KDDIとローソンは6月23日、「TAKANAWA GATEWAY CITY」のTHE LINKPILLAR 1 NORTH 6階に、「Real×Tech LAWSON」1号店として「ローソン高輪ゲートウェイシティ店」を開店し、オープニングセレモニーを開催した。

「Real×Tech LAWSON」はリアルの温かみとのテクノロジーによる利便性を融合させた未来のコンビニをイメージした店舗で、いわば実験場の位置づけにある。両社はAIやロボティクスを活用した店舗運営を全国のローソンに展開する。本稿では「ローソン高輪ゲートウェイシティ店」開設の狙いと、KDDIとローソンの両社長が語った展望について紹介する。

  • 「ローソン高輪ゲートウェイシティ店」が開店した

    「ローソン高輪ゲートウェイシティ店」が開店した

Real×Tech LAWSONの取り組みと開店の狙いとは?

「ローソン高輪ゲートウェイシティ店」が店舗を構える「TAKANAWA GATEWAY CITY」のTHE LINKPILLAR 1 NORTHは、KDDIが7月1日から新本社をグランドオープンする予定だ。ローソン店舗では店内や高輪ゲートウェイ駅周辺のデータを活用しながら、KDDIが強みとする「つなぐチカラ」でデータ活用を促進する。

KDDIはこれまで、ローソンを活用した山間地域での商品配達や、地域防災コンビニの実証など、有事の際と平時を区別しないフェーズフリーなコンビニ店舗を検討してきた。単なる買い物拠点としての店舗運営だけでなく、防災や産業連携、交通、公共サービスなど、さまざまなサービスをつなぐ地域のインフラ拠点としての運営を目指す。

「Real×Tech LAWSON」1号店である「ローソン高輪ゲートウェイシティ店」はKDDI社員が多く来店すると予想される新本社ビル内に開店し、KDDI社員が最初のユーザーとしてさまざまなサービスを体験する。社員からのフィードバックや検証結果によってサービスを高度化し、他店舗へと展開する。

  • Real×Techの実証結果を他店舗へと展開する

    Real×Techの実証結果を他店舗へと展開する

オープニングセレモニーに登場したKDDI パーソナル事業本部の久木浩樹氏は、「Real×Tech LAWSON」店舗における挑戦として、「新たな顧客体験」と「新たな店舗運営」を挙げた。

  • KDDI 執行役員 パーソナル事業本部 パートナーグロース本部長 久木浩樹氏

    KDDI 執行役員 パーソナル事業本部 パートナーグロース本部長 久木浩樹氏

新たな顧客体験の施策

まず、新たな顧客体験としては、陳列棚の前で商品を迷ったり商品を手に取ったりする、来店客の行動に合わせてAIがサイネージの表示内容をコントロールする「AIサイネージ」など、従来の店舗とは異なるコミュニケーションを提供する。また、価格を表示するプライスレールと連動した商品紹介動画の放送や、店内全体で連動するサイネージなども実装している。

さらに、店内のサイネージは近隣エリアのイベントや当日の天気、混雑状況などの情報発信にも活用される。加えて、街の気象データや人流データを活用した店舗改善など、スマートシティとの連携なども実践される予定だ。

「サイネージや動画を活用することで、これまでコンビニが苦手としていた説明型商品の販売に挑戦する。EC(Electronic Commerce)のような視覚的な訴求や、レコメンドによる消費マインドの喚起を図る。商品を実際に手に取ってもらえるリアル店舗の強みと融合させ、お客様が楽しく快適に買い物できる店舗を実現する」(久木氏)

  • AIサイネージを活用した顧客体験を提供する

    AIサイネージを活用した顧客体験を提供する

新たな顧客体験を提供するための取り組みとして、店内には「次世代リモート接客プラットフォーム」を活用した「Pontaよろず相談所」を設置する。フォンブースのような見た目の個室で、ここではAIアバターに対しヘルスケア(オンライン診療、オンライン服薬指導)、ファイナンシャルプランナーへの金融サービス相談、清掃・家事代行、au新規契約・機種変更・プラン変更など、生活のさまざまな相談が可能。

  • AIアバターに生活の困りごとを相談できる

    AIアバターに生活の困りごとを相談できる

新たな店舗運営の施策

次に、新たな店舗運営としては、ロボティクスを活用した店舗オペレーションが検討されている。具体的には、飲料陳列ロボットや自動清掃ロボット、「からあげクン」自動調理ロボットなどが活用される。

一例として、従来のからあげクン調理工程においては、フライヤーの中に入れたからあげクン同士がくっつかないよう、店員がフライヤーの調理かごを揺らしながら調理する必要があった。この工程をロボットによって自動化することで、店員は接客など人間ならではの業務に集中できるようになる。飲料陳列ロボットの活用も同様だ。

  • ロボットを用いた業務効率化も図る

    ロボットを用いた業務効率化も図る

店舗内でロボット活用を進めるもう一つの利点は、清掃状況や陳列の状況をデータ化できることにある。従来は可視化しづらかったこれらのデータを収集することで、高精度な在庫管理や商品補充が可能となる。加えて、業務量や店舗内の運営状況を分析するAIエージェントを導入することで、シフトの改善や業務の効率化をサポートする。

「お客様にとって新しいコンビニ体験を提供し、日常生活の困りごとを解決する拠点として暮らしの中に溶け込み、幅広いご要望で頼っていただける店舗を目指す」(久木氏)

ローソン竹増社長「次の50年を歩んでいく第一歩としてふさわしい店舗に」

ローソン 代表取締役社長の竹増貞信氏は「店舗開店を目前に、とてもわくわくしている。Real×Tech LAWSONを世の中のスタンダードにしていきたい。ローソンは2025年6月に創業50周年を迎えたが、次の50年を歩んでいく第一歩としてふさわしい店舗になったと思う」と話していた。

  • ローソン 代表取締役社長 竹増貞信氏

    ローソン 代表取締役社長 竹増貞信氏

さらに、「Real×Tech LAWSONの第1号店を運営する中で、さまざまな課題が出てくるはず。これらの課題をKDDIや三菱商事と一緒に解決し、お客様に新しい顧客体験を提案していく」とも語った。

竹増氏が全国のローソン店舗を訪れる中で、「ローソン高輪ゲートウェイシティ店」の開店を待つ店舗オーナーからの声が多かったそうだ。それほどまでに、全国の店舗オーナーは業務効率化や顧客体験創出のテクノロジーを心待ちにしているのだろう。「ローソン高輪ゲートウェイシティ店」に導入され、さらに改良・改善されたサービスが近所のローソン店舗でも体験できる日を楽しみにしたい。

KDDI松田社長「地域密着型のローソン店舗運営を通じて地域社会の発展に貢献」

竹増氏に続き、KDDI 代表取締役社長 CEOの松田浩路氏が登場。ローソンが標榜する「マチのほっとステーション」というキーワードに、KDDIの強みである通信技術を組み合わせて、デジタル技術を活用したコンビニ店舗運営を強化する方針を示した。地域密着型のローソン店舗運営を通じて、地域社会のさらなる発展に寄与するという。

「都市と連動したローソンによって、AIドローンによる地域の安全強化、次世代モビリティによる地域の移動支援、Starlinkによる防災に強い通信の整備なども実現したい。さらには、ローソン店内で生まれる膨大なデータとテクノロジーを組み合わせて、お客様には便利を、店舗には効率の良いオペレーションを提供していく」と、松田氏は述べていた。

  • KDDI 代表取締役社長 CEO 松田浩路氏

    KDDI 代表取締役社長 CEO 松田浩路氏