本田技研工業(Honda)は、大阪・梅田地区の複合商業施設「グラングリーン大阪」内に、新たなソフトウェア開発拠点として「Honda Software Studio Osaka(ホンダソフトウェアスタジオ大阪)」を2025年4月に開設したことを明らかにした。
Hondaは現在、電動車を主とした商品競争力の強化に向けて「知能化」を重要な柱と位置づけ、2031年3月期までの10年間でソフトウェア関連の研究開発費として約2兆円を投資する計画を表明。こうした方針の下、高度な専門性を持つ人材の獲得と、エンゲージメントおよび開発力の最大化に取り組んでいるとする。
そんな取り組みに伴い、ソフトウェアエンジニアが働きやすい環境の整備を進めるホンダは、2023年10月の大阪での施策を皮切りに、大宮・品川・名古屋・福岡と開発拠点を拡大。そして今般、大阪における従来のソフトウェア開発拠点を発展させたHonda Software Studio Osakaを4月に開設した。
新拠点には、自動運転/先進運転支援システムやスマートキャビンなどのアプリケーション、アプリケーションを高効率を動かすためのハードウェアであるSoC、それらを制御するプラットフォームであるビークルOSなど、ソフトウェアデファインドビークル(SDV)の実現に向けHondaが独自開発する技術を担うさまざまな部門が集結しているという。
同拠点には2025年6月時点で約100名のアソイシエイトが在籍し、そのうち85%ほどがさまざまな経歴を有するキャリア採用者とのこと。従来のモビリティメーカーに無かったアイデアや知見を有するキャリア採用者と、新卒でHondaに入社し技術に精通したプロパー社員が、互いの強みを活かしながら相乗効果を生み出すことで、スピーディーに競争力を高めていくとする。
また柔軟かつ多様な働き方をサポートするABW(Activity-Based Working)も採用し、従業員ひとりひとりが仕事内容や状況に応じて最適な作業環境を選択できるとのこと。またオフィスデザインコンセプトとして“コミュニケーションファースト”を意識したデザインにより、エンジニア同士やチーム間の偶発的なコミュニケーション促進を加速させるという。加えて、プロジェクトメンバーが開発中の実機を前に手を動かしながら議論できる「プロジェクトブース」、はんだ作業を想定した換気環境を備え作業を行えるよう配慮された「デバッグルーム」など、特徴的なスペースも設置。地下の駐車スペースには、完成車を身近に触れながら開発ができる環境も整備するなど、ソフトウェアの動作確認とデバッグの迅速化、実環境での検証による信頼性向上といった効果を生むことで、製品品質向上や開発効率向上を実現するとした。
このように、オフィス環境にいながらもものづくりの基本である実機に“触れて試せる”開発環境を備えることで、Hondaが重要視する「現場・現物・現実」を重視した「三現主義」の文化と、最新のソフトウェア開発とを融合することを目指すという。
同社のソフトウェア開発は、実車開発の中心である栃木県の開発拠点を主軸に、全国の拠点が連携して行われていることから、新拠点では拠点間でのシームレスな連携も実現されたとのこと。また大阪・関西圏に集まる優秀なソフトウェア人材の採用を促進し、大学や研究機関との連携およびパートナー企業との協業を加速させることで、新たな価値創出が期待されるとした。
Hondaは今後、Honda Software Studio Osakaを同社開発拠点として関東圏に次ぐ国内第二の規模となる約500名体制へと拡大し、ソフトウェア人材の充実を図るとする。また2026年初めには、東京都内にも新たな拠点を開発する予定だとしている。