本田技研工業の研究開発子会社である本田技術研究所(Honda)と、アストロスケールホールディングスの子会社であるアストロスケールは5月30日、宇宙の軌道上の人工衛星に燃料を補給するための給油口接続システムを共同開発することを発表した。

  • Hondaとアストロスケールのロゴ

    Honda(左)とアストロスケール(右)の企業ロゴ(出所:Honda)

持続可能な宇宙利用に不可欠な新技術を共同開発へ

地球周回軌道は、人工衛星やスペースデブリの増加により混雑してきており、このままでは長期的な軌道利用が困難になると考えられている。こうした問題を解決し“宇宙の持続可能性”を実現するには、使い捨てを前提とした従来の人工衛星・ロケット開発から脱却し、Reduce(削減)・Reuse(再利用)・Repair(修理)・Refuel(燃料補給)・Remove(除去)といった循環型経済を宇宙空間で構築することが重要となる。

そうした未来を実現するソリューションとして、軌道上でサービスを提供することが検討されている。今回Hondaとアストロスケールが共同開発を行う給油口接続システムは、軌道上サービスの1つとして想定される燃料補給サービス向けの技術。軌道上での燃料補給を可能にし、人工衛星の寿命延長、ひいては人工衛星の機数や打ち上げ回数の低減につながるとする。また補給が可能になり燃料の制約がなくなることで、人工衛星に託すミッションの範囲や柔軟性が拡大し、新しい衛星の活用方法が可能になるとしている。

なお共同開発において、Hondaは、人の可能性を最大限に発揮できるロボティクス技術の研究開発に取り組む中で培ってきたメカトロニクス技術を活用し、給油口接続システムの開発を担当。一方のアストロスケールは共同で給油口接続システムの開発に携わるとともに、これまで獲得してきたRPOD(ランデブ・近傍運用・ドッキング)技術と宇宙機開発実績を土台とし、低軌道での化学燃料補給実証に結び付けていくとする。その実証については2029年ごろの実施を見込んでいるといい、2025年1月にアストロスケールが採択された、内閣府主導し科学技術振興機構が推進する「経済安全保障重要技術育成プログラム」におけるプロジェクトでこのシステムが使用される予定だとした。

Hondaは、人の活動領域が宇宙への広がることを想定し、宇宙空間のさまざまなシーンにおけるロボティクス活用を目指すとのこと。そのためには、過酷な宇宙環境でも確実に動作するロボティクス技術が不可欠であることから、今回の給油口接続システムの共同開発は、宇宙で実用可能な技術獲得の第一歩になると考えているとする。

一方のアストロスケールは、同社として目指す軌道上サービスの商用化に向けて燃料補給は必要不可欠な要素だとしており、またこれを国産で開発することに大きな意味があるとした。加えて、今回共同開発で連携するHondaとは、今後も戦略パートナーとして関係を構築していきたいとしている。