住友ゴム工業は6月19日、高い復元性と繰り返しの圧縮にも強いゴム材料を独自技術により開発し、これまでゴム製品の作製が不可能だった3Dプリンタで加工可能なゴム材料を開発したことを発表した。

3Dプリンタの可能性を広げる新たなゴム材料が誕生

3Dプリンタでの造形を行うための材料は、これまで主に樹脂(プラスチック)に限られていた。ゴムのように柔らかく弾力性を持つ樹脂を使った“ゴムライク製品”は作製可能であったものの、それでもゴムと比べると復元性や耐久性に課題を残していたという。

そうした背景から住友ゴム工業は今般、長年にわたるタイヤ開発で培われたゴムの配合および内部構造分析のノウハウを駆使し、ゴム本来の弾性・復元性・耐久性を有する3Dプリンタ用ゴム材料の開発に着手。同社が強みとする「ゴム・解析技術力」を活かし、長時間かつ高温で圧縮負荷をかけた場合でも高い復元性を発揮するとともに、2000万回の繰り返し圧縮試験にも耐える高い圧縮耐久性を持つ新材料の開発に成功したとする。

住友ゴム工業によると、新たなゴム材料は、3Dプリンタで主流とされてきた樹脂では実現できなかった弾力性や耐衝撃性、また柔軟かつすべりにくい性質など、ゴムが有する特性を活かした製品が作製可能になるといい、3Dプリンタの使用用途が大きく広がるとのこと。ヒトの指先と同様のすべりにくさを必要とするロボットハンドの指部分や、ヒトの臓器に近い柔軟性および弾力性を持つ医療訓練用の臓器シミュレーションモデルなどの実現が期待されるといい、ロボティクス・医療・自動車・スポーツなどさまざまな分野での活用が期待されるとした。

  • ロボットハンドの指部分

    ロボットハンドの指部分(写真左・青部分)と、大動脈血管モデルの3D造形(出所:住友ゴム工業)

住友ゴム工業は今回の新材料開発を受け、3Dプリンタ造形用ゴム材料事業について、2026年中の実用化を目指してさらに開発を進めることを発表。今後も顧客に対し、より高性能・高品質の製品を提供するとともに、安全かつ健康なくらしに貢献するとしている。

なお同社は、新材料を用いて作製された試作品を、3Dプリンティングに関する最新技術を紹介する専門展(「TCT Japan 2025」・「AM EXPO東京」)で展示され、来場者からは多くの関心が寄せられたのこと。また現在開催中の「大阪・関西万博」でも「住友館」内「ミライのタネ」コーナーにて展示されている。