や政治的軋轢により、時に緊張状態に陥ってきた。しかし、2025年6月に韓国の新大統領として就任し、発足した李在明政権下において、日韓関係は新たな局面を迎えている。

当初、李在明政権の誕生は、過去の反日的な姿勢から日韓関係が再び冷え込むとの懸念を呼んだ。ところが、実際には同政権は日本との政治・経済関係の強化を重視する姿勢を明確に示している。

この背景には、米中対立の激化、トランプ政権の孤立主義路線、中国の海洋進出、北朝鮮の核・ミサイル開発、そして北朝鮮とロシアの軍事的接近など、韓国を取り巻く安全保障環境の厳しさがある。これらの地政学リスクは、日本と韓国がほぼ同じ脅威に直面しているという現実を浮き彫りにし、両国の結束を促す要因となっている。この状況は、半導体市場を含む経済安全保障の分野でも同様であり、日韓の協力は不可避な流れとも言える。

日本と韓国が直面する地政学リスク

韓国を取り巻く安全保障環境の変化が、日韓関係の改善を後押ししている。米中対立が先鋭化する中、韓国は米国との同盟を維持しつつ、中国との経済的関係も考慮する必要がある。このバランスは容易ではない。特に、中国の海洋進出は、東シナ海や南シナ海での緊張を高めており、韓国にとって地域の安定は死活問題だ。

さらに、北朝鮮の核・ミサイル開発は、韓国にとって直接的な脅威である。近年、北朝鮮とロシアの軍事的関係が強化されていることも、韓国に新たな不安をもたらしている。これらの課題は、日本にとっても同様に深刻だ。日本は中国の海洋進出や北朝鮮のミサイル発射に直面し、米国との同盟を基軸に安全保障を強化している。このように、日韓両国はほぼ同一の地政学リスクに直面しており、政治や経済を含む包括的な立場から協力の必要性がかつてないほど高まっている。

高まる日韓の半導体連携の重要性

こうした地政学リスクの変動は、日韓の経済協力にも影響を及ぼしている。特に、半導体市場における協力は、経済安全保障の観点から重要性を増している。半導体は現代の産業の基盤であり、スマートフォンから自動車、軍事機器に至るまであらゆる分野で不可欠だ。

しかし、グローバルなサプライチェーンの混乱や、米中間の技術覇権争いにより、半導体の安定供給は国際的な課題となっている。韓国は半導体製造において世界的な強みを持ち、日本も半導体材料や製造装置の分野で高い技術力を誇る。両国が協力すれば、完全ではないにしても、半導体サプライチェーンの安定化や技術革新を加速させることは可能だ。このような背景から、日韓の「半導体同盟」とも呼べる協力体制の構築が、自然な流れとして浮上している。地政学リスクの高まりが、両国を経済面でも密接に結びつける原動力となっているのだ。

拭えぬ韓国の反日路線回帰への懸念

一方で、李在明政権が反日路線に回帰する可能性は、依然として無視できない。韓国の国内政治は、歴史問題や国民感情に強く影響される。過去の日韓関係では、慰安婦問題や強制徴用問題が両国間の摩擦を繰り返し引き起こしてきた。

李在明政権は、現時点では現実的な外交姿勢を採用しているが、国内の政治的圧力や世論の変化によっては、反日的な政策を打ち出す可能性もゼロではない。もしそうなれば、日韓の信頼関係は揺らぎ、半導体同盟のような経済協力の枠組みも進展が難しくなるだろう。特に、韓国の経済は輸出依存度が高く、日本との協力が停滞すれば、半導体産業を含む経済全体に悪影響を及ぼす可能性がある。

それでも、現在の地政学リスクの構造を考慮すると、日韓の経済関係は今後いっそう強化される可能性が高いだろう。李在明政権下の日韓関係は、地政学リスクの変動によって新たな協力の機会を迎えている。安全保障と経済の両面で、日韓は互いに不可欠なパートナーとなりつつある。特に半導体分野での協力は、両国の経済安全保障を強化する鍵となるだろう。