スパコン「富岳」がGraph500で11期連続世界1位を獲得
理化学研究所(理研)、東京科学大学(Science Tokyo)、フィックスターズ、日本電信電話(NTT)、富士通で構成される共同研究グループは6月10日、大規模グラフ解析に関するスーパーコンピュータ(スパコン)国際性能ランキング「Graph500」のBFS(Breadth-First Search:幅優先探索)部門において、スパコン「富岳」が11期連続での世界第1位を獲得したことを発表した。
Graph500は、頂点と枝によりデータ間の関連性を示した大規模なグラフの解析性能を競うスパコンランキングで、2010年よりBFS部門が開始、以降、SSSP(Single-Source Shortest Path:単一始点最短路)部門とGreen(BFSの電力効率)部門の合計3部門でランキングが発表されてきた。
世界一を実現した6つのソフト技術
このようにGraph500では、大規模グラフを扱うため、グラフのデータを複数台のノードに分散して配置する必要があり、富岳のような大規模ネットワークを持つシステムでは通信性能の最適化も重要になることから、共同研究グループでは、スパコン上で大規模グラフを高速に解析できるソフトウェアの開発を進めてきており、これまでに「複数のノード間におけるグラフデータの効率的な分割および圧縮」、「冗長なグラフ探索を削減するアルゴリズム」、「BFSの結果に影響を与えずに不要な頂点を削除する前処理」、「スーパーコンピュータの大規模ネットワークにおける通信性能の最適化」、「探索アルゴリズムの動作を制御するパラメータの自動チューニング」、「乱数による性能変動を緩和するシード値探索」といった6つのソフト技術を高度に組み合わせることで、今後予想される実データの大規模化および複雑化に対応可能な世界最高レベルの性能を持つグラフ探索ソフトの開発を行ってきたとする。
今回の富岳のグラフ解析性能は前回同様の約204TeraTEPSで、共同研究グループが開発した省メモリ化技術を用いることで、大規模なグラフの処理に成功したとするほか、乱数による性能の変動を抑えるため、良い性能を与える乱数シード値の自動探索機能を開発したことで、この性能を達成したとする。
具体的には、富岳の15万2064ノード(全体の約95.7%)を用いて、約8.8兆個の頂点と140.7兆個の枝から構成される超大規模グラフに対する幅優先探索問題を平均0.69秒で解くことに成功したとしている。
なお、共同研究グループでは、Graph500のBFS部門における第1位獲得は、富岳が科学技術計算でよく用いられる規則的な計算だけでなく、不規則な計算が大半を占めるグラフ解析においても高い性能を発揮することを実証するものであり、幅広い分野のアプリケーションに対応できる富岳の優れた汎用性を示すものだと説明している。