博報堂メディカルは6月2日、メディカルチェック作業を迅速かつ高精度に行い、メディカル審査業務を効率化するとともに審査基準の標準化および品質向上を実現する、生成AIを活用した「AIメディカルチェッカー(特許出願済み)を開発したことを発表した。

医薬品マーケティングの業務効率化へ生成AIを活用

医療用医薬品のマーケティング活動では、各種規制を遵守したメディカル審査が不可欠となる。しかし、新薬承認までの期間短縮化や、ブルーブック(日本製薬工業協会が定める『医療用医薬品製品情報概要等に関する作成要領』)の複雑化が進むにつれて、メディカルライターが本来注力すべきクリエイティブ業務や高度なライティング業務の時間が確保できないという課題が顕在化していたという。

またこうした領域では各ルールが相互に依存し複雑に絡み合っていることから、メディカルチェックには高度な推論能力が要求されるため、メディカルライターの業務時間のうち多くがチェック作業に費やされていたとのこと。各製薬会社のメディカル審査業務にも大きな負担がかかり、全体の業務効率が低下する要因となっていた。

このようなメディカル業界全体を取り巻く課題の解決に向け、博報堂メディカルは、生成AI技術を活用してスピーディかつ高精度でのチェック作業を行うソリューションの開発に着手。DX領域での実績や知見を有するscheme vergeと共同で開発に取り組み、同社がこれまで培った専門知識やノウハウも反映しながら、「AIメディカルチェッカー」としての実現に至ったとする。

同ソリューションは、ブルーブックに基づく包括的なチェックが可能で、手動での確認では見落としがちな要点を網羅し、正確にチェックできる設計となっているとのこと。また大量の文書・情報をAIが解析するため、作業時間の大幅な短縮につながるという。さらに、AIメディカルチェッカーの開発にあたっては、メディカルライターが有する暗黙知を体系化。特許出願済みの独自技術に組み込むことで、専門性を担保しながら高精度な検知を実現したとしており、また専門文書もAIにより自動解析を行うことで、見出しや大項目・小項目などの構造に合わせた効果的なチェックを実行するとのことだ。

博報堂メディカルは同ソリューションについて、今後さらなる機能拡充を視野に入れているといい、より高度な検知機能や文書生成機能などを実装していくという。また同社は今後もAIやデジタル技術を活用し、製薬企業のマーケティング・販促活動を支援するソリューション開発をリードすることで、日本の医療業界にイノベーションをもたらしていくとしている。

なお、AIメディカルチェッカーの技術的な背景や開発プロセスについてまとめられた論文は、「2025年度 人工知能学会全国大会(第39回)」にて5月27日に学会発表が行われた。また同ソリューションについては、7月9日から11日まで東京ビッグサイトで開催される「第1回 ファーマDX EXPO東京」において出展され、デモンストレーションを行う予定だとしている。