米国のDeep Tech特化型VC(Venture Capital)であるPlayground Globalは6月24日、都内で事業説明会を行った(Photo01)。そこで語られた内容をご紹介したい。
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Photo01:説明会当日の登壇者たち。左からSnowcap創業者兼CSO(Chief Science Officer)のAnna Herr氏、Playground Global General PartnerのPat Gelsinger氏、Playground Global創業者兼General PartnerのPeter Barrett氏、Ayer Labs創業者兼CEOのMark Wade氏、そしてxLihgtのCEO兼CTOのNicholas Kelez氏
Playground Globalのミッション
まずPeter Barrett氏(Photo02)より同社の概略が説明された。同社のミッションは「科学技術のブレークスルーを商業的・社会的価値に転換すること」であり、同社の投資対象は急進的で変革的な企業やアーキテクチャ、新材料を創造するスタートアップ企業となっている。
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Photo02:Peter Barrett氏は、元々はSupermacのSoftware DirectorやMicrosoft TVのCTOなどを歴任した後、2015年にPlayground Globalを設立している
実際の投資例として、「Strand Therapeutics(プログラム可能なRNA技術を開発し、ガンなどの疾患治療に応用)」(Photo03)、「Element Zero(西オーストラリアで再生可能エネルギーを活用しての金属の精錬)」(Photo04)、「GigaCrop(光合成を再設計し、植物の生産性を2倍に向上させる)」(Photo05)、「PsiQuantum(チタン酸バリウム(BaTiO3)を利用した、次世代の量子コンピュータの基盤の構築)」(Photo06)といった企業が紹介された。この量子コンピュータに関してはかなりBarrett氏が力を入れて説明を行っており、現在のコンピューティングパワーではまったく不十分な分野がまだ数多くあり、そうした分野向けに量子コンピューティングを投入するための基礎技術としてチタン酸バリウムのウェハの製造や、そのウェハを利用しての量子コンピュータの構築などを支援していきたいという事であった。
Pat Gelsinger氏が日本との協業を強調
ついでIntelの前CEOで、現在はPlayground GlobalのGeneral Partnerを務めるPat Gelsinger氏が登壇(Photo07)。同氏は「日本との協業」をテーマに、さまざまな分野で今後の展開に日本が欠かせないとしており、その1つの例として挙げたのが「Ayar Labs」のCPO Packageであった。
今回、同氏は日本の半導体業界との親和性が高いであろう「Snowcap Compute」(Photo08~10)、「Ayar Labs」(Photo11~13)、「xLight」(Photo14~20)の3社のソリューションを紹介した。
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Photo10:チップあたり0.05Wなら2万個集積しても1KWだし、そのチップが10倍高速なら20万個のチップからなる、ちょっとしたデータセンターと同等の演算能力になるという構図だが、Heベースで1KWの冷却は可能なのだろうか?
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Photo12:Silicon Opticsというと最初はEthernetのPluggable Transceiver向けというパターンが多いが、同社はChiplet向けのソリューションに絞っているとの事
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Photo14:現在のEUV露光装置は(ASMLが買収した)CymerのEUV光源を利用しているが、露光装置1台ごとに光源が必要なのと、例えば日本だと高圧ガス保安法の対象になるなど使いにくさがいろいろとある
ちょっと補足をしておくと、まずSnowcapの場合、3.5Kという極低温だから当然液体ヘリウムを利用しての冷却となるので、このヘリウムの入手性とかコストが問題になりそうであるが、これについて確認したところ「確かに液体ヘリウムでの冷却になるが、これはクローズドサイクルでの冷却であり、量子コンピュータなどで実績もある方法であり、Playground Globalはこれを欠点とは見ていない。昨今のデータセンターはもっと大規模で複雑な冷却システムが必要だし、データセンターの横に原子炉を設置する事に比べれば些細な手間でしかない」という返事であった。まぁ医療機関でMRIを導入しているところは必ず液体ヘリウムを利用している訳なので、同程度の難易度ということらしい(とはいえ、1KWの冷却には骨が折れそうだが)。
またxLightのソリューションだが、これはASMLと共同で開発しているものであり、なので同じ型番のステッパでもCymerとxLight、どちらの光源を利用するか顧客が選択できるとのこと。そろそろCymerの光源の方は出力が頭打ちになりかかっているので、より高出力を狙うにはxLightのソリューションはよさげだし、あと複数台のステッパを導入するところでは、その分安くなる可能性がある(xLightの光源システムの値段次第という感じではあるが)。一方で、150m×50mの追加の敷地はアメリカとかなら簡単だろうが、国内のEUV露光装置の導入先、例えばRapidusでも結構厳しそうな感じではある。あとはMicronの広島工場だが、こちらも厳しそうだ。
またAyar Labsのソリューションだが、Silicon Opticsといっても光源そのものは外部から導入する方法を考えているらしい。MarvellとかTSMCと同じ方法だ。このやりかた、Chip-to-Chipには適切だが、Die-to-Dieではやや大げさすぎる。これに関して、例えばMicroLEDでの可能性は? と確認したところ、まだ時期尚早で研究段階に過ぎない、という返事であった。
日本での存在感の向上を目指す
今回の日本訪問は、この3社の売り込みというのももちろんあるのだろうが、それよりもPlayground GlobalというVCの知名度を日本で高めると共に、コラボレーションの機会をより増やしたいという事が主眼らしい。
Gelsinger氏に「なんでこの3社?」と聞いたところ、返事は「(Playground Globalが)長く付き合っているから。だから来年来るときはまったく違う5社とかの可能性もある」との事であった。とりあえずGelsinger氏が元気そう、という事だけは良く判った。