Intelの製造担当副社長ナガ・チャンドラセカラン氏が6月14日付で同社従業員宛てに「7月中にレイオフ(解雇)を実施する。困難な措置であるが、人件費削減の課題と会社の現在の財務状況に対応するために不可欠である」との書簡を送ったと米国オレゴン州の地元紙The Oregonianの電子版OREGONLIVEが報じている。

7月中にも最大20%の人員削減を実施か?

同氏は、顧客の信頼を築くために技術者主導のスリムで機敏なIntel Foundryの構築による競争力の向上を目指すとするCEOのリップブー・タン氏が4月に同社社員に送った書簡と同じ趣旨も伝えたほか、15~20%の人員削減を目指し、その大半を7月に実施することを明らかにしたという。ただし、どの地域の分野でどの程度の削減を行うかは示しておらず、工場の操業への影響などを考慮したうえで人選するとだけに留めていたという。

すでに同社は2024年、前CEOのパット・ゲルシンガー氏の指揮下で、世界中の従業員の約15%にあたる1万5000人の人員削減を実施しており、オレゴン拠点でも約3000人が削減されたと地元メディアは伝えている。新CEOのリップブー・タン氏は、「8層にもわたる組織の複雑さを排除し、官僚主義を排して業務のスピードアップを図るため、中間管理層を大幅に削減する。このためにさらなるリストラは避けられない」と4月に発表していたが、それがいよいよ実行段階に移す模様である。

宙に浮く米国政府やオレゴン州の補助金

2024年、バイデン前政権はオレゴン州、アリゾナ州、ニューメキシコ州、オハイオ州のIntelの工場新設または拡張支援に向けて、CHIPS法に基づく79億ドルの連邦補助金交付を決め、すでにIntelは10億ドルを受け取っている。しかし、残りの大部分はトランプ政権が補助金の見直しを進めている間、宙に浮いた状態となっており、Intelもオハイオ州の工場開設を2030年まで延期する動きを見せている。

CHIPS法による補助金は、雇用創出を前提としたものであることに加え、トランプ大統領はCHIPS法による補助金支給を税金の無駄と主張しており、Intelが今後、さらなる補助金を得るための敷居が高まっている。

オレゴン州政府はIntelに1億1500万ドルの州資金を交付済みだが、オレゴン州ヒルズボロにあるD1X研究開発ファブの拡張計画の時期は不明であり、拡張によって雇用目標が達成されなかったり、州税収が増加しなかったりした場合、州資金は回収される可能性があると地元メディアは指摘している。

イスラエルも中国もリストラか?

イスラエルの地元メディアによると、Intelの新たな人員削減は、同社のイスラエル拠点の中間管理層も対象としているという。

Intel Israelの従業員は約9300人ほどで、そのうち約4000人がキルヤット・ガットの製造施設に勤務しているという。同工場は、Intelがイスラエル政府から受け取った多額の政府助成金を背景に人員削減の対象外となってきた経緯があるが、今回に関してはグループ全体の変革に向けた取り組みの一環という位置づけで対象外にはなりづらいと地元メディアでは伝えている。

また、中国メディアのijiwei(愛集微)によると、中国のソーシャルメディアユーザーの間で、Intelの中国法人Intel Chinaが最大20%の従業員を対象としたレイオフを実施する可能性があり、一部の組織ではさらに大幅な人員削減に直面する可能性があるとの情報が流れていると伝えている。詳細は近日中に発表される見込みだという。

粗利益率50%に届かない新規プロジェクトは非承認に

Intelの製品事業部門のCEOであるミシェル・ジョンストン・ホルトハウス氏は、今月上旬に開催されたバンク・オブ・アメリカのグローバル・テクノロジー・カンファレンスにおいて、「Intelは、業界の期待に基づき、少なくとも50%の粗利益率を達成できない新規プロジェクトは、今後承認しないしエンジニアも割り当てない」と発表したと米国メディアが伝えている。

同氏は、Intelは(既存事業を含む)全事業で50%の粗利益率を期待または予測しているわけではないものの、社内的にはその数値を目指していると明言し、Panther LakeとNova Lakeを含む次世代製品は現在、50%の粗利益率を達成する見込みだという。

なお、同社の過去12か月間の粗利益率は31.67%ほどで推移しているが、コロナ禍以前の10年間は60%前後で推移していた。